第2話 呂布の最期

「出陣だ!!」

翌朝、殿は俺に家族を託して城から打って出る。


「殿、ご武運を・・・」

俺は妻になった希とその母であり殿の正室厳氏、そして側室の貂蝉と共に見送っていた。


「陳宮、主人は帰って来ますよね・・・」

厳氏は昨晩の宴が最後の宴と知りつつも、まだ何処か無事に帰って来ると願っているようだった。


「厳氏様、殿は最後の武勇をお見せしにいったのでございます。

この城にはもう帰って来られないでしょう。」

「陳宮!あなたはお父様が帰って来ないでいいというの!」

俺の言葉が気に入らないのか呂希は俺にキツく言ってくる。


「それがしとて、殿にご帰還願いたい。

ですが、殿に後事を託された以上やるべき事が多々ございます。」

「陳宮!!」

俺は呂希に頬を叩かれる。


「呂希様、心をお静めください。これより城を開く準備を行います。

呂希様、厳氏様、貂蝉様もそれぞれお荷物をまとめ、城を出る準備をお願いします。」

「まだ言うのですか!!」

呂希は更に俺を叩こうとするが貂蝉に腕を掴まれ止められる。


「希、落ち着きなさい。

貴女のその姿を呂布様にお見せ出来るの?

陳宮は呂布様に後を任されているのよ。」

「くっ、わかったわ!ふん!」

呂希は貂蝉に止められ面白くなかったのか不機嫌そうにこの場を離れていく。


「陳宮、これから大変だろうけど、よしなにお願いします。」

貂蝉は俺に頭を下げてくる。

「それがしに出来る限りの事は行います。

何かあればお申し付けください。」

「陳宮、あなたが頼りです。さあ厳氏様準備を致しましょう。」

「ええ、そうですね。」

貂蝉は厳氏を連れて自室に向かっていく。


俺は遠目で戦場を眺める。

「殿、ご武運を。」

俺は最高の礼で呂布を見送るのだった。


一方戦場では呂布の武勇が輝いていた。

「ワレは呂布、我が武勇比類なきものなり!」

方天画戟を振るい、兵士を薙ぎ倒し、一直線に曹操の元に駆けていく。

だが、配下の兵士は一人、また一人と数を減らしていくのだ。


「蛮勇の呂布よ、一人でどうするつもりだ。」

曹操本陣まで辿り着いた所で曹操自身から声をかけてくる。

「曹操、よく俺の前に姿を見せたな!」

「蛮勇程度に怯える曹操ではない!」

「ほざけ!万夫不当の武勇を味わうが良い!」

呂布は曹操に向かい駆けるが・・・


呂布の眼の前に網が覆いかぶさる。

「ぬっ!卑怯な!」

呂布が網を斬るものの、次から次に網が出てくる。

「大人しく捕縛されるがいい。」

曹操は呂布の武勇を惜しんでいた。

願わくば捕縛し降伏させようと考えていたのだ。


「この程度でワレが止まると思うな!」

呂布は纏わりつく網を引きずりながらも前進を止めない。

「殿危ない!」

曹操に届く前に許褚が呂布の行く手を阻む。


「邪魔だ!」

呂布は切りきれていない網が纏わりつつも方天画戟を振るい許褚と相対する。

「そんな状態の奴に負けるか!」

許褚は呂布の方天画戟を難なく受け止める。


しかし、呂布のチカラは普通じゃなかった、受け止めた許褚をそのまま力任せに斬ろうとしていた。

「な、なんなんだ、このチカラは!!」

許褚もチカラに自信がある漢だ、呂布といえども力負けするのはプライドに関わる。

圧されつつも力くらべに興じる、


「許褚殿、助太刀いたす!

行くぞ関羽、張飛!」

曹操の元に身を寄せていた劉備が配下の武将関羽と張飛と共に呂布に襲いかかる。


「くっ、おのれ!だがその程度!」

呂布は四人の攻撃も何とか捌き続けていた。


「見事な武勇だ、失うのは惜しい・・・」

曹操はあまりに見事な武勇に惚れ惚れする。

「曹操、呂布は飼える人物じゃない。

ここで討ち取るべきだ。」

夏侯惇は曹操の悪いクセに気付き忠告にやってきていた。

「惇、見てみろよ、あれ程の武勇、他にはおらんだろ!」

「たしかに・・・だがアレは裏切る漢だ、お前が何を言ってもここで討ち取る、淵やれ!」

夏侯惇は夏侯淵に合図を送る、すると狙いをつけていた夏侯淵の矢が呂布の腕を射抜く。


「グッ!」

一瞬、呂布のチカラが弱まる、その瞬間を逃すほど呂布の相手をしていた豪傑達は甘く無かった。

チカラの抜けた方天画戟を関羽が弾き飛ばし、張飛が蛇矛を呂布に突刺し、許褚が肩から両断するのだった。


「敵将、呂布討ち取ったり!!!」

劉備の声が高々と戦場に響き渡るのだった・・・

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