第28話 計画的なロイド

ダンスが始まり場の雰囲気が和んだ頃、どっと疲れが押し寄せる。

本来なら一曲はダンスをお披露目するのだが、急に決まった結婚式。

当日まで楓のレッスンが間に合わなかった為、床に伏せていたのを理由にお披露目は取りやめになった。

ロイドは側に立っていたマッシュを呼び、耳打ちをすると、マッシュは呆れた顔でロイドを見つめるが、諦めたような顔でロイドにわかったと告げる

ニヤリと怪しげな笑顔を見せて楓の方へ体を寄せ、今度は楓に耳打ちする。

「楓、疲れただろう?少し部屋で休もう」

「え?でも、いなくちゃいけないんじゃないの?」

「休んだら、また戻ってくればいい」

そう言うと立ち上がり、楓の手を取る。言われるがまま立ち上がるが、楓はマッシュの方へ目線をやり、大丈夫なのかと見つめる。

マッシュは少し困った顔をしながら、軽くお辞儀をした。

行って良いという合図なのだろうか・・・楓は不思議そうな顔をしながらロイドの後についていく。

(マッシュさん、困ってた気がするんだけどな・・・)


部屋に入るなりロイドは長椅子にどかっと座り、隣をポンポン叩きこっちにおいでと合図をする。

楓がロイドの隣に座ると、急に体を横に倒され膝枕状態になった。

「疲れたな。想像はしてたが、これは想像以上に疲れる」

ため息交じりにロイドは呟く。

「そうだね。正直、僕も疲れた。マッシュさんには悪いけど、休めて良かった」

楓は体を捻り、仰向けになる。そして、目を閉じながらロイドに尋ねた。

「一時間は遅いよね?30分位は休めるかな?」

「いや、もっと休んでいい」

「ダメだよ。マッシュさんが困っちゃう」

「マッシュには言付けてある」

「でも・・・」

目を開きながら、楓は心配そうにロイドを見つめる。

「その、あれだ。疲れ過ぎて夜まで持たないかも知れないだろ?」

一瞬何の事を言っているのかわからず、楓はキョトンとするが、時間が経つにつれて、その言葉の意味を理解すると楓はみるみる顔を赤く染めた。

「何言ってるの・・・」

「仕方ないだろう!?俺は楽しみにしてたんだ。楓が疲れて寝てしまったら元も子もない」

「・・・わかった。少し長めに休んでから戻ろう」

「・・・・」

「ロイド?」

バツが悪そうにロイドは顔を背け、ぼそっと呟く。

「マッシュには戻らんと言った」

楓は目を大きく広げ口をパクパクさせる。しばらくして両手で顔を隠し、足をバタバタさせた。

「もー僕、恥ずかしいよ。それじゃ、マッシュさんに今からしてきますって言ってるようなものでしょ?」

「まあ・・そうだな」

「僕恥ずかしくて、しばらくマッシュさんの顔が見れないよ」

「大丈夫だ。明日から三日間、休みをもらっている。顔を合わすことはない」

何が大丈夫なのかと問い詰めたかったが、恥ずかしさの方が勝り黙り込む。

するとおもむろに楓を抱きかかえ、寝室へと向かう。

「楓、いいか?」

すでに抱き抱えて向かっているのに、今更同意が必要なのかと疑問に思いながらも、楓は小さく頷いた。


ベットにはすでに赤い薔薇が敷かれており、その上にふんわりと楓を横たわらせる。ロイドは少し乱暴にマントやベストを脱ぎ捨て、シャツのボタンを外し首元を緩める。

その様子を緊張しながら見つめていると、ロイドが楓の手を取り、甲にキスをする。

「やっと楓と一つになれる・・・」

嬉しそうに楓を見つめると、そのまま覆いかぶさって来る。おでこに、目に頬にキスの雨を降らす。優しく唇にキスをしたかと思えば、指で顎をクイっと下げ、口を開かせ口内へと舌を潜り込ませる。初めは遠慮がちだった楓もロイドに応えたくて、次第に大胆に絡める。

頭の芯まで痺れるような愛撫にうっとりしていると、いつの間にか服がはだけて肌が露出しているのに気づく。一度見せているとは言え、これから事に運ぶとなるとやはり恥ずかしい。自然に手が体を隠す。

「隠すな」

楓の手を掴み、ベットへ縫い付ける。首筋にキスをしながら舌を這わせると楓は甘いため息をこぼす。そしてゆっくりと体に沿うようにキスをしながら下へ降りていく。ロイドは楓の滑らかな肌を堪能しながら、胸の突起を指で転がす。

「んっ・・」

吐息だった楓の口から甘い声が漏れる。口に含み甘噛みする頃にははっきりとした声に変わる。

「ふっ・・あっ、んっ・・」

ビクビクと体を震わせ、体に走る快感に身を預ける。まだ始まったばかりなのに、これから与えられるだろう未知な快感に、半分期待と半分は怖さでうっすらと涙を浮かべた。

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