シラセはただ知らせるだけ

宿木 柊花

プロローグ

 世の中には虫の知らせや風の便りなど【なんとなく】予感したり、伝わったりすることがある。

 予感や第六感とも呼べる、何か。

 それは本当に【なんとなく】なのか。

 その【なんとなく】はどこから来るのか。


 その【なんとなく】を請け負う者達がいる。

 その者達は無意識下で動き、物事を事前に知らせることで心の準備や運命を円滑に廻す手助けをしている。



 シラセもまたそのうちの一つ。

 シラセは運命を変えるような特別な力は何一つ持たない。


 シラセは真っ白な精神世界で死の運命を知らせる。

 しかし精神世界の出来事は記憶に留めておくことができない。故にその後の死を思い出すことはなく、回避は困難である。

 死は突然であり、何にも左右されない。


 シラセの役割は心の奥底に受け入れる地盤を整え、その運命が訪れた時にスーッと受け入れられるようにすること。


 怠惰な死神直属の通達係。

 死神が仕事をスムーズにこなせるかはシラセに掛かっている。

 混乱のない安らかな死をもって純白の魂は宇宙をめぐる。




 ≪シラセはただ知らせるだけ≫

 例えそれが世界の破滅だとしても。

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