俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
二部第19話 変態、狂人と念者バチバチ、オワタ
二部第19話 変態、狂人と念者バチバチ、オワタ
「さあさあ、どんどんいこうぜ!」
クレイジープリンセスエマが止まらない。
さっきから出てくる岩巨人共をブレスで吹き飛ばしまくっている。
「シン・ゴジ○襲撃!」
いや、マジで凶悪過ぎる。
どんどん岩巨人たちが吹き飛んでいる。
あれだけガチンガチン鳴らしてたガントレットの意味よ。
近くの奴は蹴り飛ばしてるし。
「いよっし! 片付いたな。行こうぜい! 全速前進! よーじろー!」
「よーそろー、な。へいへい」
一人で岩巨人たちを蹂躙したエマが前を指さし、サイドステップで右に走っていく。
「すごいデスね」
びびったああああ! チクワさんが話しかけてきた。この人喋るんだ……。
「な、何がっすか?」
「エマの行動、アクションは、クレイジーです。しかし、アナタは対応デキている、すごいデス」
ああ、エマに合わせるのは確かに大変だ。まあ、俺の場合は固有スキルで得してる面もあるだろう。アイツの意味不明な動きにも俺の身体なら合わせやすい。
「まあ、固有スキルのお陰ですよ」
「イエ、アナタはよく見て、よく感じてイマス。エマがあれだけ自由に動けるのはアナタのおかげでしょう。とても楽しそうデス」
「そっすか、なら、よかった……っと! あの馬鹿……また魔物見つけたみたいです! 行きましょう! チクワさん!」
「ふふ、イエス、クレイジークラウン!」
思った以上にノリのいい人だな、チクワさん! もしかして、さっきの超接近睨みもギャグだったのか!? 俺はそんな事を考えながら、完全無防備で曝け出しているエマの後頭部への攻撃を受け止め、エマの身体にスライム足を絡みつかせ、グルンと180度エマの向きを回転させる。俺の正面には頭のぶっ飛んだ岩巨人がいたのでソイツにスライム足をくっつけ固定。エマは、
「アンギャアアアア!」
口からブレスを飛ばして、さっき俺が攻撃を弾いた岩巨人の頭を吹き飛ばす。
チクワさんは、岩蝙蝠を引きつけている。マジ優秀サポートだ。
「よっし! ナツキ! チクワのすけべ断ちするぞ!」
「すけだち、な!」
エマがカバディのような動きでぐるぐるとチクワさんと岩蝙蝠の周りをぐるぐる回りながら詰めていく。俺は、その円を割るように何度も壁を蹴り岩蝙蝠を踏みつぶしていった。
「いやあー、余裕余裕! もう少しで目的地ってところかなー」
近くの魔物を全て排除した俺達はエマが、踊りたいと言うので、休憩時間となった。
エマはどこの国の踊りか分からない謎の踊りを踊っていた。
「カマボコのチームは追いついてくるでしょうか?」
チクワさんがぼそりと呟く。
「いや、無理でしょうね。だって、このルートは……」
「やっと! 見つけた!」
俺が言いかけた所で、秋菜がやってくる。一人のようだ。
「おおー! ナツキの妹ちゃん! よく分かったね、ここ」
「心の声、駄々洩れ、なんですよ……!」
秋菜が大分体力を消耗しているようだ。肩で息をしているし、ところどころ汚れている。
どうやら俺達の心の声を読み取ってここまで来たらしい。そんなことも出来るのかよ。
念者のスキルを複数並行使用したせいか、魔力が大分減っている。
それでも、エマを睨みつけている秋菜は今まで見た事ないほど真剣だ。
「どういう、つもりですか?」
「んん? なにがあ?」
「最初は、わたし達のミスでした。探索を怠り勝ちを焦った……貴方はしっかり調べた上で最短のルートを選び、突き進んでいた。行動はおかしくても、ダンジョン攻略としては正しい。だけど、途中からダンジョン核を目指さずに……ふざけないでください! わたしは真剣に貴方に……!」
秋菜が声を荒げながらエマに迫る。その表情は苦しそうで……。
「……妹ちゃんさあ、自分がアタシの行動を読めないからって当たるのはよくないよ」
「な……!」
エマはにやにや笑いながら、秋菜の頭をぽんぽんと叩く。秋菜は図星だったらしい、顔を赤くはするが反論や抵抗はしない。
