ギャルが俺の家に来た

ピンポーン!


今日は日曜だ。

昨日は残業で終電を逃し、倒れていたギャルを助けたが「最低」呼ばわりをされた。最悪の日だった。

疲れ果てて昼すぎまで寝ていた。


「せっかく気持ちよく寝てたのに。いったい誰だよ……」


俺はパジャマ姿に、寝癖ボーボーのまま、玄関へ向かった。


「はーい……どちらさまですか?」


俺はドアを開けた。


「瀬川さん。昨日はありがとうございます!」

「うおわ!」


外に立っていたのは、昨日、俺が助けた金髪ギャルだった。


「……なんで俺の名前を知っているんですか?」

「これ、落としましたから、届けに来ました」


ギャルは財布を俺に渡した。

俺が昨日、落とした財布だ。

どうやら俺の家まで届けに来てくれたらしい。


「……届けるために、財布の中身を見てしまいました」

「そうか。それで住所がわかったのか」

「昨日はすみませんでした!助けてもらったのに酷いこと言って……」

「いやいや、別にいいですよ。あの状況では勘違いされても仕方ないです」

「瀬川さんって、優しいんですね」


ギャルは微笑を浮かべた。

見た目は派手だけど、喋り方はおしとやかでギャップがあった。

明るい笑顔で、かわいいな……

胸も大きいし。


「私は津島水月(つしまみずき)と言います。その……お礼させてください」

「お礼?そんなのいいですよ。財布を届けてくれただけで」

「人様に助けられたら、ちゃんとお礼しなさいと母に言われてますから」

「うーん……ここで話すのもアレだし、上がってください」


とりあえず家に上げてしまったが、部屋がめちゃくちゃ散らかっているのを忘れていた。


「あ……ごめん。けっこう散らかってるけど」


俺は散らかった床を片付けて、津島さんの座るスペースをつくる。


「もしかして……瀬川さんってお掃除苦手ですか?」

「いや、まあ、最近残業続きで、掃除する暇がなくて」

「お仕事、忙しいんですね」


正直、俺の仕事は「忙しい」なんてレベルじゃなかった。

デスマに次ぐデスマで、毎日、死線をさまよっている。

目の隈がめちゃくちゃ濃くなっているぜ……


「わかりました。お礼に、お掃除させてください。私、お掃除得意ですから!」

「いやいや、そんなの大変ですから……」


ゴミが溜まりに溜まって、かなり「汚部屋」になっている。

たぶんきれいに掃除するには丸一日はかかるだろう。


「大丈夫です!私、お掃除が好きですから!瀬川さんは座っていてください!」


津島さんは、俺を床に座らせた。髪を結んで、上着を脱いだ。


「私、けっぺれ!」

「けっぺれ……?」

「やだあ……出ちゃいました」


津島さんは青森の津軽出身だそうだ。

「けっぱれ」は、津軽弁で「がんばれ」という意味らしい。

さっきのは、「私、頑張れ!」と自分で自分を激励したようだ。


「気持ちが高ぶると、つい出ちゃうんです」


津島さんは顔を赤くして恥ずかしがっている。

ここはフォローしないとマズイかな……


「かわいくていいじゃないですか。素敵ですよ。津軽弁」

「か、かわいい……うれしいちゃ」

「本当、かわいいと思います」

「そ、掃除しますね!」


津島さんはテキパキと掃除を始めた。

掃除機をかけてくれたり、キッチンもピカピカにしてくれた。

本当に掃除は上手らしく、みるみるうちに汚部屋がきれいになっていく。


「うん?これは何だちゃ?」


津島さんが手にあったのは……


「あ!それは!」

「めぐせぇ本だ……」


ベッドの下に隠していた同人二次エロ本だ。

終わった……俺の人生が。





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