第4話 文芸部に入部
「ちょっとまってどういう流れなの?」
いきなり入部することにされていて僕は焦った。
「ともやくん部活してないって聞いたからちょうどいいと思って!」
「いや、僕は部活に入る気がなくて…」
「でも今年からどこかに入らないとだめだけど入りたいところあるの?」
「え、いつから強制になったの?」
「今年からだよ! 全校集会でも何回も言ってたのに聞いてなかったの?」
僕はそんな記憶一切なかった。全校集会は校長の長い話しが多くてうっかり聞き忘れたのだろうか。
「だからちょうどいいと思って! 特に入りたいところないなら名前だけでも! 四人からじゃないと部活動認められないんだよ」
彼女は悲しそうな表情をわざとらしく作り、お願いしてきた。
「わかったよ、入るよ」
僕は彼女のお願いに承諾した。昔から人から頼まれると断るのが苦手だ。まぁ今から入るところ探すのは正直気が進まなかった。
「本当に! ありがとう! ともやくんは今日から私の後輩だね!」
さっきの悲しそうな表情は一切なくなっていつも通りの元気のいい彼女にもどっていた。
「入るのやめようかな」
「冗談だよ! これからよろしくね! 二年生は私たちだけだから! こちらにいる二人は三年生です!」
そう言うと彼女は三年生の説明をし始めた。話しによると身長の高い短髪の眼鏡をかけた男の人が部長の近藤さんで、少し猫背気味の二つ結びの女の人が副部長の木根さんらしい。二人ともすごく優しそうだったので僕は安堵した。
「ちなみにどんな活動するの?」
「小説を書いたりするよ! それを読み合ったりしてるかな! 後文化祭の時は部誌を出したりしてる!」
「君が小説書くのは意外だね。 どんな内容書くの?」
「恋愛系とかかな! この前書いたの読んでみる?」
「時間あるから読もうかな」
彼女の見た目とは裏腹に小説の内容はしっかりしていてびっくりした。続きが気になりあっという間に読み終わってしまった。
「すごい面白かった。人は見かけによらないんだね」
「どういうこと? 少し悪口はいってないかな?」
彼女は笑いながら僕に不満を言ってきた。それでも彼女は満足そうだった。
「二人とも仲良いんだね」
副部長の木根さんが僕らが話してる様子を見てそう言った。
「そんなことないですよ。そもそも彼女と初めて話したの昨日ですし」
「そうなの? たしかにありさちゃんすぐ人と仲良くなれるもんね」
「そうなんです! あとともやくんは危険なので」
「危険?」
「ちょっと、変なこと話さなくていいから」
「あ、ごめんごめん。何考えているか分からなくて危険なんです!」
彼女は笑って誤魔化した。木根さんも近藤さんも彼女につられて笑っていた。彼女は周りを笑顔にする力があるなとつくづく思う。毎日が楽しそうで少し羨ましかった。
そんなことを考えていると下校のチャイムが鳴った。
「よし! 今日は帰ろうか」
部長の近藤さんがそう言うと僕らは教室を出て玄関に向かった。どうやら近藤さんと木根さんは自転車通学で彼女は電車通学らしい。僕も電車なので彼女と帰ることとなった。
初めて女の子と二人で歩く下校道は少し緊張した。しかし、僕とは真逆に彼女はずっと話している。
「ところでともやくん私の名前知ってる?」
「いや、知らない」
「やっぱり!」
「そもそも教えてもらってないから」
「あれ話してなかったっけ? というかそれなら言ってよ! 私は伊藤ありさだよ! ありさってよんでね!」
「わかったよ。伊藤さん」
「やっぱ少し距離あるなー」
彼女は大袈裟に頭を抱えた。その後もお互いの話しをしながら駅まで向かった。驚いたことに彼女とは中学校は違ったが小学校は同じだったらしい。小学校は五クラスあったこともあって知らない人の方が多かったため、もちろん僕は彼女をしらなかった。
そんな話をしているうちに駅に着いた。
「ともやくんまた明日ね! 私はこっちの電車だから!」
「またね」
そう言うと僕は彼女と別れて電車に乗った。この時間の電車に乗るのは久しぶりだった。もうこんな時間だったのか。一日あっという間だったな。
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