第11話
「こちらがPCルームになります〜」
ネットカフェに入り、入会の手続きを行い、店のスタッフにPCルームと書かれた部屋に案内された。
部屋は5畳ほどの小さな部屋となっており、1人用のソファやテレビ、コップや漫画を置くためのサイドテーブルがあった。
また、部屋の奥には高価で有名なハイスペックPCの筐体が置かれていた。
「それでは、ごゆっくりお過ごしください〜!」
スタッフはこちらに向けて、お辞儀をしてゆっくりとドアを閉めていった。
「うおー! マジかよ超ハイスペックPCじゃねーか!」
翔太は真っ先にPCを立ち上げてスペックを確認すると大声をあげていた。
「いちいち叫ぶなよ、ビックリするだろ!」
「このスペックをみたらお前も驚くから見てみろよ!」
そこまで言われると人間、気になってしまうものである。
翔太が座る椅子の背後から画面に表示されている画面を覗き込むと……。
「なんだこのスペック!?」
画面を見て大声を上げてしまっていた。
このスペックでゲーム用だなんてオーバースペックもいいところだ。
「これどうみても、映像演習とか高画質3D映像向けだろ……」
翔太は俺の呟きを聞き流して、既にインストールされている目的のゲームを起動してログインしていく。
「もうログインできたんだけど!」
画面には街の宿屋らしきところで翔太のプレイヤーキャラが立っていた。
「敵が沸いてもも動作が重くならねえ!」
「最高画質のこの場所めちゃくちゃ綺麗じゃん! スクショ撮影が捗るぜ!」
「ネカフェ特典で経験値倍になってる! レベル上げのチャンスじゃあああ!」
プレイ開始してから15分。
翔太は何かにつけて1人叫び続けていた。
「うるせぇ……」
その感俺は漫画コーナーから持ってきた漫画を見ていたのはいいが、やかましい声が都度してくるので集中することができずにいた。
「ドリンク取ってくる」
翔太に伝えるが、ゲームに夢中になっており、俺の声が届くことはなかった。
部屋を出て、ドリンクコーナーで飲み物を注いでいく。
辺りを見ると、開店したばかりなのか多くの客で賑わっていた。
店は2階建てになっており、1階には漫画コーナーやPCコーナー、コワーキングスペースとなっていた。
ちなみに俺と翔太がいる部屋はVIPルームとなっている。普通であれば料金が倍取られるところだが、開店直後でおためし期間中となっているため、通常料金で使用することができた。
「ちょっと店内みていくか……」
どうせ戻っても落ち着かないしな……。
2階にあがると、ドリンクコーナー、ビリヤード台やダーツ機、カラオケルームがある。
カラオケは大人数が入れるパーティールームから1人専用のヒトカラ用などカラオケ店顔負けの作りになっている。
更に奥にはスロット機も数台置かれていた。おそらくゲームセンターにあるようなメダルで遊ぶタイプだろう。
「何でもあるな……」
2階をぶらついていくと、ダーツ機の液晶に目がいく。
「そういえば親父からマイダーツもらってから全くやってないな」
ここにあるならやってみてもいいかもしれないな。
カラオケコーナーに足を運ぶと、パーティールームからテレビでたまに耳にする演歌が流れていた。
声からして年配の方だろうか。曲が終わると、数人の人たちがパチパチと手を叩く音が聞こえはじめた。
パーティールームの先はヒトカラ専用の部屋となっており、何人か利用しているのか人気アイドルの曲やネットで話題になった曲など様々な曲が入り混じっていた。どうやら利用しているのは俺と同じ年代の人たちなんだろう。
「そろそろ戻るか……」
他に見るところがなくなったので、仕方なく部屋に戻ろうとする。
「あれ……?」
ヒトカラ専用のある1室で聞き覚えのある声と曲が聞こえて立ち止まっていた。
「この声どこかで……」
どこかで聞いたことあるんだよな……しかもここ最近。
部屋の前で漏れる声を聞きながら考えていると、頭の中で電球が光出した。
「398だ……!」
ガッチリとドアが閉まっているため、声は微かにしか聞こえないが長年聞いてきたから間違いはないはず!
それにしても何でここに398が……!?
もしかしてここにいれば398本人をみることができるんじゃないか……!?
そんな邪な考えが思いついてしまっていた。
「どうせ部屋に戻ってもあれだし……」
俺はドリンクコーナーに行き、飲み物を再度注ぎ、ヒトカラのエリアを見ることにした。
この場に張り込んでから30分近く経っただろうか。
途中で何回かスタッフに声をかけられたが、適当にごまかして何とかやり過ごすごしていた。
大好きな398がいるかもしれないと思って始めたことだが、冷静になってみると自分が不審なことをしていることに気づいてしまう。
好きな人にあえるかもしれないと思うと気持ちが昂っていたが、今は静まり返っていた。
「……戻るか」
ため息をつきながら肩を落とし、その場から去ろうとする。
だが、その時見ていた部屋のドアが開き始めた!
一瞬にして心臓がドクドクと音を立て始める。
そして、部屋からでてきた人物を一心にみつめるが……
「え……!?」
部屋からでてきたのは思いも知らない人物だった
「うわっ……そ、蒼にぃ!?」
ヒトカラ専用の部屋から出てきたのはデニムジャケットに黒のジーパン姿の咲耶だった。
え、ちょっとまって……どういうこと!?
==================================
【あとがき】
▶当作はカクヨムコンに参加中です!!
お読みいただき誠にありがとうございます。
次回もどうぞ、お楽しみに!
さあ、どういうことなんでしょうか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます