ウルストの港へ


 メイナード地方の南南東の方向に位置するウルトスの港、聞いた話によると、ウルトスの港の由来はかつて勇者トレシアと一緒に旅をしていたと言われるウルトスという戦士ファイターが作ったとされる港である。


 ウルトスの港にはいろんな地方から来られた旅人や民の人が利用する事が多く、カルーシャとアイシャも私を探す為に船で、ここメイナード地方にやって来るために利用したとか。


 そして私達は、ウルトスの港のすぐ近くにある村に来ていた。前にサランさんとこの村の野菜などを運んでいた馬車を護衛する時に一度寄っていた村がここなのだ。


「あの時はどうもありがとうございました」


 農家のお兄さんが頭を下げて感謝された。


「いえいえ、もしまた何か困ったことがあれば言ってください」

「ほ、本当ですか。その時はまたよろしくお願いします」


 農家のお兄さんは大きな声で返事をした。


 トコトコ! トコトコ!


 そんな事もあり私達は村を後にして、村の奥に進んで行った。


「それにしても、魔力やステータスが高いと言っても初めてのクエストだったのに、よく初クエストで馬車を護衛するクエストにしたわね」


 カルーシャは私の方を向いて、やれやれとしていた。


「確かにまだ戦闘やクエストに慣れていない初心者冒険者様達は、簡単な納品クエストやスライムやゴブリンを数体倒すだけのクエストなどが定番なんですよ」

「確かに私もあの竜を一撃で、簡単に倒せるなんて思ってもなかったし、なによりサランさんが一緒に同行してくれたおかげでクリア出来たみたいなものだから」

 

 きっとあの時サランさんに会わなかったら、アイシャの言う通り簡単なクエストをやっていたと思うな……


 「そう言えばいつもサランさんって口にしてるけど、もしかしてサラン・クラウチャアかしら?」

「私もずっと気になっていました」


 そう言えばあんまりこの話は詳しくはしてなかった。


「うんそうだよ」

「や、やっぱりそうだったのね」


 カルーシャはとても慌てた様子だ。


「ら、ライカ様はどうやってサラン・クラウチャア様とお会いしたんですか?」


 カルーシャやアイシャが驚く程の反応をしているってことは、やっぱりサランさんは凄い冒険者なんだな。

 そりゃAランク冒険者だもんな。


「私が竜を倒したって話をしたでしょ」


 カルーシャとアイシャはうんうん頷く。


「元々サランさんは緊急クエストで、マイアナ火山の竜が私が乗っていた馬車の方に向かってきているのを守るために来たようだけど。

 私が簡単にやっつけちゃったから来た意味がなかったようだけど、その時が初めての出会いかな」


「確かに、せっかくやって来たのに倒されてましたってなったら、誰だって思いますよ」

「相変わらずぶっ壊れたステータスね」


 トコトコ! トコトコ!


「おっと、そろそろ見えてきたわね」

「あれが、ウルトスの港なのか」


 私の目に写ったものは、青い海に大きな船がたくさん止まっており、いろんな人達がここウルトスの港に集まって来ている。


 ザッブーン!


 それにしてもやっぱり海の音はいい音だな、昔元の世界にいた時、子供だった私が父親に連れて来てくれて、海でよく遊んでだっけ……


「ライカ何ボーッとしているの?早くカウンターに行かないと乗り過ごすことになるわよ」


 私が昔の事を考えているとカルーシャが話しかけて来たようだ。


「あぁ、ごめんごめん考え事していた」


 それにしても見渡してみると、私達みたいな冒険者などがたくさんいる。やっぱりこれから先私達もこうやって船を使う事が多いのかな。


 てくてく!  てくてく!


 カウンターには私達以外の人達も皆並んでいた。


「やっぱり港ってなると混んでるわね」

「やっぱりってことはいつも混んでるの?」

「そうよ、港は冒険者にとって必要不可欠だからよ」

「ライカ様は港に来られるのは初めてなんですか?」

「そうなんだよね……」


 だって私転生してからまだ一週間も経っていないですし、前世の時は仕事で忙しくて、港なんか一回も行ったこと無かったし。


 そんなこんなで前に並んでいた人は、居なくなり遂に私達の番になりました。


「おや、君達二人は確か……」

「数日ぶりです。エリーナ様」

「相変わらずの大行列が出来ていて忙しそうね」


 カウンターの方とカルーシャ達はなんか話し合ってるけど、私だけ置いてきぼりで空気になってるんですけど……


 私が落ち込んだ顔を見ていたアイシャが慌ててカウンターさんの自己紹介をした。


「ご、ごめんなさいライカ様、この方のお名前はエリーナさんと言って、港のカウンターでいつも働いてる方なんですよ」

「宜しくね、私はエリーナあんたは?」

「ライカ・ウォルデムと言います」


 私は頭を下げて名前を言った。

 

「そうかい、ライカちゃんとでも呼ばせてもらうね」

「はい、大丈夫です」


 ちゃん付けで名前呼ばれるのは、私ライカ・ウォルデムの出身地の村で武器屋をやっているおばさんに、呼ばれて以来だな……今まで基本的に様か呼び捨てかのどっちかだったから。


「それであんた達、一体今回はどこに行こうと思ってるんだい?」

「実はギルド員の人に、オラスト地方に向かって欲しいという事で、ここにやって来たのよ」

「詳細は詳しく分からないのですが、とりあえずオラスト地方に行って、村に行けば何か分かると思うんですよね」


 オラスト地方の詳細は詳しく分からなくて、知っている情報がひとつも無いし、何か手がかりのためにも聞いてみるか……


「あの、何かオラスト地方で変わった事や有名な物とかってありますか?」

「変わった物や有名な物?うーん、あっそうだ」


 エリーナさんは何か思い出したような様子だ。


「これは他の冒険者に聞いた話になるんだけどね、モンスターの強さが前と比べて比にもならないぐらいモンスターが強いって話よ」

「モンスターの強さが前と比べて強くなったんですか」


 アイシャは何か考えていた。


「なるほどそれで、あのギルド員に行って欲しいという事で頼まれた訳ね」


 カルーシャは私の方を向いてウインクした。

きっと私のステータスがチート級だから依頼されたんだって分かったんだろうか……


「まぁとりあえず、これ以上長話をしていると他の人達にも迷惑だから、三人分で銀貨九まい支払ってくれるかい」

「確かにそうですね」


 私はエリーナさんに三人分の代金を支払い、その場を後にして、遂にオラスト地方行きの船に乗船した。


 オラスト地方には強いモンスターがいると言うが、どうしてなんだろうか……

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