西部のシャイアン

犬時保志

第1話 追放され東海岸の生活

 私はシャイアン、ジャイアン族の偉大な大酋長ジアンの三男だ。

 私が生まれた時、ホビ族の占い師に「偉大な男になる」との予言をされ父は私に期待を込めて『ジャイアン』と命名した。


 3歳の時初めて野兔を素手で狩って、父に凄く誉められた。

「ジャイアン族のジャイアン!我が子は最高の戦士になるぞ!」

 と、皆に自慢してた。


 実は電撃魔法の自爆、野兔と共に気絶して気付いた時には野兔が死んでた。

 3歳の私には、当時意味が分からなかった。

 でも父の喜ぶのが嬉しくて、がまんして時々一人で電撃自爆魔法の野兔狩りをしていた。

 父の笑顔と裏腹に8歳の長男と6歳の次男、兄達の私を射殺す様な視線が忘れられない。


 それが何故シャイアンなのか、ジャイアン族に限らず10歳になると誰でも自然に初歩魔法の日常魔法が使え出す。

 だが15歳になっても、結局私には魔法の兆しさえ現れなかった。

 狂暴な兄達にこれ以上うとまれ無いため、自爆魔法をひた隠しにした。

 兄達に食事を奪われ、いつも腹を空かせていた私は発育が悪く体格も貧弱で、失望した父は無能者達の使役階級に落とすと言い、シャイアンに改名された。

「お前が、まさか無能とは残念だ!東海岸に追放する!!」

 言い捨てられ父には以後会って居ない、もちろん兄達にも。


 

 ホビ族なのに未来視占いの出来ないホップ、10歳から私の唯一の友人も同じ、スカンク屁の幻臭を自分を含めた辺り一面に与える変わり種魔法、当然私と同じくホップも封印していた。

 所謂いわゆる類友ってやつだ。


 魔法が使える者は戦士、魔法が使えない者は無能者と呼ばれ、無能者は全員が労働者の使役階級にされる。


 ついに追放の日、追放が決まった時から私達は別部族扱いになった。

 別部族の私に見送りは掟で禁じられ、誰も居ない淋しい門出だった。


 馬は戦士が乗るものと言われ没収され、東海岸まで歩いて3日掛かった。

 ホップが一緒なのが救いだが、あまり会話は無かった、ホップも複雑でやるせない気分なのだろう。

 


 初めてぐ匂い生臭い様な異臭が辺りに漂っている。

 丸木船がならぶ海岸、豊かな漁港と聞く東海岸が私の住居になった。


「シャイアン殿お待ちして居りました!私は前任責任者ジャロと申します」


 モヒカン頭の、巨漢が迎えてくれた。

 追放扱いでも一応私は大酋長の息子、漁港責任者としての就任らしい。

 私に着いてきてくれたホップ、見知らぬ場所で初めての仕事、ホップの存在は有り難かった。


 前任責任者ジャロは、若造に地位を取られ面白く無いだろうに、親切に仕事を指導してくれた。


 仕事は塩の製産が主なもので、副業的に漁業とイカや魚の干物作りだった。


 生臭い様な匂いに慣れたなら、のんびりした東海岸の暮らしも、まんざらじゃ無い。

 そう無理矢理思い、東海岸の暮らしが始まった。


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