二部第7話 変態、プールで流されハプニング、オワタ

流れるプール。


疑問に思った人もいるんじゃなかろうか。


水や人は流れているがプールは流れていないんじゃなかろうかと。


というわけで、人が流されるプールで更科夏輝絶賛流され中。


どんぶらこどんぶらこと桃尻なつきが流され中。

桃どころかスイカやメロンの姉さんや愛さんが流石の身体能力でぴったりと並泳し、秋菜は泳げないが、念動で浮きボートを高速移動、そして、ジュリちゃんはものすっごい犬かきで移動中。そして、クールビューティー、氷室レイラ、こと、年長者のレイはというと、


「な、ナツ! 放すなよ! ぜ、ぜったい放すなよ!」


俺にしがみついていた。


レイは泳げないらしい。

この子どんどん出来ないちゃん要素増やしているんだが、マジダメっこポジション狙ってんのか? とはいえ、マジで泳げないらしく、でも、ぼっちはいやらしく、浮き輪も恥ずかしいから嫌らしく、俺に掴まって流され中。

俺もみんなに流されてIアイ乱心。


大体あまりにもがっしりレイがしがみついているから、レイのないむ……ぴ……アレでも柔らかさを感じてしまう。しかも、本人も溺れないことに必死だから全然その気もない。

その気もない方が俺の心を惑わすなんて誘惑向いてねえよ、あんた。


そして、メンズは楽しそうに自由形競泳している。

おい! お前らだけハイスピードなフリーでスターティンしてんじゃねえぞ! 何の為に呼んだと思ってる。アホはアホだから置いといて、眼鏡と鈩君は、友達とプールではしゃげて本来の目的忘れてんじゃないよ! 友達がぴんちだぞ! おい!

3人しかいねえじゃねえか! 俺もいれろ! あと一人入れてスターなファイブになろうぜ!


という俺の心の叫びも空しく、俺は女性陣に流されて乱されてIアイ乱調。

流れる美女集団の中心でアイ乱調更科夏輝に、周りの見ず知らずの男性たちの小さな舌打ちの雨あられ。ぐすん、まぢへこむんですけど……。


というわけで、まるで助平の塊のような肌色の塊が一周し、一緒に泳いだという事実を作り、レイ一旦ギブアップ。付き添いにジュリちゃん。お姉ちゃん思いのいい子だ。マジ天使。

だけど、俺が空気を入れた浮き輪を抱えて恍惚とした表情を浮かべているのはなんでだろう。浮き輪だけに浮かべてるだけだよねそうだよね。


そして、プールと言えばこれ。ウォータースライダー。

定番ラブコメ漫画よろしくの二人一組でないとスライダー出来ない謎仕様ではもちろんない。安全性を含め、一人ずつ滑ります。


「お兄ちゃん、ちゃんと見ててねっ」


と、一番手は、今日は筋肉フェチでゴウな妹系の秋菜さん。神には魚の形をしたヘアピンつけてます。今日はこの妹だからといっぱい筋肉の部位ごとの写真を撮られた。この妹だからしかないよねうんうん。きゃあああと楽しそうな声を上げ大きな水しぶきがあがり、続いて俺、更科夏輝の運命のターン! 隙あらば一緒にウォータースライドしようとしてくる女どもの隙を突いてのなつきのダイブスタート!

ようやく楽しくなってきたぜと思ってきた、そんな時期もありました。


もにゅ。


何故かいきなり柔らかい何かが前方に。


「ひやあああああん」


という妹にとっても似ている声を出す柔らかいものを抱えながら、夏輝着水!

そして、俺の腕の中を確認すると顔を真っ赤にし鼻血を流す我が妹。

どうやら、どうしても俺と一緒にウォータースライダーをしたかったようで、念話と念動を使って、終わったように見せかけ、自身は浮いて俺を待ち伏せしていたようだ。

だけど、兄との触れ合いになれていない秋菜さん。

兄に後ろから抱きしめられて大乱痴気、からの、鼻血とは三条先輩談。

先輩も姉さんに抱きつくためにスライダーの中で必死に踏ん張ろうとしていたから分かったらしい。マジで迷惑だからやめてください。


ということで、反省の意味も込めて、鼻血妹を三条先輩に任せる。


「秋菜をお願いしますよ、三条先輩」

「りょーかいりょーかい。誠意をお見せする為に誠心誠意秋菜ちゃんを見ておきます」

「全く、先輩もそうですけど、秋菜もやりすぎなんですよ」


恥ずかしいならやらなきゃいい。いや、その前に俺に対してそうしたい意味が分からない。


「そっかなー? あたしは春菜のことが大好きだし、それを恥ずかしくても周りから見ておかしくても表現したい、伝えたい。だって、伝わらないまま終わるのが一番後悔するから。だから、秋菜ちゃんも一生懸命考えて考えて、恥ずかしいのも耐えて、勇気を出して行動したんだと思うよ。君に伝えるために」


三条先輩は、悪戯っぽく笑いながら俺の方を見つめる。


「春菜もそう。前までの春菜だったら、絶対照れてた。水着なんて恥ずかしいしって。でも、勇気を出して、頑張って誘ったのよ。小学生男子みたいな愛情表現しか出来なかった春菜がようやく小学生女子くらいの勇気が持てたのよ」


いや、ほとんど変わんねえじゃねえかなんて野暮なツッコミは入れるまい。

姉さんは、ずっと自分だけが変化してないことを気に病むくらい、男女の仲とかそういうのが分からなかった人なんだから。


だけど、


「俺はそんな大層なもんじゃないですよ」

「そうかな? あたしもそうは思わないよ、皆と一緒で。もっと自信もって。そんでさ、みんな幸せにしてやるぜ、げはげは! くらいの感じで頑張ってみたら?」


誰がげはげは笑うねんという野暮なツッコミは入れるまい。

三条さんがにこやかに手を振るのに頭を下げて、俺は姉さんたちの所に向かう。


正直、自信なんてほんとにない。

【変態】という固有スキルを授かった時点で、俺の何かが壊れたんだと思う。

誰かに愛されるということが……。

誰かを愛すということが……。


恋をしろ。


魔王殺しの魔王、オウギュストは、混沌の魔王たちをこっちに来させない条件として、そう言っていた。


もしかしたら、俺は、姉さんより秋菜より誰より、恋をするっていうことが、難しいのかもしれな……。


「じゃあ、この競泳で勝った方が夏輝と二人で一つの浮き輪で流されて大ランデブーね」

「望むところです、春菜さん……! 二人で一つの浮き輪なはナマナ! 大ランデブーをするのはアタシです!」


いや、絶対俺のせいじゃねえな。こいつらが変態すぎるのが悪いんだ。

なんで勝手に俺を賭けて勝負が始まってんだ。っていうか、なんだ大ランデブーって。

おい、プール。人も水も流さなくていいからこの勝負流してくんないかな、マジで。

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