第19話 ある休日の幼馴染②

「で? どうせ今回も作戦考えてるんだろ?」

「うん、えっとね、今回は『男の子が話しかけちゃおう大作戦』をしたいなって」

「なんだよそれ」

「話しかけてくれるまで、唯葉ちゃんに耐えてもらおうって作戦です」


 どうだ、と言わんばかりに綾香は胸を張る。

 恭一はそんな彼女の頬をつねった。


「またテレビの影響だよな、それ」

「……う……うん、向こうから話しかけてくれないなんて男じゃない、ってテレビで言ってたから」


 綾香はテレビを信じすぎる。夏祭りのときも、「これさえやれば、確実に会話ができる」という番組を見て作戦を立てていた。


「話しかけるって、できるわけないと思うけど」

「そこは、キョウくんがちょちょいっと」

「できるわけないし、面倒なんだが……」

「面倒じゃないよ、男の子の方から話しかけてくれたら絶対に大丈夫なのっ」

「いや、あいつが話すことができていたら、そもそもこの作戦なんて――それに、相談に乗るのは面倒――」

「キョウくん、また面倒って言ったぁ。もういっかい言うんだったら、わたしにも考えがあるよ?」

「考えってなんだよ」


 ふふんと、何か自信があるように綾香は、隣の部屋を指さして胸を張って言う。


「隣の部屋に置いてあるラノベ、全部捨てちゃうから」


「なんでそれ知って!」


 恭一は慌てていた。

 彼女に嫌われないために読んだラノベは捨てているが、気に入ったものは隣の部屋の押し入れの奥にこっそりとしまっていた。


「ラノベ読んでないふりしてることも知ってるんだよ? わたしに何度かおすすめのラノベ読ませてくれるのに、バレてないと思っているキョウくんが可愛くて、言わなかったけどね」

「……まじかよ」

「あの二人のこと、わたしは応援したいの。だからお願いね、キョウくん」


 この幼馴染には勝てない。

 恭一は心の中でそう思い始めていた。

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