第19話 裏技
冬が開けてから二か月がたった頃から、商隊の人に子供が連れられてくるようになった。その子供たちは一様に怯えたように孤児院に入ってくるが、一月もすれば元気になって庭を駆け回ったりしている。
と言うわけで作る部屋はかなり増えてきているが作る俺たちの慣れてきているため二日で一部屋作れるようになってきた。これだけ時間が短縮されたのは俺以外の子供たちも気絶しないようになったためだ。
そんなある日、仕事の配置換えがあり、新しく来た子供たちが部屋を作るようになった。もちろん今まで部屋を作っていた子供たちもいるが、俺はいきなり部屋を作るなんて作業をさせて大丈夫なのかと不安になった。
そのことをじいちゃんに相談すると。
「ルークの最初の仕事もこの孤児院の修繕だったじゃろうが。人間死ぬ気になればできるもんじゃよ」
そう言えばそうだったと納得してしまう俺であった。
俺は配置換えにより、より剣術訓練の時間が増えた。俺の相手はグレイス団長がしてくれている。アインとカインとの三人がかりでもグレイス団長には一撃も与えることができずに体力の限界まで打ち合いをさせられていた。
まあ、他の子供たちも似たり寄ったりで相手が違うだけで体力の限界まで打ち合いをしているのだが・・・。
そんなある日、じいちゃんに十人程の子供たちが呼び出された。
「お前たち、剣術スキルが芽生えておるぞ」
そう言われ俺、アイン、カインは喜んだが、他の子供たちは何とも言えない表情をしていた。
理由を聞いてみると。
「短剣術の訓練もしているのでそちらの方がよかった」
「私は戦闘したくないから他のスキルを取得したい」
など様々な意見があった。
俺はそんな子供たちに実験をしてみてもいいか尋ねてみる。返事はもちろんOKだった。
俺は一人の子供の剣術スキルと俺の剣術スキルを合成させてみた。以前、詐欺神官にやってみてできなかったことだ。以前より成長を実感している俺はなんとなく試してみたくなったのだ。
結果はと言うと、俺は気絶してしまっていてその場では分からなかった。
次の日、目が覚めるとじいちゃんが俺の顔をのぞき込んでいた。
「おお。ルーク。起きたかのぅ」
「じいちゃん?俺あの後どうなったの?」
「実験は成功じゃよ。ルークの剣術スキルはレベル2に上がって、相手の子は剣術スキルが無くなってしまったわぃ」
「つまり俺は相手のスキルを奪えるようになったってこと?」
「それは分からん。今回は相手の同意があったから成功しただけかもしれんしのぅ。何にせよ。このことが国にばれれば【合成】持ちはスキルを上げるために使い捨てられるかもしれんのぅ」
そうならないために俺は強くならなければ。そう思うのであった。
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