俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第49話 変態、年上友達ASMR囁かれて就寝オワタ
第49話 変態、年上友達ASMR囁かれて就寝オワタ
「わたし、わたしね」
「はい」
「みんなを見返したかったんだ。わたしをいじめたやつらを。わたしはこんなにすごいんだぞって。だから、『モノノフ』に入った。不純でしょ?」
「不純ですかね? 普通だと思いますけど」
「口調」
「ああっと……えー、普通だと思うけど?」
「ふふ、君からすればそうかもね。でも、見返したいだけだったわたしには『モノノフ』としての戦いは大変だったんだあ」
「大変、で、だったんだ。そりゃそうだよね」
「うん。わたしには覚悟がなかった。モンスターと戦うことがどういうことか。死と隣り合わせがどういうことか。わかってなかった。だから、怖かった。でも、もう学校には帰りたくなかった」
「死と隣り合わせでも?」
「そうだね……わたしにとって学校は牢屋だった。何をやっても罰を受ける。何を為してもあなたは人と違うからと言われる。」
「分かる気がする。まあ、ひむろさ……レイラとは比べ物にならない程、俺のはショボいけど」
「……! うふふ、夏輝のがショボいなんて思わないよ。誰にとって何がどれだけ辛いかなんてその人にしかわからないんだから」
「まあ、そうかな。そうかも」
「うん、そうだよ。自分の固有スキルが【雪女】だって分かって笑ったよ。体中にある呪刻が魔素に反応して氷を生み出すなんて。なんて自分らしいんだって、思った。自分も周りも何もかも凍らせて……使い方を間違えなければ強力なスキルだから、モノノフのメンバーからは絶賛されたけど、学校のみんなはどう思ったか」
「う! 俺もデカい声で馬鹿にされたから目に沁みますわー」
「ふふふ、ありがとう。で、ね。わたしは戦い続けた。戦ってれば褒めてくれるし、辛いことも一時忘れることが出来た。多分、逃げたんだ。わたしは、わたしから」
「逃げも兵法のひとつですぞ」
「ふふ、うむ! そういってくれる友達が欲しかった。モノノフのみんなは優しいけど、大人で、責任や守らなきゃいけないものや、諦めがあったから。わたしみたいな子供の考えは理解しにくかったと思う」
「あー、やっぱそういうもんなんかね」
「大人になれば分かるよ。色々知って色々分かって色々分からなくて色々割り切る。でも、諦めたことだって、取り戻せるって、わたしは今日知った」
「ものによるけど」
「そうだね、ふふ。ねえ、わたしと夏輝は友達でも、いい? これからも」
「こんな美人の友達断る理由がないけど?」
「ふふ、やった」
「あ、でも、肌色の画像は控えて」
「お友達から始まる恋なんて普通でしょ」
「いや、すっ飛ばしてんのよ! 色んな過程を!!」
「だって……分からないんだもん。普通の恋愛」
「噓でしょ。いやいやいや、こういうデートしたいとかあるでしょ」
「でーと……デート!? いや、うん、ああ、デートね、あはは」
「なんで今更照れるし」
「なんだろ……デートって……照れない?」
「ぶははは!」
「笑うなー!」
「まあ、練習相手なら付き合いますよ」
「本番相手は?」
「……わっかんないんですよね。すげー好意寄せてくれる人たちがいるけど。なんだろ、それって本当の俺なんですかね? もし、俺が【変態】のスキルを持ってなくても、みんなは俺が好きなんですかね?」
「好きだと思うよ。わたしは、君の変に目敏くて、変に気遣いで、変に優しい所が、好きだよ」
「あー、うん、多分。自分の中で、その、整理がついてないというか、ただ、やっぱり子供なだけなんだろうな。スキルって勝手に神様かなんかから押し付けられたものな気がして。俺はそれを一時めっちゃ嫌がって恨んでたのに、今更、貰ったものを自分のものですって言い張って、神様に『ほら、ざまぁwww』みたいに見えてるんじゃないかって」
「そっか。うん、まあ、なんとなく分かるよ」
「俺は……いや、今はこの話は暗くなりそうなんでいいや」
「よくない」
「いや」
「よくないもん」
「いや、もんって。……俺は、弟、いなくなったんです。大発生で」
「うん」
「俺が守らなきゃいけなかったのに」
「そんなことはないんじゃない?」
「俺はそう思ってた」
「そっか」
「俺だけ、幸せでいいのかなって」
「……」
「俺はスキルに覚醒してた。だったら、俺がなんとかしなきゃ。なのに」
「出来なかったから幸せになるべきじゃない」
「そうっすね」
「夏輝、わたしはさ、何十人という人たちとの別れを経験してる」
「あ……」
「だからとは言わない。それぞれだもん。誰にとって何がどれだけ辛いかなんてその人にしかわからない、から。それぞれ受け止め方も、それぞれ。ひどいかもしれないけど、命の重さだって違ってしまう」
「……」
「だから、わたしはわたしの勝手な事を言う。わたしは、わたしを助けてくれた、わたしを変えてくれた更科夏輝に幸せになって欲しい」
「……参ったな。なんて返せばいいか分かんないす」
「口調」
「……ありがと」
「うむ! ふふ、少しずつでもいいから変わっていこうよ。わたしも君も」
「そうっすね」
「口調」
「あいあいあいさー」
「あいが多いね」
「サービスしときました」
「じゃあ」
「しませんよ」
「なんで!? わたしを変えた責任をとりなさいよ!」
「誰が肌色見せたがり痴女になれと言いましたか!?」
「アピールの仕方が分からない!」
「世のみんな! 思春期は大切にするんだ! こんな人間になる前に!」
「こんな人間になっちゃったんだから、仕方ないだろう! 据え膳だぞ!」
「だが、断る!」
「なんで!?」
「大切な友達なので……」
「うぅ……ずるい……返せない」
「じゃあ、話変えましょ……しょうぜ! そうだ! 何か学生時代にしたかったことは?」
「え、えーと、えーと、いっぱいあるなあ。ウィンドウショッピングとかクレープとかゲームセンターとか」
「少しずつやっていくってのはどうでしょか?」
「……良いと思います」
「まあ、仕事があるから難しいかもですが」
「早く終わらせようと思います」
「ジュリちゃんもきっと喜びますよ」
「そうだね、ジュリも一緒に」
「俺達のアオハルはこれからだ!」
「うん! ……ん?」
「打ち切りかーいっていうツッコミがくるかと」
「打ち切り? 獄門?」
「それ、打ち首。えーと、今度漫画貸します」
「漫画! いいね、それっぽい!」
「何から貸そうかな……あれも……これも……いや」
「漫画かあ。あ、そうだ、これから夏だし、海も行ってみたいな。海、水着、アバンチュール、ふふふ……ん? 夏輝?」
「すぅ……」
「寝たの?」
「……」
「寝たんだ」
「……」
「おつかれ、本当にありがとう」
「……」
「いじめられて、逃げて、戦って戦って殺して殺して失って失って失って……それでも、君に出会えて、まさか、こんな感情に出会えるとは思わなかった。はは……変かな? この年で、こんなに浮かれて、夢中になって、大切に思えて……」
「……」
「……」
「……」
「すきだよ」
「……」
「誰に何を言われてもいい。馬鹿にされても変だと言われてもいい。大事なのは自分の気持ちだから、ね?」
「……」
「でも、まあ、今日のところは大人しく引き下がる。逃げも兵法だから……。おやすみ、夏輝。おやすみ……」
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