第306話 曹彰の戦い
曹彰軍は目的地である、楽成に向けて進軍していた。
これまで軍の兵站は陳宮が行ってくれたのだが全部自分達で行うとなると問題が出てくる、それを夏侯衡は一つずつ解決しながら進軍する、その速度は従来の軍より遅いのだった。
「夏侯衡、もう少し早く進軍できないか?」
「曹彰様申し訳ありません、道が思いのほか悪く輜重隊の進軍が上手くいっておりません。」
「何か手はないか?」
「先行する軍に道を整備しながら進軍してもらうか、各自に多めに持ってもらうぐらいでしょうか?」
「うむ・・・
よし、今後の発展も考え歩兵に道を整備させながら進軍する、輜重隊が通れるぐらいに整備すればいいのだろ?」
「はい、岩を除けてくれるだけでもありがたいです。」
「わかった、すぐに通達する。」
曹彰は一つ一つ経験を積んでいく、時間は掛かるものの道を整備した事で以後の輸送も良くなるのだがこの時はそこまで考えていなかった。
「楽成に来るまでに時間がかかったな・・・」
「各自町を囲め、くれぐれも略奪をさせぬようにあらためて伝えよ。」
「はっ!」
「囲みができ次第、町に使者を、降伏するように呼びかけよ。」
「はい。」
曹彰は降伏を呼びかけるのだが・・・
「ここは袁尚様に渡すわけにはいかない大事な町だ、誰が渡すか!」
楽成に籠っていたのは辛評は袁尚の腹心審配から嫌われていた為、南皮に籠る事を許されず楽成の守りに配属されていた。
「各将に連絡、攻城戦を開始する。」
曹彰は正攻法で攻略を開始する。
南から郝昭、東から郭淮、西から張虎が攻め、北は逃げ出せるように攻撃を加えていなかった。
教科書にあるような無難な攻め方をしている。
俺が見た時の感想である。
「陳宮様、曹彰様の攻め方はどうでしょう?」
夏侯覇は俺の隣にきて曹彰の攻め方を聞いてくる。
「問題は無いですね、ただ力攻めの前に小細工の一つでも出来るようになれば損失を下げれるでしょう。」
「小細工ですか?」
「はい、城攻めは兵の損失が多い、兵が減れば次の戦いが厳しくなる、戦争とは今この場だけでは無いのです、どれだけ兵の損失を抑えれるかそれが大事なのです。
まあ正攻法も知らなければなりませんから今はあの攻め方でも良いとは思いますよ。」
「仮に陳宮様ならどう攻めましたか?」
「町を囲み声で圧をかけた上で降伏勧告、将だけでなく町の纏め役に届くように町中に書状が届くように四方から多数送りますね。」
「纏め役にですか?」
「ええ、この町に籠る兵は多くないでしょう、ならばこそ圧をかけた後、身の保証をすれば町は寝返るつもりになるでしょう、町が寝返るつもりになれば籠城は出来ない、そうすれば労なく町を手にすることができます。」
「曹彰様にお伝えしないのですか?」
「今は正攻法で充分です、終わったあと伝える事にしましょう、今は自由に兵を使う事を覚える時です。
・・・それと夏侯覇は町が落ちるまでこの場に待機。
城が落ちる寸前に敵が全軍で曹彰に向けて突撃してくる可能性が有ります、対応出来れば良いのですが兵が混乱するようなら夏侯覇が横槍を入れて敵将を討ち取りなさい。」
「逃げ出せるように北を開けているのに、そのような事が有りますか?」
「敵将の忠誠心次第でしょうか?
私が敵なら曹操の子、曹彰が目の前にいるのです、いっそ東西の門を同時に開け敵を城の中に引き入れ南門から一気に打って出ます。
数が少なくとも勝ち戦に気が緩んだ瞬間なら曹彰まで辿り着ける可能性は充分に有ります。」
夏侯覇は陳宮の話にゾクリとする、言われる通り勝ち戦で気が緩んだ瞬間に一気に仕掛けられると兵が混乱して立て直すのに時間がかかるかも知れない、この戦曹彰の身を確保すればどれだけの戦果になるか・・・
「まあ、曹彰にもちゃんと教えてますし、対応はしてるみたいですが、君は念の為ですよ。」
「えっ?」
「夏侯覇、君も戦局を見る目を養いなさい、私は南皮に向かいます、町を落としたら南皮に戻って来なさい。」
俺はひらひらと手を振り夏侯覇を置いて南皮に合流するのであった。
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