正直なラーメン店

きょうかちゃん

正直なラーメン店

田中家の父の誠、母の忍、息子の康二は昼食を食べる店を探していた。


「パパ、あそこに高級焼肉屋があるよ、あそこにしようよ」

「ダメだよ、焼肉は肉の油が体に優しくないから」

「そうね、お財布にも優しくないわね」


「パパ、あそこに高級フランス料理屋があるよ、あそこにしようよ」

「ダメだよ、フランス料理は油が多く使われているから」

「そうね、お財布にも優しくないわね」


「パパ、あそこにラーメン屋さんがあるよ、あっでもダメだよね、ラーメンって油が多く使われているから体に優しくないもん」

「いいやラーメンは大丈夫なんだ、ラーメンは油がスープに溶けているから大丈夫なんだ」

「でも油を食べることは一緒じゃないの」

「いいやラーメンは大丈夫なんだ、ラーメンは特別なんだよ」

「そうねラーメンは特別ね、お財布にも優しいし」

「よしラーメンにしよ」


三人はラーメン店の看板を目にした


「中国四千年の歴史を詰め込んだラーメンを作りたいと考えているが作れそうにない店主が頑張っている正直なラーメン店、だいぶ正直なネーミングセンスをしたラーメン屋さんだね」

「こんなに正直な店なんだから多分美味しい店なんだよ」

「そうねこんなに正直な店ですもの多分美味しい店よ」


三人はラーメン店に入る


「パパ、僕醤油ラーメンが食べたい」

「そうだね、醤油ラーメンはいいね、パパは味噌ラーメンにしようかな」

「私は塩ラーメンにするわ」

「ねぇパパ、これなんて書いてあるの」

「ええと、当店は正直な店ですのでお客さまに正直に説明しますと、一年前に食中毒を起こしました。これからは気をつけます。ごめんなさい、また店長は懲役三十年の元殺人犯ですが更生しているので大丈夫です。また当店の食材に関しましては全て国産の安全なものと元麻薬密売人である社長が言っていたので多分大丈夫です。社長が仕入れ先を教えてくれないのでわからないですが、食中毒を起こした元ヤクザのバイトより、あぁうん、この店が正直な店だということはわかったよ」


店長が醤油ラーメンを運んでくる


「こちら醤油ラーメンになります」

「わーい醤油ラーメンだ、あれお兄さん肩の傷痕、大丈夫?」

「大丈夫だよ坊主、この傷はポリ公と銃撃戦した時に撃たれたんだ。もう弾も抜けているから心配ないよ、そうだ折角だから他の傷痕も見てみるかい」

「いいや、大丈夫です。ほらラーメンが冷めちゃうし、良いものを見せてもらって良かったな」

「えーもっと見たかった」

「黙りなさい」

「すいやせんねお客さん、何しろ正直な店なもんで」


社長がラーメンを運んでくる


「こちら味噌ラーメンになります」

「味噌ラーメンも美味しそうだね、おじさんこの麺すごく美味しいよ」

「そうだろ、この麺は特別な所から買ってくる粉と水を混ぜて捏ねて作るんだ。すごく美味しいから一度食べたら辞められなくなるぞ、ほらおじさん今日はまだ食べていないから震えが止まんないねぇよ」


誠は体が震え出して止まらなくなった。


「いやーそれは美味しそうだ、早く食べよう」


誠と忍は冷や汗が止まらなかった。バイトが塩ラーメンを運んでくる。


「すごい、お兄さん体に絵が描いてある」

「すごいだろ、何かいいことがあるごとに増やしているんだ、これは組同士の抗争に勝った時の、これは親分に初孫が生まれた時の、これはここでバイトを始めた時のやつだ、他にもいっぱいあるけど見るか坊主」


誠が割ってはいる


「いいえ大丈夫です。ほらもう食べ終わるし、これから用があるのでまたの機会に」


急いで店を後にし、家族は車に乗り込む


「いやー怖かった、殺人犯のいる店になんてもう行きたくないよ、ポリにバレるようなミスをする奴に近づきたくないね」

「そうね、本当に怖いわ、一日飲まないだけで異変が起きるなんて慣れてないのね、売人としてはまだまだね」

「ねぇパパ、元ヤクザのお兄さん指がまだあったよね、僕おじいちゃんに教えてあげよっと」

「そうだね、それがいいよ」

「そうね、それがいいわね」



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