第15話 ギャルと風呂る②+騒ぐ

 タオルを巻いたままなんて甘えたマネはしねぇ。

 行く時はとことん行く、やる時はとことんやる……それが俺の流儀!!

 攻めるなら、限界までだ……!!


 布で身体を隠すことをしない、正真正銘の全裸。

 ちなみに恥ずかしいかと聞かれれば、答えはノーだ。

 諸事情で人前で全裸になることの恥じらいはとうの昔に捨ててる。


 さぁ、どうだ星名……!? 

 

 俺は期待を込めた目で、真っすぐにヤツの顔を見る。

 ――が、


「……」


 あっれれ~? おっかし~ぞ~?


 どっかの小さな名探偵のようなセリフが頭に浮かぶ。

 だがそれはムリも無いことで、星名が無表情だったからだ。


「あ、あのー星名さん?」

 

 あまりにも予想外の反応に面食らった俺は、恐る恐る聞いた。

 そして奴の答えは……。


「……あー、なんかアレだな。お前のチ〇コ見たら逆に冷静になったわ」

「……」


 ナニィィィィィィィィィィィ!!??


 俺は心の中で叫んだ。そして同時に一体なにが起こったのか、原因究明のために脳を働かせる。

 そして、一つの仮説に辿り着いた。


 ま、まさか……!! 一緒に風呂に入るというアブノーマルな状況と、俺のチ〇コ息子が打ち消し合って、星名の動揺を消し去ったっていうのか……!?


 考えたくないことだが、そうとしか考えられない。

 全力全開の特攻が逆に仇になってしまったのだ。


 他意が無いのは分かってる。

 だが、それでも声を大にして言わせてほしい。

 

 人のチ〇コ見て冷静にならないでくれ。男として悲しくなっちゃうから……!!


「いやぁウチも驚いたぜ。こんなスンってなるなんてよぉ」


 自分でも意外そうな顔をする星名。その視線は依然として俺のチ〇コを注がれていた。


「まぁいいや。とりあえずサンキューなぁミナト」


 冷静になっただけでは飽き足らず俺のチ〇コに感謝まで。男としてのプライドは大分ズタズタだった。

 心の中で大粒の涙を流しながら、俺が必死に平静を装ったその時。


「んじゃまぁ、望み通り洗ってやるよ。てめぇのカラダ」

「え……?」


 星名のそんな一言に、俺は思わず首を傾げた。


「え? じゃねぇーよ。ミナトが言ったんだろ。カラダ洗ってくれって」

「い、いや言いましたけどそれは……」

「遠慮すんなって。ちゃんと洗ってやっからよぉ」


 ガシ、ストン。


 星名は俺の肩を掴むと、風呂椅子に座らせる。

 抵抗などできるはずもなく、俺はただ受け入れることしかできなかった。


 いや、考えてみればこれってかなりエロいな。

 外見だけなら星名は最高に良い女だ。そんな奴に風呂で体を洗ってもらえるなんて最&高。

 それにもっと言えばあの星名に俺の体を洗わせるなんて趙貴重な体験だ。


 作戦は失敗したけど、プラスに考えよう。今はこの時を楽しもうじゃないか。


「じゃあ、お願いします!」


 思い直した俺は、背筋を正す。


「おー、任せとけ。コトハを洗うために磨いてきたテクがよーやく役に立つぜ」


 星名はそう言いながら、シャワーから出るお湯を俺にかける。


「根上さんを洗ったことは無いんですか?」

「おー、一緒に風呂はよく入んだけど洗わせてはくれねーんだ。ケチだよなー」

「千聖に洗われるの、ヤーなの」


 無駄にデカい湯船にプカプカと浮かびながら、根上は答えた。


「へいへいっと、んじゃー準備できたからいくぜー」

「はい!」


 そう言って、星名はボディソープの泡立った手で俺の背中に触れる。

 なんという心地良さ、まるで気分は天国にいるみたいだ。

 

 ゴリ……!!


 うんうん、この肌が抉られるような鋭い痛みがたまらない……って。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」


 先ほどの心地良さとは打って変わり、地獄のような痛みが背中に走り、俺は叫んだ。


 アカァン!! 星名のヤツ力加減ってモノを知らねぇ!! このままじゃあ背中の皮が全部剥けるぅぅぅぅぅぅ!!


 一刻も早くここから出なければ、そう生存本能が働いた俺は立ち上がろうとするが……。


「あ、ちょおいどこ行くんだよ」


 星名の腕力の前に、あっさりと抑え込まれてしまった。


「あ、あのー星名さん」


 ははは、と乾いた笑みを浮かべながら、俺は恐る恐る口にする。


「ん、どーした?」

「や、やっぱり体洗ってもらうのは悪いかなぁーって思いまして……」

「おいおい急にどーしたんだよ? 安心しろって、天国行くくらい気持ちよーく洗ってやっからよぉ」

「いやリアル天国行っちゃう……ってぎゃあああああああ!!??」


 ゴリゴリゴリ……!!


 結局、星名の万力による体洗いはそのまま続いた。

 


「ふぃースッキリしたー」

「風呂後のコーヒーぎゅーにゅー最高」

「お、いいねぇ。ウチも飲も」


 約四十分後、風呂から出た星名と根上はスッキリとした様子でそんなやり取りをしていた。


「……」


 そしてそれを横目に、全身の薄皮が剥がれある意味ピッカピカの一年生状態になた俺はうつ伏せに床に倒れていた。

 辛うじて股間だけは死守したが、それでも受けたダメージは大きく、俺は完全に意気消沈していた。

 一緒に風呂にも入った気がするが、肌への痛みでまったく覚えていない。


「おいおいどーしたミナト? 元気ねぇーなぁ?」

 

 誰のせいでこーなってると思ってんだこのアマァ……!?

 

 ピシピシと俺の肩を叩く星名に、そう思わずにはいられなかったが、

「お前のせいで体が痛いんじゃボケカスがぁ!!」などと言える勇気があるワケもない。

 とりあえず俺のこの状態を見て、「ちょっと休んどけよ」と言われることを期待するばかりだ。

 

 ――が、


「しっかりしろよなぁ。夜はなげぇんだからよぉ」

「へ……?」


 思わず目を見開く俺を他所に、根上が机の上に大量のエナドリを並べ始める。


「今日はオール」

「テンションブチ上げで楽しむぜー!」


 ――ポキリと、心の折れる音がした。



『ぎゃははははははは!!!』


 折れた心も束の間、俺は星名たちと馬鹿笑いをしながらB級映画を観たりバカなTikTokを撮ったりして騒ぎまくっていた。

 エナドリの大量摂取と深夜テンションの賜物である。

 多分途中で記憶が途切れるけどどうでもいい。シラフでこの空間にいられるか。


「フゥゥゥゥゥゥゥ!! イエェェェェェェェェイ!!!」


 意識を手放すその瞬間まで、俺はバカ騒ぎを楽しんだ。



◇◇◇

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