転職人生の成れの果て日記
@tenshokujinsei
第1話
2022年11月23日の日記
2022年12月1日の入社が近づいてくる。職種は海外営業。ルートセールスでの受注活動が95%を占めるし、ノルマも個人には課せられないと確認したので少し安心していたが、だんだんと不安が押し寄せてくる。今日は朝から精神安定剤の頓服薬を飲んだ。外は朝から雨脚が強い。こういう日は気分が萎えてくる。鬱っぽくなる。家事をするのが精一杯。何もする気が起きない。わけもなく気分が落ちる。これまでの過去の記憶が蘇り、度重なる転職の失敗のトラウマに息苦しくなった。妻に不調を訴える。
この前もらった労働条件通知書件雇用契約書に書かれている業務内容をもう一度読む。いくつか項目がある中で一番上に書かれている仕事内容の”海外売上拡大に向けた新規顧客開拓”という文字。一番上に書かれているという事は会社から一番期待されている仕事内容である。ただ単に既存の顧客からの注文を待ち、その出荷手配と輸出に必要な貿易書類の作成と納期管理をしていればよいというわけではない。勿論、最初から商品知識もない中で、新規開拓して厳しいノルマがたたきつけられるとは考えられない。それは面接の中でも確認した。ノルマはチームに課すと、個人目標はあるが、ノルマを達成しなくても叱責される事はない。そしてパワハラもないと社長からはっきりと言葉を聞いた。しかし、仕事にも慣れ、だんだん新規開拓営業の比重が高くなっていくのではないか。会社なんて最初言っていた事を簡単に覆す。
なんでも起こりえる。過去の経験からそう言い切れる。
私の頭の中はネガティブという物質が凝り固まってできている。経営戦略の立案、企画営業なんか自分にできるはずがない。そもそも仕事内容と自分ができる事のミスマッチをしていないか。仕事が始まっていないのに自分の中で結論付けてしまう。妻からは、何事にも興味がないのがいけないよねと言われる。普通の人だったら責任ある仕事を任せられたら嬉しいのだと言われた。認めてもらえたのだとやる気が出るのだという。そこが私の感覚と違う。私は面倒くさいと真っ先に思ってしまう。そしてそのプレッシャーに耐えきれなくなってくる。失敗した時の事を考えてしまう。そして逃げたくなる。何をしていいか分からず指示を待つ。私は決まった仕事があって、それを一つずつ捌いていく仕事が好きだ。自分から仕事を作っていくなんて事はしたくない。一つでも仕事を減らしたいと思っているのに、仕事を増やす事が自分の仕事なんて私の価値観とは逆行している。そういう観点で新規開拓営業は自分にはミスマッチではないか。いくら英語を使用するかと言って、これから務める会社は基盤がしっかりしていて安定しているとは言え、それは私には関係がなかった。早くも、何をしていいか分からず右往左往している自分に、面接の時は優しそうに見えた面接官の上司が叱責をする光景が目に浮かぶ。私はこの会社で定年まで働き続ける自信を失った。すぐにまた会社に行けなくなってしまうのではないか。そんな不安に押しつぶされそうになった。
妻から、突然「つまらない人生だったね」と言われて、そんな言い方はないだろうと反発して喧嘩をした。妻は言い方が悪かったと謝った。
時間は無常にも刻一刻と入社日へと不安なままの私を誘うのだった。もはや精神安定剤を服用しても私の精神は不安定なままであった。精神科の先生も言う。「上司に怒られたり、仕事のプレッシャーのせいで会社に行けなくなったり、会社をやめないようにするのは精神科ではなく、カウンセラーの領域になります」と。
今度、11月30日に精神科に行った際に、先生に言うつもりである。認知行動療法を受けたいので紹介状を書いてくださいと。5年前に妻から認知行動療法に行った方がいいと言われ、一度行ったが、高額すぎて、効果がその対価に見合うのか疑問だったので私はそれ以来行かなくなった。そして精神科での薬の服用を続けたのであるが、その間も転職を繰り返し、症状も一向に良くならなかったので妻の言う事をきくことにしたのである。
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