俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第一部最終話 俺の固有スキルが【変態】だってことが曝されて勇者オワタ
第一部最終話 俺の固有スキルが【変態】だってことが曝されて勇者オワタ
『本日、6人目の勇者が誕生しました! これについて、ダンジョン庁ではどうお考えですか? 氷室さん』
『先日の同時多発大発生において確認された魔王という存在を撃退したという功績は世界でも未だかつてないものですからね、ナツ……あの更科さんが勇者に選ばれてもおかしくはありません』
『そうですねー! 私もあの映像を見ましたが、とてつもない威力の魔法を放っていらっしゃいましたね』
『あの映像のお陰で【変態】というスキルを持っている為に偏見の目で見られていたナツ……更科さんの本当の力が見て頂けたので、彼の所属する育成チームを率いる者としては嬉しい限りです』
『さて、勇者認定はされたわけですが、今後も氷室さんの育成チームに所属するということですが』
『はい、ナツ……更科さんは、まだ若いので勇者認定をされたとはいえ、いや、勇者認定されたからこそ次世代の中心人物として、大切に私が、私が、育てていこうと考えています』
『え、えー、その他にも彼は、あの【鋼の勇者】のお弟子さんということで、彼の指導を受けながら、あの御剣学園で実力を磨いていくということで、今後に期待したいですね』
テレビに映る冴えない男。何を隠そう、まあ、隠すつもりも何ももう隠せないんだけれど、この冴えない男子高校生が、俺だ。
俺がテレビに映ってる。
ていうか、おい、氷室さ……いや、レイ……匂わすな。
中学生か。これだから、ぼっち究極体は困る。
あと、CM入った途端に画像を送ってくんな。
マジで痴女じゃねえか。まあ、トイレで撮ってるみたいだから良いかよくねえよ。
ということで、変態勇者が誕生しました!
……
なぁあんでだよぉおおおおおおおお!
原因は明らかだ。神辺先輩が戦闘前からカメラを回してた。
特注の頑丈で魔力もぼんやりだが映せるめっちゃ高いヤツ。
その映像が流出した。
いや、絶対あの人出回らせた。
だって、
「喜べ! 世界中の研究者たちが君に興味を持っている! 本人たちは来れないだろうが若く優秀な部下たちがやってくる! 君の全てを暴きに!」
オワタ。
インターネットって怖いよね。
世界中の人が見たんだって。
あの映像。
いや、まあ、ラストの魔法はいいよ。まだかっこよかったし。
別に、俺が聞こえた変態共の声は入ってないし。
でもね、あれも入ってたのよ。
俺の股間消しテクニックも。
いや、変態じゃん!
名実ともに変態じゃん!
理由言っても無駄だろうしさ、コメントで『オウ! クレイジー!』みたいなこと書いてるしさ!
まあ、もう、仕方ない。
というわけで俺は、変態勇者になった。
とはいえ、テレビでも言ってたが、氷室さんの育成チーム所属は変わりないし、三井さんの指導を受ける『これからの勇者』扱い、それに、オウギュストの約束は国に伝わってるから、俺の御剣学園での学生生活は保障されている。
卒業後は、考えたくもない。
俺は朝食を終え、姉さんにカトラリーすべてを奪われ、妹の頭を撫でながら妹の洗い物に付き合い、家を出る。
二人も一緒だ。
そして、
「なーつき! 学校いこ!」
愛さんも一緒だ。
御剣学園に代わったので、今度は愛さんが遠くなったのだが、愛さんの家から俺の家は通り道だ。なんらおかしくない。おかしくないのだが。
そう思いながら電車に乗る。
眼鏡とアホと合流する。
だが、皆さんお気づきだろうか。
愛さんの最寄り駅、ここじゃない。
愛さん、二駅ほど走って? 徒歩? とにかく無駄に運動してきてる。
まあ、それゆえか相変わらずの運動しにくそうな抜群のプロポーション……
「んんっ……! もうっ、夏輝、またあたしのこと考えてたでしょ!」
愛 さ ん の 固 有 ス キ ル が 進 化 し ま し た。
俺が愛さんのことを考えるだけで、なんか魔力が高まるらしい。
ナニヨソレ?
両側の姉妹の視線がキツイ。
「汗」
姉が俺の汗を拭く。そのハンカチをしまう。あれ? 汗って言う人の汗を拭くんじゃなかったっけ?
『兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん』
妹が【念話】で俺をめっちゃ呼んでくる。返事をすると満足そうに微笑む。
正面眼鏡が近い。めっちゃ近い。
電車揺れてるのに眼鏡揺れない。不思議だな。
駅につく。
ジュリちゃんが乗ってくる。
「こうたいです」
笑顔で姉妹に告げる。交代らしい。俺はどういう取り決めがあったのか知る由もないが交代らしい。
姉妹はしぶしぶ席を空ける。
ジュリちゃんと愛さんが隣に来る。
愛さんがずっとピクピクしてる。いや、そりゃさああ! 変態でもこんな美少女隣にきたら意識しますやん! しょうがないじゃないかああああ!
ジュリちゃんがずっとくんくんしてる。かわいい。けど、徐々にヤバい顔になり始める。
「ジュリちゃん、顔」
俺がそういうとジュリちゃんは急に顔を真っ赤にし、欠伸をして、まるで眠気が急に襲って来たかのように頭を俺の肩に乗せる。乗せるっていうか埋める。ふがふが言うてます。
この子寝てません。
正面眼鏡が近い。めっちゃ近い。
電車揺れてるのに眼鏡揺れない。不思議だな。
「あ! そういえばさあ、夏輝!」
アホが不用意にアホな発言をする。
電車内の視線が集まる。
「え、もしかして、変態の……?」
「マジかよ……あの変態の」
ざわつきがめちゃくちゃ大きくなる。おい、アホ。寝たふりすんな。
つり革持たずに立ったまま寝るなんて器用ダネ、アホ。
そして、騒ぎはどんどん大きくなり
「うわああああ! やった生変態だ!」
「やっぱりこの人が変態だった! そうだと思ったー! 握手してください!」
「変態様、ありがたやありがたや……」
そう、今となっては、変態勇者は人々に認識され、すっごい人気者らしい。
めっちゃ変態変態言うてます。
変態という言葉の認識が変わったのは嬉しい。
けど、なんだろうか。俺の方がその変わり方についていけてない。
変態変態言われて、戸惑っています。
生変態や変態との握手で喜ぶこともよくわかんないし、おばあちゃんなんでおがんでんのよ、よくわかんない。
まあ、でも、変態で怯えられたあの頃よりはマシだろう。
理々は、今、施設でカウンセリングを受けながら、固有スキルと向き合っている。
理々は今、非常に難しい立場にいる。だが、魔王に支配されていたという俺、変態勇者の発言や年齢のこともあり、更に、氷室さんの働きかけで出来るだけ悪い方向にはならないようになっている。
時々、会いに行くが、昔みたいに無邪気な笑顔を見せてくれることが増えたように思う。
さて、俺に近づこうとする皆様へ邪気振りまく面々と電車を降りる。
アホは一発入れときました。
「おはようございます! 主! さあ、なんなりとご命令を」
東江さん達がやってきて傅く。マジでやめて。
「はい、じゃあ、いつも通り、友達でいてください」
「ひゃ、ひゃい! お、おはよぅう! さらしなくん!」
なんであんな恥ずかしいことがスムーズにできて、友達のコミュニケーションがこんなに恥ずかしそうなのか。
「よーし、じゃあ! 揃ったところで、くれくら言いそうなワードしりとり! まず、俺な『さあ、始めよう! 狂気の時間を!』」
アホの発言でマジで狂気の時間が始まる。ナンダコレ? おい、なんだこれ?
「ヲ……お、でもいいですか? なら、『俺はお前らみたいなのが嫌いなんだ、コイツより』」
あー、言ったな。言った。初めてジュリちゃんの、狂戦士の素顔を見た時、曝そうとした馬鹿に言ったな。覚えてたんだ、はあ。
あのあと、俺がSNSで曝されてて大変でしたけどね。
「じゃあ~『陸上最強とは片腹痛い。それは今日までの称号となった。これからは私の時代だ。
鈩君はのんびりした声で、結構な爆弾を落とすな~。
はずい。本当にあの黒歴史を封印したい。
なのに、なぜある?
「『笑えばいいと思うよ』」
「どわああ!」
ビビった。いつの間にかの氷室さん、いや、レイがいた。
なんだ、最近。頭の中読まれてない? 一瞬凄い目で見られたよ?
最近、めっちゃアニメの話をMINEでする。くやしいが楽しい。はああ。
ていうか、それ、俺の台詞ちゃう。
「え、えと、ウチの番よね、『よし、這いつくばって舐めろ、私の靴を』」
言ったことねえ。言いそうにもない。
恍惚とした表情で言わないで、東江さん。
最初に会った時のツンツンが嘘みたいだ。まあ、大好きな
「じゃあ、『お前、武藤マナって……『暴れん坊マナ』か!?』」
愛さん、それ、はナマナ! のナツキの台詞やワシのちゃう。
はあ、漫画みたいな恋したいピュアピュア乙女め、ピュア過ぎて眩しいわ。
「んっ……!」
それやめて、マジで。思春期反応しちゃうから。はあ。
「ふむ……『仮初の姿を脱ぎ捨て、さあ、いこうか闇の舞踏会へ!』」
眼鏡の厨二レベルが高くてヤヴァアアイ。
「『変だよ、姉さん、でも、好きだよ』」
言ってないヨ。姉さん、言ってないヨ。
言ってはないんだよ、まったくもう、はあ。
「『ようこそ! そう、ここが私のハーレムの間!』」
言ったことねえわ、おい、アホ。ていうか、アホなんでお前だけもっかい言った?
ハーレムじゃねえよ、ヘンレムだよ。
「『毎月20日は秋菜様感謝の日』」
妹、それくれくらの台詞ちゃう。俺の台詞や。いや、俺の台詞と認めたくないけれど!
秋菜にはいつも感謝してるっつうの、はあ。
あれ? みんなこっちを見てる。
あ。
はあ。
道理で不自然な流れだと思ったわ。
ああもう! 期待した目で見るな! 言えばいいんだろ! 言えば!
「『人は誰も仮面を被り生きている! 日々を平穏に過ごす為に妥協の仮面を……だが、私は! ならば、私は! 狂気の仮面を被り、この狂った世界を壊し尽くす! 狂気の仮面道化! クレイジークラウンだ!』」
盛り上がるな盛り上がるな。
どうしてこうなったのか……狂った世界を壊したら、より狂った変態ワールドが広がってるなんて誰が想像できるんだよ、まったくもう。
それでも、俺は笑ってしまう。
少し変わった、少し変化させることの出来たこの世界で俺は生きていく。
御剣学園の校門に辿り着く。
ここが、俺の新しい世界。
ふと袖を引かれる。
振り返ると、ド変態さんが笑っている。
そして、俺の耳元に顔を寄せると。
「大好き」
そして、仄かな匂いを残し駆けていく。
オウギュストとの約束。
学校に行く。
色んな経験をする。
そして、恋をする。
たいへん変態な学校生活、経験、恋になりそうだけど。
変態で勇者になったんだ。
もう遅い、よなあ、はあ。
俺はニヤつく顔を、キリリと変えて、歩き出す。
『俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。』第一部
完
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