二つ目 大嫌いな……
1、スタート・インステテュート
「出向あるかもとは聞いてたけど、特捜に参加するとは聞いてねぇぞ……」
新宿署作戦会議室に大量の「この顔にピンと来たら」みたいな強面の大人たちと一緒に、詩音班の三人は詰め込まれていた。
特別捜査本部。社会的に反響の大きい重大事件が起きたとき、警察本部と所轄の警察署が共同で臨時に設置される。
つまるところ、それだけ大きな事件が発生したということだ。
ものものしい雰囲気の中、葵は隣のユメに聞こえる程度のボリュームで呟く。
「なんかデカい山があって警視庁からも刑事が出張ってるらしいよ」
「殺人事件とか?」
「そうかも」
「だったら、俺らの出る幕じゃねぇ気がするけど」
「広い範囲で言えば僕らも大体刑事だよ」
大抵の県警では刑事部の中に
「あんたら、お偉いさんもう来るよ」
詩音が言うと、タイミングよく、新宿署の署長と副署長、そして警視庁の刑事部長が入ってくる。
「本庁刑事部長の鷹山です。所轄内外から集まりいただき協力感謝します。では早速事件のあらましを説明します」
長いので割愛。
要約すると、昨晩、新宿署所轄内で国会議員の一人が殺害された。
国会議員の名前は「坂本猛」四十歳、坂本議員が支援者たちとの食事会の後、店の外に出たところで頭に銃撃を受け即死した、とのこと。
「俺らが呼ばれた理由は
「被疑者がいつどうやって銃を手に入れたのか、ってところね」
「確実に暴力団関係じゃん……」
話を聞き終わり、新宿署の組対と協力して捜査することになった詩音班。
組織犯罪対策課室内に課員と警視庁の組対部員そして詩音班を含め十名が集まり、凶器についての詳細を聞くことになる。
ちなみに、普段から暴力団組員を相手取っている組織犯罪対策課の面々の顔面の圧は連中と遜色ない。
「遺体の周辺に落ちていた銃弾は8.6×70mmの銃弾、338ラプア・マグナム」
透明の袋に入れられた銃弾を捜査員らに見せる新宿署組織犯罪対策課長。
「でかくね」
「そうだ、これはそこらのヤクザが取り扱ってるもんよりでかい。軍隊でも使用されている狙撃用の銃弾だ」
新宿署からの応援要請が多いこともあり、もはや見知った面々との会議、どの捜査員も忌憚なく意見を飛ばし合う。
「うぇ、これ本当に反社の線ですか? ヤクザの取り扱うもんじゃないでしょ」
「それを裏取りするのも俺達の仕事だが。晴川巡査部長の言う通り、ヤクザの線は薄いかもしれん。下手すれば横浜の中華マフィアから卸したとも考えられる」
「こんなん日本で使うか普通? 9mmなら流通経路が混線するの目的で扱ってるヤクザも多いが」
「確かに、足つきやすそうだな……」
「そもそも武装してない民間人殺すのにオーバースペック過ぎるかと」
「相当な銃オタクか、狙撃が得意な奴、あるいは」
「
物騒な単語が飛び出し続けているが形としてはブレインストーミングだろうか、そんな感じではあるが、捜査方針はあらかた一巡したように思える。
「何にせよ会議室で話していても埒があかん」
「ここ会議室じゃないんだけど」
どうして、警察官はあのドラマの影響を受けやすいんだろう。
「事件は現場で起こっている。総員! 今話し合ったことを頭に入れ自らの足でホシの情報を集めてこい!」
課長の号令を受け、ヤクザ顔の警察官たちはぞろぞろと出動していく。
「アタシらも行くわよ」
「うい」
「オッケー」
流れに乗り、詩音班も部屋を出ようとする。
「あ、おい、RINGの三人は少し待て」
そんな、三人を課長が呼び止める。
指環持ちを個別で呼び出す。つまり、一般の警察には任せられないようなことを頼むに違いない。
なんとなく嫌な予感を察したのか詩音と葵は、めちゃくちゃに嫌そうな顔でユメはいつもどおりのみ無表情で組対課へ踵を返すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます