第7話『二人が一緒になるまで』
「天城さん、おはようございます〜」
「おはよう……」
土曜の朝9時、私はファミレスで宣言した通り、私は天城さんの家に来ていた。
両手には朝早くから営業している商店街のお店に寄って買ってきた食材。
「……来るのは分かっていたけど、いくら何でも早くないか?」
天城さんは大きくあくびをしつつ、お腹のあたりをぼりぼりとかいていた。
そういえば若干、お酒くさい気もするような。
「そうですか〜? 私はこの時間起きていますよ〜?」
「……前々から思っていたが、健康的な生活を送っているんだな?」
「天城さんが不摂生な生活を送っているんですよ〜?」
「ぐぅの音もでないな」
天城さんはガックリと肩を落としていた。
「まあいいや、入ってくれ……汚いけど」
そう言って天城さんは私を家の中に招き入れた。
天城さんの家にはサークルの時に何回か来たことがあった。
その時は柏葉さんが、何日も寝泊まりをしていたせいで汚れていると話していたが、柏葉さんがいない今でもあまり変わってはいなかった。
どんな状況かと言えば、ゴミ袋がいくつも溜まっており、着替えも辺りに散らかっていた。
「天城さん、キッチンお借りしますね〜」
「わかった、鍋とか適当にあるから好きに使ってくれー」
散乱しているゴミや衣服を踏まないように慎重な足取りでキッチンへと向かっていく。
ちなみに天城さんはそんなことを全く気にせず、衣服を踏みながらキッチンの隣にあるリビングへと向かっていった。
「えっと、お鍋はここで〜、包丁は〜」
キッチンの収納棚を開けながら、必要なものを揃えていく。
一通りのものはあったので、一安心する。
なければ買いに行くことも考えていたので、その手間が省けて一安心。
所々、色が剥げた電子ジャーをあけて内釜をとって、お米を入れて適度に洗っていく。
それが終わるとスイッチを入れていった。
それが終わると、お鍋に水をいれてからガスコンロをつけていき、水を沸騰させていく。
「疲れている時のおみそ汁はこれですね〜」
持ってきたビニール袋の中からパックされたなめこと豆腐を取り出す。
準備が終わったら、お鍋の中に入れていく。
もちろん、先に出汁の素を入れて味噌を溶いてから。
「これだけじゃ、さすがに少ないですよね〜」
いつも大盛りを食べている天城さんのことだから、これだけじゃ足りないのは重々承知している。
そう思って、袋の中からある食材を取り出していった。
「天城さんお待たせしました〜」
お盆に作った料理を乗せてから、天城さんがいるリビングに行く。
「うお……?!」
天城さんは大きなクッションの上に体を倒しながら、テレビを見ていた。
「天城さん体を起こしてください〜」
そう言うと、ゆっくりと体を起こす天城さん、だがお盆の上の料理を見て目を大きく開けて見ていた。
「……え? 何これ?」
「朝ごはんですよ〜」
「いや、そりゃわかるけどさ……これ作ったのか!?」
「はい〜」
天城さんは私の顔とお盆を交互に見ていた。
「え、えっと……食べていいんだよな?」
「むしろ食べてくれないと作った甲斐がないですよ〜?」
「……そ、そうだな」
そう言って天城さんは何故か正座の姿勢になって両手を合わせていた。
「では、いただきます……」
「はい〜ゆっくり食べてくださいね〜」
天城さんは箸をとって、最初に口をしたのはなめこと豆腐の味噌汁。
ズズっと音を立てながら飲んでいく。
「うおぉぉぉ……インスタント以外の味噌汁飲むの何年振りだ!?」
オーバーとおもえるぐらいの天城さんのリアクションを見て、私は微笑んでいた。
「お、アジのひらきもうまそうだな」
味噌汁のお椀を置くと次はご飯の入った茶碗を持ちながらアジのひらきに醤油をかけながら身をほぐしていく。
「メシも電子ジャーで炊いたのを食べるのも久々だな」
そう言うと、ご飯と湯気混じりのアジの身を一緒に食べていった。
「ごちそうさまでしたぁ……」
ご飯を最後の一粒まで食べ切ると、箸を置いてから両手を合わせていた。
「どうでしたか〜?」
「……美味かった。 美味すぎてそれしか言えない」
天城さんは真剣な眼差しで私の顔を見ていた。
その表情をみるだけで、すごく満足してくれたんだなと嬉しく思える。
「よかったです〜」
「それにしても、突然どうしたんだ? こんな料理を作ってくれるなんて」
私は久々に天城さんと会った時、あまりにも顔が疲れていたので心配になっていたと話す。
話を聞けば、インスタントやカップ麺が主流となっているようなので、元気づけるために……と伝える。
「そっかぁ……変に心配かけちまったな」
「はい〜、でも食事だけが原因じゃないみたいですね〜」
「そうか?」
「ってことで、天城さん服脱いでください〜!」
「はい!?」
突拍子も無い声を上げながら天城さんは後ずさる。
「い、いや……さすがにそういうのはさすがに求めてないというか」
天城さんの声が徐々に小さくなっていく。
「いつまでもパジャマでいるのはよくないので、着替えてほしいんです〜」
その言葉に天城さんは「へ?」と今までに聞いたことのない高い声を上げる。
「あ……そ、そっかぁそうだよなあ!」
すぐに立ち上がった天城さんは何度も「そうだよなぁ!」と連呼しながら洗面所に向かっていった。
「変な天城さん〜?」
この数年後、天城さんがどうしたこうなってしまったのか知ることになる。
「パジャマ洗濯機の中に入れてきたぞ……」
着替え終わった天城さんがキッチンに戻ってきたのはいいが、その場に微動だにせず私をずっと見ていた。
「どうしました〜?」
彼の視線に気づき、そちらを向く。
「……い、いや。 エプロン似合ってるなと思って」
天城さんは私のエプロンをじっと見つめていた。
黒猫がチャームポイントになっている、ずっと愛用しているエプロンだ。
「ありがとうございます〜」
私は素直にお礼を言う。
「……いいな、この光景」
天城さんのこの声はこの時の私の耳に届くことはなかった。
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【あとがき】
▶当作はカクヨムコンに参加中です!!
お読みいただき誠にありがとうございます。
次回もお楽しみに!
リアルでこんなことあるんですかね〜(遠い目)
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