第31話 卑怯戦法
かぁー! 予想はしてたが多いなぁ不良!? 今すぐ帰りてぇい!!
けどもー後には
さぁ、作戦開始だぜ……!!
意気込んだ俺は、真っ直ぐに千聖の方を見た。
「よぉ千聖ぉ!
「み、ミナト……!? お、お前なんで!?」
「ンなもん決まってんだろぉが!! お前の忠実なパシリとしてぇ、お前を助けにきたんだよぉ!! そこのなよなよした量産型マッシュルームヘアからなぁ!」
そう言い放ち、俺は創を指差した。
対し、創はとても冷たい……つーかゴミを見るような目で俺を見た。
「……はぁ。いったいなにをしに来たのかな? 君との勝負は昨日完全に決着がついたはずだけど」
「決着だぁ? ちょっと何発かいいの食らわせたからって
「馬鹿かお前は? そんなことをする必要はない。もう千聖ちゃんは俺を選んだんだからな」
「……はぁん? 逃げんのか?」
「あぁ?」
俺の煽りに、創は明らかに苛立った様子で俺を睨み付ける。
「あーあー、いくら俺が雑魚でもこんな雑魚からの挑戦から逃げるなんて、千聖はどー思うんだろうなぁ? ひょっとしたら気が変わって、てめぇのことを捨てちまうかもなぁー?」
「おいてめぇ!! さっきからなに舐めたこと言ってんだぁ!!」
「創さん!! あんな野郎の言葉気にしなくていいっすよ!!」
「今から俺たちがボコして焼き入れてきますから安心してください!!」
創の周りにいた不良たちは口々にそう言うと、俺の方へと近づこうとする。
——が、
「やめろ!!」
まさに一蹴。創の怒号に、不良たちは固まった。
「はぁ……。どうやら俺が甘かったらしい。もっとちゃんと、反抗の意思が無くなるまで、徹底的に潰さないとダメだった」
そう言って、創は高台から飛び降りる。
反射的に、その場にいた大量の不良たちは、奴が歩く道を作るべく、左右に散った。
「おいハジメ!!」
「止めないでね千聖ちゃん。これはあっちが仕掛けてきたことで、俺とアイツの問題だ」
創は振り向かずにそう言うと、そのまま真っ直ぐに、俺の方へと向かってきた。
よーし、乗ってきやがったなぁ。まずは作戦第一段階、千聖を賭けた勝負に持ち込んだ。
次は第二段階だ。
「んじゃ、一応ルール確認な。目潰し金的なんでもあり。なんなら大勢で掛かってきてもいいぜ。ちょうど後ろにてめぇの手下がたくさんいるしよぉ」
「舐めるな。そんな卑怯な真似はしない。お前は俺が一人で直々に沈める。そこに意味がある」
「あっそ。じゃあ次は勝敗後の取り決めだ。俺が勝ったら千聖を返してもらう。そっちが勝ったらどうする?」
「お前はこれから俺に生きていることを後悔するほどの痛みを与える。それで十分だ」
「はは……」
マジでおっかねぇ……。
けど、これで第二段階もクリアだ。
なんとかここまでは作戦通り。
だが俺にとっての正念場はこっから。
腹はもう括ってる。その上で、もっと括る。それくらいの覚悟がねぇと、第三段階をクリアする前に俺が潰れる。
「ふぅ……」
息を吸う。そして、相手をしっかり見据える。
んでもって、構える。
「んじゃあ、やるか!!」
「来い。喧嘩は雑魚の方から掛かってくるのが流儀だ」
「そうかよぉぉぉぉぉぉ!!」
創に流されるままに、俺はダッシュで奴に近づいた。
怖ぇ怖ぇ怖ぇ怖ぇ怖ぇ怖ぇ!!
