パンツ予知ができる俺が、クラスの女子の人気者になった件

あかせ

パンツ予知

 俺、速見早太はやみそうたには信じられない能力がある。それは妹が穿いているパンツを観ると、妹の少し先の未来がわかる事だ。


な? 信じられないだろ?



 その能力に初めて気付いたのは、当時4歳の早苗のパンツを観た時だ。


俺より4歳下の妹になる。


「暑い」と言って、スカートのすそを持ってバサバサ動かし始めたのだ。

スカートにこもった熱気を、外に逃がすためにやったんだろう。


その時に偶然パンツが見えた。見えたと同時に、頭にあるヴィジョンが浮かぶ。


それは、早苗がタンスの角に指をぶつけて泣いている姿だ。


…訳が分からなかったから、一応頭の片隅に置いておく。


それから1時間後だろうか。早苗の泣き声が家中に響いた。

急いで駆けつけると、母のそばで早苗が「指ぶつけた~!」と言って泣いていた。


その隣にはタンスがある。もしかして、さっき見たヴィジョン通りになったのか?

…いや、1回だけではわからない。判断材料がもっと欲しいな。



 後日、俺は早苗のスカートをこっそりめくってパンツを観た。

するとまたしてもヴィジョンが浮かぶ。


…今度は、公園で転んで泣いている姿だ。


早苗の奴、また痛い目に遭って泣くのか。可哀想だな…。


もしまたヴィジョン通りになったなら、俺には予知能力がある。

だが予知能力が確定すると、早苗が転ぶことも確定してしまう。


兄としては複雑な思いだ…。


家族4人で夕食をとっている時、早苗の膝に絆創膏が貼ってあることに気付いた。

俺は早苗に理由を訊いてみた。


すると母が「公園で転んだのよ」と説明してくれた。


…これって、予知能力があることになるだろ?

発動条件が『パンツを観ること』なのが意味不明だけど…。



 それからというもの、俺は早苗のスカートをこっそりめくってパンツを観た後、

ヴィジョンの内容を伝えることを繰り返す。


早苗に怪我してほしくないからな。兄として当然の気持ちだろう?


最初のあたりは聞き流していた早苗も、回数を重ねる度に真面目に聞くようになる。

俺の言った通りになるんだから、聞く気になるよな。


「お兄ちゃんって、超能力者なの?」と訊かれたことがあるので、誰にも言わないことを条件に、パンツを見れば予知できることを伝える。


すると早苗は「だったら、早苗のパンツもっと見て!」と言ってきた。

俺は早苗のためにやっているから、罪悪感は全くない…。


めくる手間が省けてありがたいよ。



 俺の予知について、わかったことをまとめよう。


①予知できるのは、1日1回


②穿いているパンツを観る時だけ、予知できる。

干してあるパンツを観ても、予知は発動しなかった。


対象範囲はわからないが、同性が穿いているパンツは対象外になる。

男のパンツなんて見ても、まったく嬉しくないからこれで良い。


異性は、妹しか経験がないので不明だ。


③予知できることは、その日で起こる事のみ

もっと先のことがわかれば、色々楽できるのに…。


④未来を変えても問題ない?

早苗が怪我する予知以外観たことがないので、確定ではないが…。


こんなところだろうか。



 俺が早苗のパンツを観て予知内容を教える関係は、長くは続かなかった。

理由は早苗が俺にパンツを見せることを、恥ずかしがるようになったからだ。


そのため最後に早苗の穿いているパンツを観たのは、アイツが5歳の時までだ。

6歳以降は、1回たりとも見ていない。


早苗のパンツを見なくなったから、予知能力が発動する機会がなくなった。

なので、今もパンツ予知ができるかわからない…。



 そんな俺も高2、早苗は中1になった。ある日、物語は動き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る