未来からきた男:7
ふと、呼び鈴がなった。と、同時に扉を叩く音と罵声が耳に入ってきた。
「おい! いるのは分かってんだ! 早く開けろ」
ドンドン、ドンという叩く音が次第に大きくなっている。木造アパートの木製の扉は今にも叩き割れそうだ。
「てめぇ早く出てこい!」
居留守だと気づかれないように、ゆっくりと玄関に移動し恐る恐るのぞき窓から外を見た。するとそこには杉本を追っていた二人組の男が扉の前で仁王立ちしていた。
どういうことだ? まさか、まだ未来は変わっていないというのか?
怒鳴り声を上げていた男が、年上らしき男と話をしている。
「……出てこねぇっすねぇ。」
「もっと怖がらせろ。どうせ居留守使ってんだから」
「寺山の名前出せば出てくるんじゃないっすかね」
「おぉ、やれ」
再び、扉を叩き出した。
「おい、あんたも寺山のように家を燃やされたいのか? てめぇ借りた金はちゃんと返せや!」
寺山? 借りた金? どいういことだ?
「……しぶといっすねぇ。燃やしちまいますか?」
「まだはえぇよ。もっとじらせ」
「でも、寺山だって、家燃やした途端、急に一千万円用意したじゃないっすか。早めにもらって、とっとと次の仕事行きましょうよ」
「馬鹿野郎。寺山はこいつから金巻き上げてんだよ。この前、こいつと寺山が公園にいたの見たろ? もっとなじってこいつに次の魚も連れてくんだよ」
「そうなんすか。さすがアニキっすねぇ」
「どけ、俺が脅してやる」
再び、扉が叩かれた。壊れそうなぐらい大きい。
「おい、いるのは分かってんだ。いいか、よく聞け。明日までに貸した金一千万円を用意しろ。利子の百七十万円も忘れるな。用意できなきゃ明日、てめぇの家から金目のものを担保としてもらっていくぞ。足がつかないようにその後、家は燃やしたるわ。寺山のとこのようにな。今度は荒らしだけじゃねぇからな、覚えとけ」
ひゃ、ひゃ、ひゃっと、奇怪な笑い声を放ちながら去っていった。「ヤクザ風の男」ではなかった、彼らは「ヤクザの男」だったのだ。
俺はすぐに図書館に出かけた。量子力学のコーナーや宇宙科学のコーナー、テクノロジーのコーナー、それから航空機や船舶、車などの技術本のコーナーに行き、タイムマシン装置に見えそうな設計図やそれらしい化学式や方程式の類い、英文の論文などを片っ端からコピーしていった。
ブラックホールのことやワームホールの知識も頭に叩き込んでおこう。そうだ、隣の部屋の表札も確かめておかなければ。
コンビニ前でコーラを飲んでいる若者がいる。二十代後半か、三十代前半ぐらいだろう。
俺は、彼めがけて思いっきり走っていった。手にはさっき図書館で作った「特許書類」の入った分厚い封筒を持って。
「た、助けてくれ。お、追われているんだ!」
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