心臓が飛び出しそうな恐怖を抑えながら、創との距離を一気に詰める。そして、
「おらぁ!」
思い切り拳を振りかぶり、創めがけて撃った。
「……」
だがその攻撃を難なく
「ふんっ!!」
「ぐぅっ!?」
俺の右側から放たれた勢いのある蹴り。寸前でなんとか体制を立て直し、致命傷を避けるために腕で防御する。
「おぉぉぉぉぉ!?」
だが防いでも凄まじい威力。
俺は地面を転がりながら数メートル先へと吹き飛ばされた。
「ってぇ……。ちゃんと防いだんだよなぁ俺……!!」
すぐさま起き上がる。だがすぐ目の前にはまた創の足があった。
「っぶねぇ!?」
「避けたか。咄嗟の反射神経は中々だね」
再び地面を転がって蹴りを避けた俺に、創は淡々とした口調で言う。
「けど、そんなんじゃあ俺には勝てない。それどころか一撃だって当てられないよ」
「はんっ、本当にそうか試してみるか?」
「減らず口を、叩くな……!!」
「っ!?」
早ぇ……!?
圧倒的初速。目を見開く間もなく、創は俺との距離を一気に詰めてきた。
昨日はこれで一気に間合いに入られて、腹に一撃食らった……!!
けど……!!
「考えたぜ、その対策はよぉ!!」
「っは?」
次に俺の取った行動に、創はポカンとした声を漏らす。
まぁ無理もない。俺は今……。
「おいなにやってんだてめぇ!!」
「逃げんじゃねぇ!!」
「卑怯だぞぉ!!」
後ろを向き、迷わず後方へと走り出したのだから。
「うるせぇ!! 卑怯でもなんでもねぇ!! 作戦だ作戦!!」
ブーイングを垂れる不良共に反論しながら俺は走り続ける。
「本当に面倒な奴だなお前は……!!」
ダッと後ろから創が地面を蹴り、俺を追ってくる足音が聞こえる。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は目的地点まで向かって走り続けながら、チラリと後ろを確認する。
よし、想定通りだ!! 創が早いのは初速だけ!! それ以外は俺の方に分がある!! このまま距離と調整して、ドンピシャのタイミングになるように……!!
「気が狂ったか!! 目の前は壁だ!! もう逃げ場はない!!」
創の言う通り、俺が十秒程度かけて辿り着いたのは倉庫の端、つまり壁。
「終わりだ!!」
創は速度を上げ、俺との距離を縮める。奴の伸ばした手が、俺に届きそうになった。
だが……。
「終わりじゃねぇ!! ここが俺の目的地だぁ!!」
「なっ!?」
次の瞬間、俺は壁を蹴ってバク中(ウォールフリップ)。
創の上を飛び越え、奴の後方へと着地した。
「不意を突いたつもりかぁ!! だがそんなもので俺は動じない!!」
俺の予想外の動きに一瞬反応が遅れた創だが、すぐに振り向き、迎撃態勢を取る。
流石に喧嘩慣れした冷静な動きだ。
―—けど、
ちゃんと迎撃態勢取れて、不測の事態を乗り越えたって……そう思ったよなぁ!!
「おらぁ!!」
「ぐあぁ!? 目が……!! っ砂か!?」
ウォールアップはフェイク。
俺の本当の目的は砂を投げつけて創の視界を封じることだ。
予想外の行動、その二段構え。きっちりハマって良かったぜ。
「ぐっ、あの転がった時に……!!」
「せいかーい!!」
「お前ぇ!!」
目をつむったまま、創が俺に殴り掛かってくる。
だがそんな正確性に欠けたパンチは怖くない。俺は軽く避けた。
「んじゃあいくぜぇ!!」
「っ!!」
俺の言葉に反応し、防御態勢を取る創。
しかし、俺の狙っていた箇所はガラ空きだった。
——キーン!!
「ぐおぉっ!?」
俺の蹴り上げは、創の股間にクリーンヒットした。
◇◇◇
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