第30話 助けた後で・・・
寿春についた劉勲は不満をあらわにする。
「なんだこの廃墟は!俺にここで寝ろとでも言うのか!」
「申し訳ない、我々も占領したばかりですのですぐにどうこう出来る訳でもない、そうだ泊まれないならそのまま許昌に向かいますか?」
「ふざけているのか!何処の国に襲撃をされた日に長距離移動をする者がいる!」
「それでしたら我慢していただかないと困りますな。」
「くっ!話にならん!この事は曹操によく言っておくからな!ただですまんと思っておれ!」
劉勲は文句を言いながらも用意した部屋に入っていく。
「はぁ、面倒な奴を助けたのか・・・」
俺は僅かな付き合いながらウンザリしていた。
その夜、わずかながらではあるが宴を開いたのだが、劉勲は顔を出すなり不機嫌そうに宴にケチをつける。
「これが宴か、無骨な男ばかりではないか。」
「失礼だが、我々は軍としてきている、ましてやこの街は占領したばかり、女性の用意などとても出来ない。」
「これだから無能な将はいかん、私は曹操の友人だぞ!持て成したいならそれなりの宴を開くがよい!」
劉勲は文句を言うだけ言うとまた自室に戻る、当然の如く、張遼を筆頭に怒り心頭の状態となる。
「なんだ、あの男は?助けてもらっておきながら感謝もないのか?」
「陳宮やっちまおうぜ、始末してもバレねぇよ。」
「落ち着け、一応曹操の知り合いだそうだからな、許昌に送るだけは送ろう。」
「甘いな!甘すぎる!」
宴が始末をする相談に変わりつつある中、劉勲の家臣達は震えていた。
「皆さん、お怒りはごもっとも、しかし、我が主君劉勲様は城を失いお心が荒れておいでなのです、どうかお許しを。
そうだ、宴には花が必要でしょう。
私の娘は幾分歌曲に自身がありますれば、皆様のお慰みに一つ披露させてもらいたい。」
「それはいい、皆も不満ばかり考えず、歌曲に耳を傾けようではないか。」
橋公は話の流れから身の保身を考えた提案をしてくる。
俺としても始末するつもりは無いので空気が変わればと許可を出す。
「大喬、小喬入って来なさい。」
「「はい、お父様。」」
入ってきた姉妹は二人の絶世の美女とも言える二人であり、皆の視線が釘付けとなる。
「さあ、命を助けてくださった方々にお前達の感謝の気持ちを伝えるのです。」
「ふつつかながら、この大喬一曲舞わしてもらいます。」
「わたくし、小喬が演奏させてもらいますわ、どうかお楽しみくだされば光栄にございます。」
大喬の舞は、奔放にして妖艶、大喬自身の魅力と相まって見るものを虜にする。
そして、小喬の曲の旋律はこころを大河の流れに任せたかのような心地よさを感じ、二人の相乗効果で新たな世界が創られていくのであった。
「す、素晴らしい、このような歌を聞いたことは無い、いや誠に素晴らしい物をありがたい。」
聞き終わった俺は深々と二人に頭を下げる。
「いえ、お耳汚しでなければ幸いにございます。」
「これほどの事を体験出来たのだ、耳汚しな筈が無い、皆もそうだろう。」
俺は声も出ていない張遼達に声をかける。
「いや、実に素晴らしい、歌などよく知らんが誠に心地よかった!」
「もう一曲願いたい!」
張遼達は怒りを忘れ、楽しんでいる様子に俺は安堵するのであった。
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