第35話 二日後
「っててて……」
創との戦いから二日後。
さすがに翌日は痛すぎて欠席したが、今日は全身に不快感を感じる程度の痛みになっていたため今日から学校行くことにした。
「おはよー」
そう言って俺は自分の教室に入る。
「おい大丈夫かよ湊斗」
「大変だったなお前」
すると心配そうにモブC、Dが声を掛けてきた。
一応今日から登校するといっても体に包帯を巻いていたり頬に
陽那の特製品のようで、一週間は粘着力が落ちず剥がれないらしい。
とりあえず、この湿布と包帯だらけの状態を誤魔化すために、司と陽那には階段から転げ落ちたことにしといてくれと言ってあった。
「その年でいまさら厨二病を発症したんだって?」
「お前らしいっちゃらしいが、あんまり酷いと友達離れてくから気を付けろよ?」
「ちょっと待ってくれ」
あれおかしいな? なんか思ってたのと違うんだけど?
なんで湿布とか包帯巻いてんのが厨二病ってことになってんの?
そんな疑問を浮かべるが、消去法でその理由をすぐに理解する。
「はよーっす」
「おはんよ〜」
そしてその理由1と2が呑気に教室に入ってきた。
「おいてめぇらぁ!!」
「朝からうるせぇなぁ。実は前世が魔王で勇者との激闘の末転生の秘技で現代に転生、力を隠して生きていたが突如として現代に現れた怪異を倒すためその力を振るうことを決意する平凡を装った高校生」
「も〜朝からうるさいな〜。実は現代まで脈々と受け継がれてきた錬金術の正統後継者、力の使い道が無かったけど事故に巻き込まれて異世界転生、新しい世界でその持て余していた力を思うがままに振る平凡な高校生」
「
「俺たちをくだらねぇ理由で危険に巻き込んだ罰だ。てめぇは哀れな厨二病患者としてしばらく過ごせやボケカスがぁ!」
「そ〜だそ〜だ! さっさと右腕が
「するかぁ!! みんな聞いてくれ!! この包帯とかは力を封じ込めてるとかそういうワケじゃないんだ! 本当にケガをしてて、今証拠を……って
「あはは! 僕特製の『超粘着性医療キット』だからね! 言ったじゃん! 粘着力は一週間は落ちないってさぁ!」
「てめぇ嫌がらせのために貼りやがったなぁ!?」
「おいおい湊斗。解放された力に苦しむポーズはもっとカッコよくないとしまらねぇぞ」
「本当に苦しんでんだよ俺はぁ!」
呆れたように言う司に俺はたまらず叫ぶ。
「はは、冗談が上手いな! みんな、せめて優しく笑ってやってくれ。それが俺たちにできる唯一のことだ」
司の言葉に……。
「そうだな。湊斗、俺は好きだぜ! 男なら誰にでもそーいう時期はある!」
「胸張れよ!」
「ナイス厨二!」
男子たちはまったく嬉しくない励ましの言葉を、
「うわぁ、束橋くんってそーいう感じなんだ」
「いやまぁ湊斗くんらしいっちゃらしいね」
「ないわー」
女子たちは哀れみの目を向けてきた。
「大丈夫湊斗。みんなから可哀想な人扱いされても、超絶美少年の僕は湊斗の友達だからね」
しまいには陽那までウインクしてくる始末。
「てめぇら覚えとけよぉ!! 回復したら絶対仕返ししてやっからなぁぁぁ!!」
俺の声は教室を飛び越えて廊下中に響き渡った。
◇
き、気まずい……。
湊斗が厨二病患者と誤認されるのとほぼ同時刻。
千聖はそんな感情を抱いていた。
「昨日は一日中寝てて、千聖ちゃんのメッセージ気付かなかった」
そして、彼女の目の前にいた創は申し訳なさそうに口を開く。
「ワリィ。そこらへん全然気にしてなかった……」
「「……」」
互いに押し黙り、再び静寂が流れる。
静寂を破ったのは、今度は千聖の方だった。
「ケガ、大丈夫か?」
「うん。まだ少し痛むけど、もう大丈夫。それよりも彼のほうが心配かな。俺の攻撃、結構モロに受けてたし」
「そ、そうか」
ずいぶんとしおらしい様子になった創に困惑しながらも、なんとか千聖は言葉を返す。
「安心していいよ。彼は事前に全部説明してた。俺はそれを了承した上で負けた。完敗だよ。それに……」
千聖から目を逸らしたまま呟くように言う創。
彼はそのまま、頭を下げた。
「ごめん、千聖ちゃん。俺、勝手に一人で突っ走って、千智ちゃんの気持ちなんかこれっぽっちも考えてなかった。自分勝手な思い込みで、千聖ちゃんを悲しい気持ちにさせちゃった……」
「なんでお前が謝んなよ! ワリィのは全部ウチだ! ウチがハジメともっとちゃんと向き合ってれば……って、違ぁう!!」
パン! と千聖は自分の頬を両手で叩く。
「ハジメ! お前も……そんでウチも! もっとちゃんと話すべきだった! だからどっちも悪い!! お前だけが悪いなんてことは……無い!」
「千聖、ちゃん……」
創は顔を上げて、千聖の目を見た。
「ウチは、お前の気持ちには応えられねぇ! お前のこと、弟みたいにしか思ったことないから!! けど、お前がウチのために変わろうとしたのは……その、なんつーか……すげぇと思った! でも、お前が不良になってんのは、なんかヤだった!! だから、もう不良はやめてくれ!!」
少ない語彙力で、だけど全力全開の思いを伝える千智。
あまりにも直球だが、それ故に彼女の意思は、明確に相手へと伝わる。
「ウチは全部言った! お前はどうだハジメ!」
「お、俺……。おれ、は……」
唇を震わせる。気付けば創は目に涙を浮かべていた。
「
「……そーかよ!」
千聖は創の肩を少しだけ強く、叩く。
「んじゃあ、ちゃんと答えるぜ。ハジメ、もしウチを惚れさせたいんならよぉ。喧嘩なんて強くなくていいし、かっけぇ不良になる必要もねぇ。ただ……」
そして言った。
「おもしれぇ男になれ」
◇◇◇
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