初めての、妹以外のパンツ予知

 最後にパンツ予知をしたのは、妹の早苗が5歳の時だ。

俺は高2、早苗は中1になったので、8年近く発動していない…。


あの能力は、今も使えるのだろうか?

使えるか確認するには、女子の穿いているパンツを見ないといけないが…。



 ある日、俺はいつも通り校内の2階にある自分の教室を目指し、階段を上がる。

前には女子生徒が1人、後ろには誰もいない。


…女子生徒が階段を上り終えた直後に、前かがみになったぞ。

何かを拾おうとしているのか?


階段を上り始めて間もない俺に気付いていないのだろうか?

お互いの場所的に、パンツが見えてもおかしくないぞ…。


って見えてるし。…見た瞬間、ヴィジョンが浮かぶ。

パンツ予知は、まだ使えたのか…。


(俺が知らないところを歩いている女子生徒。

女子生徒が横断歩道を渡っている時、トラックが猛スピードで…)


ヴィジョンが終わる。……なんだこれは!?

このままだと、 女子生徒はトラックに轢かれる…。


女子生徒の顔がわからないのは、現実で確認していないからだ。

早苗の時は、ちゃんと顔が見えていた。


…これしか考えられない。


交通事故なんて、今まで見たことがないぞ。

これは、絶対知らせないといけない奴だ!!



 俺は声をかけようとしたが、今の状況を考える。


女子生徒は階段を上り終えた直後に、前かがみをしている。

俺は階段の途中で低いところにいる。その結果、女子生徒のパンツを見た。


今声をかけたら、俺が女子生徒のパンツを見たことを白状するようなものだ。


予知のことを伝えても、信じるどころか変人扱いされるに決まってる。

だが、少しでも覚えてくれれば未来は変えられるかも?


…決めた、伝えよう。何か言われたら、その時はその時だ。



 「階段を上り終わったそこの人、ちょっと良いか?」

俺の声を聴き、振り返る女子生徒。


って、同じクラスかつ隣の席の、寿ことぶき明日香あすかさんじゃないか!


クラスメートにバレるのか…。面倒だけど、今更どうしようもない。


「…速見君?」

俺を見る寿さん。


…高低差に気付いたようだ。すぐスカートを抑える。


「……見た?」

ジト目で俺を見る寿さん。


こういう時って、どう答えるのがベストなんだろうな?

パンツ予知をしたから、声をかけたんだ。


ここで「見てない」って言ったら、今後の話のつじつまが合わなくなるかも…。

という事は…。


「見た!」

正直に答えるしかない…。


「正直だね」


沈黙の時間が続く。


「…何黙ってる訳? 私のパンツを見たんでしょ? 謝ってよ!」

怒り出す寿さん。


沈黙の時間内に、謝らないといけなかったのか…。


今更遅いだろうが誠心誠意謝って、時間を置いてから教室で伝えるか?

いや、話したことがない人だ。声をかけるきっかけがないと厳しい。


今回の件で好感度が下がった以上、仮に声をかけても無視される可能性がある。

だったら、今が一番だ!


「謝る前に、どうしても言いたいことがある!」


「…何? 言い訳でもするの?」

呆れた顔をする寿さん。


さっき見たヴィジョンは、今日起こることで間違いない。

という事は、寿さんの下校中に起こるはず。さりげなく注意を促してみよう。


「下校する時、トラックに気を付けて横断歩道を渡ってくれ!」


「はぁ!? 何意味不明なこと言ってるの? ふざけてる訳?」


「ふざけていない! もし何事もなく下校できたら、俺が寿さんのパンツを見たことを担任に話しても良い!」


俺のパンツ予知が外れたことはない。

これぐらい言わないと、信憑性が疑われる…。


「…そこまで言うなら、覚えておくわ。嘘だったら、マジで話すから!」


そう言って、俺の話を切り上げる寿さん。

教室に向かったんだろう。



 それから俺も教室に着き、普段通り過ごす。

寿さんは俺に対し、何もアクションを起こさなかった。


予知のこと以外、全部忘れてくれると嬉しいのだが…。


そして放課後になった。俺の予知はどうなるだろうか?

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