第7話 シグルトと姫
「おお! さすがです! シグルド!」
フィリアは笑顔を見せる。
「いえ、姫のためならこれしき……」
騎士のシグルトは顔を赤く染めている。
「ん、この者は?」
シグルトがハルトを見る。
「ああ……えっと……」
ハルトは説明に困った。
「この方はハルト殿といいます。私が危ないところを助けて頂きました」
「おお!」
シグルトは声を上げた。
「ハルトと申します」
ハルトは深々と頭を下げる。
「これは失礼を。私はシグルトと申すもの。この度はフィリア様をお助けいただき誠に感謝いたします」
「あ、どうも……」
ハルトは照れ臭くなり、頭を掻く。
「ハルト様は魔法が使えるのです。シグルト」
「え? それは……」
「その男の顔が火傷しているのは、ハルト様の炎の魔法のせいです」
フィリアは太った男の焼けただれた顔を指差した。
「ほほう。魔法が使えるとは……」
シグルトのハルトを見る目が変わった。
「いえ、使えると言っても大したことじゃないです」
自由自在に出せる訳じゃない。
「それじゃ僕はこれで……」
ハルトがその場を離れようとした時、
「あ、ちょっと待ってください! 実は折り入って頼みがあるのですが」
フィリアが呼び止めた。
「はい、なんでしょう」
「私と一緒にダルムンクに行って欲しいのです」
ダルムンクとはハルトが活動拠点としている街だ。
「何で僕なんかが……」
「ハルト様がいれば、安心です」
フィリアは目を輝かせた。
頬が赤く染まっている。
「やれやれ……姫様ときたら……」
シグルトが呆れ顔になる。
「ハルト殿。どうか、頼まれては貰えないだろうか」
シグルトの様子からハルトは察した。
王族と仲良くなるなんて幸運なことだ。
実力不足で自信はまだないが、やれるだけやってみよう。
「分かりました。でも、本当に期待しないで下さいね」
ハルトはフィリアに微笑んだ。
「やった! では早速、出発しましょう」
フィリアは嬉しさを隠せない様子だ。
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