「アタシは一流冒険者だ。最前線にも行った事がある。まあ、こういう商売してるから常に最前線にってわけにはいかないけど。アンタよりも実績は遥かにある。そんな一流との差を感じてるんならちゃんと受け止めて、考えな。……何故、アタシがこっちに来たのか」
そう。エマは途中でダンジョン核のルートから大きく外れて移動し始めた。
俺も保険として探索していたが、確実に違う方向へ向かっているのは分かっていた。
そして、目的地がどこなのかも。
「それは……! く……!」
秋菜が強く自分の拳を握る。小さく綺麗な手が痛々しくぎゅっと握りしめられる。
「いいかい、常に考えるんだ。プロになりたいのなら。ずっとずっと考えなきゃいけない。何故一流はそう動いたのか、そうなる為にはどうすればいいのか、どうして自分には出来ないのか、そうなるにはどうすればいいか、ずっとずっと考えるんだ。それがプロの冒険者だ」
いつになく真剣な目でエマが語り掛ける。ガチだ。
「そして、いつだって、考え、覚えておかなきゃいけない事。何故、冒険者として強くなりたいのか。それがなくなったら、ほんとの狂人になっちゃうよ。妹ちゃん、あんたはなんで?」
「わたしはっ! 兄さんの隣にっ! わたしは、兄さんの妹だから!」
「……本当に、そうなりたいのなら、アタシサイズのひょうたんを割れるようにならないとな」
ウチの妹、胡蝶でも栗花落でも甘露寺でもねーんだわ。
「わかってる!」
え? わかってんの?
まあ、エマの言わんとすることは分かる。
この前の同時多発大発生で分かった。
まだ、混沌から生まれる魔物は序の口だ。魔王は全く本気を出していない状態で俺の全力で撃退するのがやっとだった。
もし、本気の魔王がこちらに来れば、マジで世界は終わる。そして、それを防ぐためには命を賭けた壮絶な、それこそ、鬼を滅するダークファンタジーばりの壮絶なものになるだろう。
俺は多分行く事になる。もし、秋菜が行きたいというのなら、強くならなければいけない。それこそ、日本のトップクラスに。秋菜は特例冒険者になるくらいの実力はある。だけど、秋菜は元々小遣い稼ぎ程度でダンジョンに挑んでいた。まあ、誤解を恐れず言うなら俺を盗撮する道具や機材の為に。けれど、そこまでだ。別に一流冒険者になりたいわけではないし、なんなら戦うことだってそこまで好きじゃないはず。
だけど、一流冒険者が、勇者が出る場っていうのは、正真正銘死闘の場だ。
エマもそれが言いたいのだろう。
だが、コイツは妙な所で誤魔化したがる。いや、人に優しい。秋菜も死んでほしくないだけだ。
一年半。俺が御剣学園に通う間しかないのだ。猶予が。
そこで日本トップクラスに入るには生半可な努力や覚悟では不可能だ。
「わたしが今、どれだけ弱いかも。力も覚悟も……! 分かってる! それでも! わたしはっ! 兄さんを!」
だけど、秋菜はそうなろうとしている。そうなりたいと思っている。
何がアイツを動かしているのかは分からない。なんでそこまでして俺を守ろうとするのか。だけど、その目は本気だ。
それを見てエマはにやりと笑い、
「どーん!」
ヒップアタックを秋菜にぶちかました。
「えぐっ……! な、なにを……」
次の瞬間だった。
俺はエマの前に立ちはだかり、泥の刃を受け止める。
「あっちにいるのか……」
「ナイスカバー☆ アタシの美尻が二つに割れる所だったわ」
「いや、もとより二つなんだわ」
「見るか?」
「見ねーよ。で、何がいる?」
「見て確かめ、なっ!」
エマのブレスが泥の刃が飛んできたダンジョンの壁の隙間をぶち壊す。
パラパラと破片が落ち、土煙が立つ。
「おい、ナツキの妹! さっきの言葉が本気なら、ひょうたんの前に、アレをぶち破りな!」
「え?」
コイツの行動はマジで意味不明だ。
だけど、マジで勘が良すぎるんだよなあ!
「おいおい……」
目に入ったのは、ダンジョンの壁が崩れ現れた気持ち悪い部屋。ダンジョン核と違う場所で魔力が溜まりそこに魔物が集まり、異常な繁殖を始めていた。
そして、そこには、小鬼よりも一回り大きな岩の鎧と角、そして、泥の肌を持つ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます