第308話 辛評の突撃は

「敵は曹操の息子か・・・

全騎兵を南門に集めよ。」

楽成を守る辛評は攻め寄せる将がそうの息子である曹彰と知り勝負に出ることにする。

もし曹彰を人質もしくは討ち取る事が出来れば袁家の状況は今よりは良くなる、そしてその手柄があれば審配に大きな顔をされる事も無くなるのだ。

幸い城には五千の兵がいる、南側の局所で見れば同数の戦いが出来る、むしろ東西の門を開けばそこに向かい兵が動くだろうそうなれば更に有利になるはず、辛評は仕掛けるタイミングをずっと狙っていた・・・


「今だ!東西の門を開け!」

門を開いた事により曹彰軍が楽成に入って来るのだが入った所には落とし穴や柵が配置してありすぐに南門には来れなくしてある、そして曹彰軍が東西に分かれた時を見計らい・・・

「南門を開け!全軍突撃、兵が出た後は門を閉じよ!突撃だ!!」

楽成に籠っていた五千全ての兵で仕掛ける突撃で有る、勝ち戦の油断も有るだろう、一気に勝負をかけるのだった。


「予測通りだな、曹彰見事だ。

関興軍出撃だ、敵の横腹を食い荒らせ!」

関興は突撃を開始する、これまで戦に参加していなかった憂さを晴らすかのように苛烈な攻めを見せる。


「くっ!読まれていたというのか!

だが、やる事は変わらぬ、目指すは曹彰の首ただ一つだ!」

辛評は被害も気にせず突き進むしか無い、幸い突撃してくる関興の兵はそれほど多くない、今なら目の前の敵を打ち破り曹彰に辿り着くのも・・・


「なんなんだ、何故一陣すら抜けない!!」

辛評の突撃を絡め取るように陣形が変化し、第一陣を抜くことも出来ない。

「生憎、俺の防陣を抜けると思わないで欲しい。弓兵敵を減らせ。」

当初より突撃が来ると聞いていたのだ、郝昭はじっくりと防衛陣を作り上げ、突撃に備えていたのだ。

特に騎兵が駆け抜ける事の出来ないように各所に馬房壁まで作ってある、辛評の突撃はその足を止めるしか無かった。


「くっ!ここを抜けなければ曹彰の首を取ることが出来ないんだ!!」

「取らせる訳が無いだろ。

それより自分の身の心配をしな。」

「なに?うわっ!」

「敵将辛評、討ち取った!!」

関興の突撃が辛評まで届いたのだった。 

「お見事、敵将辛評が死んだんだ、降伏するなら今だぞ!武器を捨てろ!!」

郝昭が声を上げると突撃していた兵士達は武器を捨てて投降する。

こうして楽成の戦いは決着がつくのであった。

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