かわりはてしおもい
それはあまりに突然だった。
道路の向こうからかなりのスピードで走ってくる車が一台。信号は赤。止まる気配はない。危ないと思って、織を歩道の内側に寄せようとするも、その手は空をつかむ。ひらりと道路に出る織。車が走ってくる車線上に立つ。キキーっと辺りに残る不快な音が耳を刺す。ドンという鈍い音が聞こえた。車は逃げるようにどこかへ走っていった。毬のように跳ねる身体。頭から流れる赤。
その一瞬は一生のようにも思えた。伸ばしているのに、届かない手。おもりをつけているように動かない足。すべてがスローモーションのように見えた。あの時。あの瞬間。ちらりとこちらを見た彼女は。目を合わせた彼女は。口元に笑みを浮かべていた。
雲間からのぞく月が笑っていた。
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