第6話 なんとか起こせトラブルを!
バスケが始まって数分、俺はあまりにも予想外の光景を目撃していた。
「ほらよ佐鳥!」
「はは、ナイスパス!」
なんで星名の奴、佐鳥と華麗な連携プレーを決めてんだぁ!?
普通に上手いプレーを見せる星名に、俺は堪らず心の中で叫ぶ。
想定じゃ佐鳥が華麗なワンマンプレー決めて、それを見た星名たちが佐鳥カッコいい! 好感度急上昇! ってなるはずだったのに……!!
星名があんだけ自分で動けちまうなら、佐鳥のプレーを見ても大して好感度上がらねぇじゃねぇか!!
根上の方は……。
「うぇぇ……はぁ、はぁ……走んのキツ」
ダメだぁ!! 息切らしまくってて佐鳥の方なんてこれっぽっちも見ちゃいねぇぇぇ!!
星名と違っててめぇは体力無さすぎだろぉぉぉぉ!!
星名の運動能力の高さと根上の運動能力の低さ。
土壇場で露呈したこの二つの要因は、俺の作戦を一気に半壊させた。
ま、まだだ……!!
『俺が下手なプレーをして、佐鳥のカッコよさを強調』!! コイツがまだ残ってる……!!
上手くいきゃあ星名たちが俺の圧倒的ダサさに嫌気が差して、興味の対象をそのまま佐鳥に移すことが可能だ……!!
気を取り直し、俺はボールの行方を見定める。
かつてない、最高のダサプレーを魅せるために。
今ボールは星名と佐鳥の間を行き来している。
よし、流れはこうだ!
星名と佐鳥の間を行き来するボールを俺がパスカットで奪おうとする→無様に失敗!
いくぜ!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
佐鳥が星名へとボールをパスした瞬間、俺はボールが通過する軌道へと一気に走り出す俺。
そして滞空中のボールをど素人丸出しの格好で取ろうとして……。
ずってーん!
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
見事に失敗。
ボールに触れることができず、最高に無様にすっ転んだ。
どうだ? 佐鳥と比べて最高にダサいだろ!! さぁ、この足を引っ張るだけの俺の愚行に引き気味の視線を向けろやぁ!!
そう思った矢先である。
「はい取った!」
「あぁっ!?」
チームメイトである才川が、星名が俺の無様な姿に気を取られた一瞬の隙を突き、ボールを奪い取った。
そして、彼女はそのまま一気にバスケットゴールまで走り、レイアップで軽やかにシュートを決めた。
「いえーい!」
「ナイス茜ー!」
才川と咲宮はそう言ってハイタッチをする。
次いで、才川は立ち上がったばかりの俺の元へと駆け寄って来た。
「束橋!」
「え?」
両手を前に出す才川。
その意味を無意識に理解した俺は、反射的に自身の手を才川の手と重ねていた。
「いえーい!」
「い、いえーい」
「ナイスプレー! カッコ良かった!」
「え?」
カッコ良かった? なにを言ってるんだコイツは?
「誰がどう見たってダセェと思うんだけど……」
なので、俺は本心を口にする。
「ううん。そんなことない」
が、才川はそう言って首を振った。
「一生懸命やることは、なんだってカッコ良いんだよ」
「そ、そういうもんなのか」
「イエース。そういうもんです!」
得意げに鼻を鳴らす才川。
今回の行動、俺はチームメイトである彼女と咲宮に批判されることも覚悟していた。
だが反応は見てのとおり。
何と言っていいのか分からず、俺は頭を
いや、才川たちの反応なんざどうでもいい!!
肝心なのは星名たち……いや、根上はあの調子じゃ俺の方見ねぇだろうから星名の反応オンリー……!!
そして直後、当初の目的へと立ち返った。
才川にはあぁ言われたが、同じチームであることとあの性格ゆえのレアケース!!
敵チームであり、傍若無人を擬人化したようなあの女は冷たい目、蔑みの目……そこら辺で俺を見ているはず!! さぁ……!!
祈る、というかもうそうなっているだろうという確信を抱いた俺は、バッと彼女らの方を見る。
「ぜぇ……はぁ……死ぬ」
予想通り、根上は息を切らしこっちを見る余裕は無い。
対し、星名は真っすぐに俺の方を見つめていた。
「……」
――なぜか、苛立った様子で。
なんでぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
あまりにも想定外の反応に、俺の中に動揺が走る。
き、キレてる……あれは間違いなくキレてやがる!!
ど、どういうことだ!? 同じチームじゃねぇからキレる理由なんてないはずなのになんで……!?
一体なにが星名に怒りの感情を発生させたのか、俺にはこれっぽっちも理解できなかった。
だが、現実として奴は今、間違いなく俺に怒りの視線を向けている。
対処しなくては……そう思うのも束の間。
「……」
星名が真っすぐこちらへと近付いてきた。
ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??
死を悟った俺の脳に、警報が大音量で鳴り響く。
が、鳴り響いた所でどうすることもできない。死神と俺との距離は、既に5メートルを切っていた。
あぁ……。
俺は天を仰ぐように頭を上げ、目を瞑る。
そうして脳を駆け巡るのは、鑑賞と自家発電用にFA〇ZAとD〇siteで購入している、大量のエロコレクションたち。
すまない皆。俺はもう、ここまでみたいだ。
……もっと、お前たちと戦いたかった(意味深)。
そう思いを
「ミナト」
「殺すなら一思いにお願いします」
「あ? なに言ってんだ?」
ドスッ。
「ごほぉう!?」
星名のキレの良いパンチが腹部にクリーンヒットした俺は、堪らず声を上げ、その場に膝をつく。
「ちょーし乗んな」
そして理不尽極まりない一撃がまだ消化しきれてない最中、星名は謎の言葉を言い残して戻っていった。
「な、なにがっすかぁ……?」
言葉の意味がまったく理解できなかった俺は、奴の背中をただ見つめ、
◇◇◇
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