第16話 隠された力

「バルクさんにはたまに協力してもらってギルドの依頼をこなしているんだ」


ジークフリートがバルクに頭を下げた。

そして、こう続けた。


「ハルト、お前、バルクさんに馴れ馴れしくするんじゃねぇ。まさか、バルクさんとパーティ組もうなんて思いあがってねぇか。消えろ。クズ」


パチン!


乾いた音がギルド内に響く。

フィリアがジークフリートの頬を引っ叩いた音だった。

皆の視線が集まる。


「なにしやがる!!」


ジークフリートは激昂し、フィリアを睨みつけた。


「私の大事な護衛を愚弄する者は許さない!」

「うるせぇ!」


フィリアに飛びかかるジークフリートだったが、フィリアはその手をサッとかわす。

そのまま、回し蹴りを食らわせるフィリア。

吹っ飛ぶジークフリート。

周りの冒険者達がざわめき立つ。


「フィリア姫……」


まずハルトが思ったのは、そんなに強ければ、森で襲って来たならず者も倒せたのでは、という疑問。

そして、次に沸き起こったのは彼女への愛だった。

僕のために怒り、そして行動したこと。

ハルトはフィリアに恋し始めていた。


「おい! 大丈夫か?」

倒れ込んだジークフリートに仲間に駆け寄る。

どの顔もハルトは見覚えがある。

ついこの前までパーティとして戦って来た元仲間。


「いてて……」


ジークフリートは起き上がりながら、ハルトを指さし、叫んだ。


「覚えとけよ! そこの女。そしてハルト!」


捨て台詞と共に悪徳パーティは去って行った。

ハルトは呆然とその光景を見つめていた。

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