第204話 後継者争い
「袁紹様、後継者は如何になさるおつもりですか?」
沮授は袁紹と二人で話す機会があったので後継者問題について問う。
「沮授、ワシは袁尚に継がせたいのだが・・・」
「先の敗戦もあり、袁尚様ですと家中が纏らないかと。」
「わかっておる・・・沮授お主は誰が良いと思う?」
「長幼の序を考えると袁譚様でしょうか?」
「だが、袁譚も敗戦しておるだろ?
それに袁譚は覇気が無い、家督を継いでも家中が荒れるだろう。」
「ならば袁煕様はどうでしょう?
現状、大きなミスもありません、太守をしている幽州も安定しておりますし、先日烏桓族との婚姻を結び、後ろ盾を得た所です。」
「だがなぁ・・・」
袁紹は袁煕に跡目を継がせる気はない。
烏桓と婚姻をしたのは敗戦により失った兵を回復させる為の苦肉の策であり、袁家の本筋に異民族の血を入れる訳にはいかない。
だからこそ、跡目を継がせる気の無い袁煕を選んだのだ。
「困りましたなぁ・・・」
「まあ、急ぐ必要はあるまい、袁尚、袁譚どちらにしても手柄を立てる機会はあろう。」
「わかりました、ですが袁紹様、どちらになされるか、しかとお考えください。」
「わかった、考えておこう。
それより、国内の状況だが・・・」
それから袁紹は沮授と今後について話し合いを行い、後継者を決めることを後回しにするのだが・・・
翌朝
いつまでも目覚めて来ない袁紹に朝から用事があった参謀の逢紀が袁紹をおこしに向かったのだが、そこには既に冷たくなった袁紹が横たわっていた。
「袁紹様!袁紹様!」
逢紀が呼びかけるも返事が無い。
「だ・・・」
逢紀は人を呼ぼうとしたが慌てて自分の口を塞ぐ、袁紹は誰も後継者に指名していない事を思い出したのだった。
このまま遺言も無ければ長幼の序で袁譚が継ぐ事になるだろう。
しかし、袁譚には派閥がある。
袁尚派閥に属する逢紀は自身が左遷されることに不安を覚える。
そしてそれは逢紀を道義の道から踏み外すには充分な理由である。
逢紀は遺言を捏造するのであった・・・
袁紹が亡くなり、後継者の3人と重臣達を集めた場にて袁紹の偽りの遺言を発表する。
「袁紹様はいまわの際に袁尚様を後継者として言い残された。」
「な、なんだと・・・」
袁譚は信じられないといった表情を浮かべる。
「お待ち下さい、私は先日袁紹様に跡目についてお話しましたが、跡目については様子見をするとおっしゃっておりました。
それなのに袁尚様と言われるのは腑に落ちませぬ。」
沮授は袁紹から直々に聞いたのである、逢紀が言う言葉を信じる事が出来なかった為にいち早く声をあげる。
「沮授殿はそれがしが嘘をついていると!」
「事が跡目の事ですので、逢紀殿のご都合のよろしい遺言があったと言われても信じきれるものではない。」
沮授の言葉に袁譚派閥も納得のいかない声を上げ始める。
「静まれ!言った言わないで揉めて問題が解決しないだろう、袁譚兄上、事の真偽はともかく家臣達を落ち着かせる為にもここは引いてくれませぬか?」
「袁尚!何を言っている!お前こそ長幼の序を考え引くべきだろ、今なら一領主ぐらいにはしてやる。」
「自分の領地すら守れぬ主君など持つつもりは無いと家臣達も申しているのだ、引き際をわきまえろ!」
袁譚、袁尚の兄弟喧嘩は激しさを増していく。
「静かにしなさい、袁紹様の葬儀が先にございます。
跡目については一度各自よく考え、葬儀が終われば、もう一度話し合いましょう。」
取っ組み合いになる二人を引き離し沮授が場を仕切る。
袁紹という重しが無くなった今、袁家の兄弟喧嘩は家臣達を巻き込んだものへと拡がっていくのであった。
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