プロローグ2 学校生活
お母さんとかおるには大丈夫って言ったけど、さて、日雇いの仕事、出来そうなものがあるか探してみなきゃ。
私は高校までの自転車通学中に色々と考える。
今までも、日雇いでバイトを幾つかしている。
このネット社会で私はスマホを持っていない。
日雇いの仕事を探すのは決まって図書館のパソコンコーナーだ。
高校に入って良かった事の一つに、高校の図書館のパソコンコーナーにネット環境があることだ。
私は予鈴15分前くらいに学校に着く。
今日は朝ゴタゴタしていたせいで遅刻ギリギリについた。
まだざわついている教室に入る。
誰に声をかけることも、誰かから声をかけられることもない。
真っ直ぐに自分の席に着く。
そこは私にとって天国だ。
騒がしい同級生がいるものの、授業が始まれば先生の声しかしてこない。
休憩時間は図書館に行けばいい。
恐ろしい父もいないし、守らなければならない母も弟も存在しない。
学校に来ている時は、とても気持ちが楽だった。
とは言え、今日は日雇いのバイトを放課後までに探さなければならない。
放課後は定期的に入っているファミレスのバイトがある。
それまでに、連絡できるところに電話を入れてバイトが出来るか、日払いでバイト代をもらえるか、確認しなければならない。
今日はちょっと忙しい。
担任の先生が教室に入ってくる。
若めの綺麗系の女の先生だ。
生徒から結構人気があるみたい。
私も結構嫌いじゃない。
中学までは先生達に色々話掛けられ、家庭でDVがあることも薄々感づかれていたからどうにか児相につなげようと躍起になる偽善者の集まりだった。
高校はその点、本当に楽だ。
何の詮索もされない。
担任以外はほとんど関わらない。
その担任も面倒ごとには首を突っ込みたくないのがまるわかり。
私の素行が悪ければたぶん嫌みの一つも言ってくるのかもしれないが、生憎私はいたって真面目な生徒だ。
先生は教室中を見回し、出席を取り始めた。
お昼休憩のチャイムが鳴り響く。
私は同時に席を立ち、お弁当の入ったバッグを持って教室を出る。
大体屋上でお弁当を食べる。
屋上を使う人は何人かいたけど、大抵皆一人で食べていた。
今日の私は時間がない。
とにかく、急いで塩と海苔だけのおにぎりを頬張る。
味なんかよく分からない。
母が務めているスーパーの安い米、しかも賞味期限切れそうな半額シールのついた米をいつも食べていた。
食事はとにかく体を動かす燃料だ。
お腹のすく感覚も分からなくて、食事代も勿体ないと思った中学1年の夏休み、水だけ飲んでいたら栄養失調で倒れてしまった。あの時、治療費が食事代以上にかかった上に、母は自分のせいだと自分を責め、弟は私が倒れてびっくりしたのか大泣きした。父は、私が倒れたことを知っているのか?あの人のことはよく分からない。家族に関心がないように思うから。
とにかく、あの日、私は実感したのだ。食べるという行為は絶対的に必要なことだ、と。
だから、とりあえず、1日1回は何かしら燃料になるものを口に入れるようにしている。
アッという間に食べ終えて、私は図書室に向かった。
それほど長くはない昼休み。
早く行かないとパソコンも誰かに使われてしまう。
図書室の一角。
パソコンが10台ほど並んでいる。
以前、誰かが言っていた。
「古いパソコンだよな、遅いし、もっといいのに変えればいいのに」
私にはピンとこなかった。
こんな便利な物なのに世間ではもっと便利なパソコンがあるらしい。
私は画面に向かう。
キーボードを打つ手はおぼつかないが、それでも、中学校で覚えたタイピング方法で「日雇い 日払い」と検索をかける。
その中から、私はなじみのサイトをクリックする。
プリントアウトもしてくれるが、1枚10円かかる。
私は中学の時のプリントを切って作ったメモ用紙を取り出して必要な内容をメモしていく。
とりあえず10件。
10件電話して無理だったら、依然働いたことのあるバイト先に片っ端から連絡するつもりだ。
結局、10件メモをとったところでタイムアップだった。
午後の授業が始まる。
私はソワソワしながら午後の授業を受けた。
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