〖承-13〗木星音階 (240721 投稿)
【貨物運搬用エレベーター】
・ジェイク、ケンノビ、ドリー、レディ、サンディが、30m四方の貨物用エレベーターに乗っている。
ドリー:「このエレベーター、大きいね」
ジェイク:「太陽光発電所の建築資材を重工業プラントから運んだからな」
ドリー:「プラントをこっちに作れば良かったのに」
ジェイク:「太陽光発電は建築してしまえばメンテするだけだ。プラントを近くに置く理由もなくてな。かと言って、プラントから船を使って移送するのも手間だ。だから、エウレカのど真ん中を縦に貫くエレベーターを作った」
ドリー:「穴掘った方が早いって、ブラスターらしいよねぇ」
・エレベーターの縦位置を示すインジケーターが、どんどん上に移動し、天辺に近づき、電子音が響く。
・エレベーターの扉が開く。奥行100m×幅200m×高さ10mのガランとした大空間が広がる。壁の内側はトラス状の骨組みが巡らされて、見た目倉庫や駐機場といった感じ。
・ケンノビとドリーとサンディが、エレベーターから出てくる。5人は、あちこちを見回すような動作をする。
・エレベーターから見て、右にフォークが3台置いてある。左に、トラックでも通りそうな入り口がある。
ケンノビ:「広っ・・・」
ジェイク:「当時は、搬入された建築資材でごった返してた。フォークが置いてある壁の向こうが、工事用車両の駐車場とエアロック、反対側の大きな入り口の奥が産廃置き場だ」
サンディ:「あそこが?」
ジェイク:「レイラとマヌエルが初めて会った場所だ。俺らのネグラだった」
・サンディが、急ぎ足で産廃置き場跡地に走って行く。振り向いて、ジェイクを見る。
サンディ:「レイラと一緒に行動していたんですか?」
ジェイク:「結構年離れていたからな。味噌っかす扱いだ。言うほど接点はない」
サンティ:「それにしても凄いな・・・。いや、彼女が伝悦の存在じゃなくて、この場所で息をして、心臓を動かして生きてたんだって、実感出来て嬉しい」
・サンティが、全速でダッシュして、突き当たり奥の壁にペタリと張り付く。壁に、ヘルメットを押しつける。頭上の壁面の骨組みに大きな凹み跡がある。サンディが、凹みをを指さして、
サンディ:「この凹みも、レイラのギフトで?」
・ジェイク、呆れ顔をする。
ジェイク:「いや、それは新米が重機のアームをぶつけた跡だ」
サンディ:「・・・ですよね~」
ドリー:「ジイジは、ここに住んでいたの?」
ジェイク:「ギフト持ちは、悪魔の子と呼ばれてな。ここでは、親に捨てられた子供達が群れて生きていた。そのリーダーがレイラだ」
・ジェイクが、手の平を上に向けて、じっと手の平を見つめる。手の平からバチバチと電気が爆ぜる。
ジェイク:「親が子を捨てるなんて、あり得ないと思うだろう。けれど捨てざるを得ないほど、気味が悪かったんだ。怖かったんだ。自分の子供でさえも信じてはくれなかった」
サンディ:「2130年前後からですか? 《木星音階》が聞こえる子供達が生まれはじめたのは?」
《木星音階》
木星から届く4つの音階。人には聞こえない重力波の一種。レイラの頭の中に響くように聞こえた。最初は小さなトーン音が途切れるように聞こえて、段々シンプルなメロディに聞こえるようになった。このシンプルなメロディの意味は、「私の声が聞こえる者はいるか」だった。木星から聞こえる音はテンポが早く複雑化していき、それを聞いて理解できるようになるまで3年、レイラ側が意思を伝えるようになるまで2年かかったという。木星音階で得た知識を基に、レイラは数々のオーバーテクノロジーを人類にもたらした。
現在、4つの音階全てを聞くことが出来る人間は居ない。4つの音の連なりから、どうやって言語を割り出したのかも解っていない。
ジェイク:「最初は単なる耳鳴りと思っていた。その音が大きくなるにつれて、その音を周りの人が聞こえてないことに気がついた。自分だけ、トーン音のような音が頭の中に響くんだ」
・ケンノビとドリーが、あぁという表情で頷く。
・サンディが、実感できないまま、呟く。
サンディ:「木星音階ですか・・・」
ドリー:「あの音は辛いよねぇ。頭が痛くなる」
・ジェイクが、ドリーの頭に手を伸ばし、頭をグシグシと撫でる。ドリーが、苦笑い。
ジェイク:「今は良い薬が出来たからな。当時は、耐えきれずに、精神に異常をきたす子供が多かった。反面、その音と上手く折り合いを付けられた子供達も居た。そして、ギフトが現れた」
・ジェイクが遠い目で、哀しそうな表情。
ジェイク:「最初は何が何だか解らなかった。突然、ギフトが暴走して、周りの人間を傷つけた。感情が高ぶると、勝手にギフトが暴走するんだ」
・ジェイクが、手の平を上にして電撃を発する。
ジェイク:「特に酷かったのが、四六時中聞こえる音で精神に異常をきたした子供だ。気がついたら、周りの親しい人間を皆殺しにしていたなんてことも結構あった」
ドリー:「・・・」
ジェイク:「親にさえ気味悪がられて、親から捨てられた子供達だ。子供の家も受け皿になってはくれなかった。社会制度が現実に追いついていなかった」
ドリー:「・・・子供の家も?」
ジェイク;「子供の家は、ブラスターの親を亡くした子供のために作られた施設だ。ギフトを持つ子供達をどう育てていけば良いのかなんて、誰も解らなかった」
ジェイク:「そんな子供達をまとめて面倒見ていたのがレイラだ。自分達が生きるために、ギフトを使って盗みでも何でもやった」
ジェイク:「そして、ギフト持ちの子供達が社会問題になり、警備隊が動く直前に、マヌエルが動いた。レイラに会いに来たんだ」
ジェイク:「昔話はここまでだ。その入り口の向こうが、ローバーの格納庫だ。古い車だ。車内の気密は当てにならない。ここから外に出る。フードを閉めろ」
240721 投稿
[記号凡例]
①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。
②【】 主に、場所を記載する。
③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。
④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。
本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。
⑤ ・ 主に、登場人物の動きや表情を記載する。
⑥ ・ アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。
⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」
⑧ 説明:状況を説明する。
⑨[] :神沢メモ他を記載する。
⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。
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