第11話 酒場での決闘

「すみません。こちらに用事があるのですが……」


フィリアはハルトの背中に隠れるようにしながら、カウンターの男に声をかけた。

男はフィリアの美貌に見惚れる。

フィリアはバルクの特徴を告げる。


「バルク? 知らねえなそんな奴……」

「そうですか……」


落胆するフィリア。

そんな彼女に男はこう言う。


「そんなことより、お姉ちゃん可愛いね。ここで働かない?」

「え?」

「お姉ちゃん、良い身体してるもんなぁ。きっと稼げるぜ」


下卑た笑い声をあげる客の男達。

どう見てもまともな人間ではない。


「いえ、結構です……」


フィリアは怯える。

毛むくじゃらの髭男が強引にフィリアの細い腕を掴む。


「遠慮すること無いって、ちょっと一緒に来るだけでいいんだよ」

「嫌です!」


フィリアが髭男の腕を振り払うと同時に、食卓の上の酒便が零れた。

それが、髭男の服にかかる。


「あー、俺の服どうしてくれんだよ」

「すいません」


フィリアは悪くないのに素直に謝った。

それがいけなかった。


「じゃあ、金払ってもらおうかな」

「お金なんかありません」


フィリアは首を横に振る。


「じゃあ、体で払うしかないな……」


男がフィリアの腕を掴む。


「いや!」


サンダとガイラは震えていて役に立たない。


「ハルト様!」


フィリアが助けを求める。

ハルトは髭男に詰め寄った。


「やめろ!」


ハルトはフィリアを掴んでいる手を離させる。

そして、フィリアを守るように自分の後ろに隠した。


「なんだお前は?」

「その子の恋人だ」

「恋人ぉ~? そんな風には見えないけどねぇ」


髭男はハルトを品定めするように見る。


「じゃ、お前が俺に負けたら、その女は好きにさせてもらうぜ」


髭男は両拳をぽきぽき鳴らした。

筋骨隆々で強そうだ。

野次馬の声が聞こえる。


「へへへ。エルビスのジョブは武闘家。それも高レベルの。そんな奴に戦いを挑むなんざ、命知らずのガキだぜ」


その声に、少し怯えるハルト。


だが、やるしかない!

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