僕の全てを変えてくれたきみ
佐野 健
第1話 君との出逢い
僕は高校2年生になった。友達は多くはないが、いないわけではない。特に嫌なことはないはずなのに生きていることがつらくなることがある。今日もいつもと変わらず、朝から夕方まで授業を受けて帰る予定だった。しかし、放課後に無意識に屋上に向かっていた。自分でも何をしているのか分からなかった。ただ気がついたら屋上の手すりから身を乗り出そうとしていた。
「あぶない!」
急に声をかけられた僕はびっくりして背中から後ろに倒れこんだ。背中の痛みでようやく自分のしていることを理解した。僕は自殺をしようとしていた。そう考えると背筋がぞっとした。自殺をする気なんて全くなかったのに気づいたら体が自殺しようとしていた。
「大丈夫?」
心配そうにワイシャツの上に黒のカーディガン姿の女の子がやってきた。彼女の髪型は肩より少し長く、綺麗なストレートヘアーだった。顔の方はパーツの一つ一つが整っており、大半の人が可愛いと言うような顔立ちだった。
「心配かけてすみません。大丈夫なので」
彼女に変な誤解をされる前にすぐにその場から立ち去りたいと思った。僕が屋上の扉に向かっていると彼女は僕の手首を掴んで僕の動きを止めた。
「何かあったの? クラスは違うし、初対面だけど相談に乗るよ」
「なにもないです。自分でも無意識だったので特に悩みとかもありません。気にかけてくれてありがとうございます。」
そう言うと僕は彼女の返答を待つ前に屋上を後にし、下駄箱に向かった。靴を履き替えながら僕はあの時彼女がいなかったら今頃死んでたのだろうかと考えた。そう考えると怖さはあった。しかし、特に楽しみにのない僕にとって、もし死んだとしても後悔はないだろうなあと思った。
そんなことを考えながら靴を履き替え終わったので帰ろうと校門に向かおうとしたら誰かにつけられてる気がした。後ろを振り返ると先程屋上で会った彼女がいた。たまたま帰るタイミング被っただけかと思い、気まずいので靴紐を結ぶふりをして彼女を先に行かせようとした。しかし、彼女は立ち止まっていた。僕は諦めて早歩きで帰ろうとしたら彼女も早歩きで歩いてきた。
「なにか用ですか?」
明らかに僕に付いてきたので彼女に問いかけた。
「ともやくんがこの後自殺したりしないか心配になっちゃって」
「本当にもう大丈夫です。てか僕のこと知ってるんですか?」
「知ってるよ! 同じ学年だし、私たちの学校三クラスしかないんだからだいたい分かるよ。あと敬語とかも使わなくていいよ、同い年なんだし」
「わかった」
僕がそう言うと彼女の頬が緩み、笑みが溢れた。
「そういうわけで私がともやくんを家まで見届けないと安心できないの!」
「だからあれは本当に無意識で、自殺なんてしたいなんて思ってないから大丈夫」
「無意識ならもっと危険だよ!」
僕はその通りだと思い何も言い返せなかった。
「じゃあ家に帰ったら連絡して! それなら今日は私は安心して帰れる」
黙った僕に対して彼女はそう提案してきた。
「わかった。それで安心して帰ってくれるなら」
乗り気ではなかったがこのまま着いて来られるのは彼女にも負担になると思い僕は連絡先を交換し、解放されることができた。
家に帰るといつも通りではない日常を過ごしたせいからか、疲れが溜まりすぐにベッドに横たわった。自分でもなんであんなことしたんだろうと考えていると、気づいたら意識が夢の中へと言っていた。
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