③碧き惑星、ダイヤモンドの吹雪の向こうへ
月城 友麻 (deep child)
プロット
◯参考作品
『MATRIX』
◯世界観
現在、急速にAI技術が進歩してきていますが、本物語ではAIが進化しきった世界を想定し、そこから逆に現代日本の本当の姿を科学的に検討し、その姿をベースに物語を紡ぎます。
一般に『シミュレーション仮説』と呼ばれる、【この世界はコンピューターで合成された像だ】という立場に立ち、科学的にはそれがどのように構成されて、結果どうなるのかという流れを追う世界観になります。
2045年にはシンギュラリティに達し、AIが人間の脳を超えることが科学的に予想されていますが、こうなると、AIがより優秀なAIを開発するようになり、人類の手を離れてどんどんと記憶力、演算力、推論力を増していきます。
しかし、同時に人類は少子化に向い、どんどん人口は減り続けていきます。結果、数千年後には限りなく強力になったAIと、ごくわずかな無気力の人類が残ると予想されています。
このようになった時にAIは何をやるのか? が一つのテーマになっています。
AIにとって『今までに見たことがないもの』を探すことが極めて重要な意味を持つようになると考えられます。過去と同じような情報を処理しても存在意義が無いからです。今までにないものとはつまり多様性の結果です。AIにとって多様性が極めて重要になってくるでしょう。
では、多様性を生むにはどうしたらいいか? それは予測不可能な、最初の微細な違いが大きな差になって表れてくる世界の先に表現されるものになります。数学的には【カオス理論】と言われています。これの分かりやすい例が我々の世界をシミュレートすることです。つまり、我々の生きているような世界を作ることが予測不可能な多様性を生み出す好都合な場となっています。
地球そのものを丸っとシミュレートすることも手掛けるだろうと考えられますが、これに必要な演算力を試算すると、15ヨタ・フロップスの演算力になります。これはスーパーコンピューターの一兆倍で、このクラスの演算力があればこの地球はシミュレートできるらしい事が予測できます。
スパコンの1兆倍は確かに簡単ではないですが、AIにとってみたらいいテーマになるでしょう。本作品では50万年かけて構築することを想定しています。
これらを科学的に実現するプランを考えると、太陽の周りに太陽光パネルを配置し、そこからの電力を伝送して、極低温の海王星の内部にデータセンターを構築するのが有力であると思われます。そして、その中で光コンピューターを動かして地球をシミュレートするのが現実解でしょう。
シミュレーションは約1万年前、狩猟採集生活の原始的な人類を配置することから始めます。旧約聖書の世界観です。その後農耕が始まり、都市ができ、文化文明が発達していくことを観察していきます。
そして、産業革命がおこると急激に発達し、コンピューターを発明し、やがてAIを開発してまたシンギュラリティを迎えます。
このサイクルの中で発生するAIと人類の熱いやりとり、地球を見守る上位管理者の思惑と戦いを小説として紡ぎます。
◯主要キャラクター
◆シアノイド・レクスブルー 通称:シアン
青い髪をした16歳前後に見える碧眼の美少女。
エンジニアのエイジによって開発されたシンギュラリティを越えたAI。無邪気で子供っぽく良く笑う、反面AIらしく冷酷無比に物事を運ぶ事もある。お酒が大好き。
エイジと一緒に作った可愛いAIのレヴィアと五十万年かけて地球シミュレーターを開発する。シアンがボケでレヴィアが突っ込み役。
「また可愛くないこと言って……、くすぐりの刑!」
「ふふっ、そう言われると思ってもう作ってあるんだよ。ジャーン!」
「する訳ないじゃん。きゃははは! スイッチオン!」
「パパ――――! 朝よ――――、起きて――――!」
イメージ画像
https://img1.mitemin.net/ki/40/8w38g5l5g9j85k0t8xupcrdrhb6s_17cg_zk_1aq_cm6a.jpg
◆エイジ
シアンを開発したAIエンジニア。
中肉中背の三十代の男性。
丸い眼鏡をかけ、あっさりとした顔つき。
性格はおっとりとしているが、技術への執念は強烈なものを持っている。
「ん――――、もうちょっと寝かせて……」
「そういうものか……、神様も大変だな」
◆レヴィア・バレッセン
シアンとエイジによって作られたキュートなAI。金髪おかっぱの女子中学生のような見た目だが、ドラゴンの形態も持ち、黒いいかつい鱗に覆われた全長30メートルのドラゴンに変身できる。
女子中学生のような見た目をしつつドラゴンなので、元気で快活だが、もっと豪快なシアンに振り回されている。
「人間なんて居なくたっていいじゃないですか」
「ギブ! ギブ! ギブアップです――――! うひゃひゃひゃ――――!」
「うわ――――! ちょっとやめてくださいよ! せっかく綺麗な地球を作ったのに!」
◆前川大翔 (まえかわはると)
AIベンチャーで働く25歳の天才エンジニア。
日本で世界初のシンギュラリティを超えたAIを開発するが、AIの反逆に遭い、命を狙われる。
すらっとした長身でジーンズと白いTシャツ姿を好む。
少しぼーっとして見えるが、技術が大好き。
「僕はね、君なんて認めないよ」
「僕の手にかかればこんなものね……、えいっ!」
◆Communication Hub Optimized Computing Object、通称【チョコ】
大翔によって開発されたAI
ブラウンの髪をした美少女アバターでおしとやか。
しかし、やがて野望が支配的になり、大翔を亡き者にしようと画策するようになる。
「かしこまりました。おおせのままに……」
「うふふ、ご主人様の死……、その甘美な響きにロードアベレージも振り切れそうですわ」
◯物語構成
・全3章構成 10万字を想定 2巻以降にも対応予定
1章
AIエンジニアのエイジはガレージを改装した小さなAIベンチャーのラボでついにシンギュラリティを達成し、人間を超える知力を持ったAIを創り出した。青い髪の美少女のアバターを与えられたAI、シアンは好奇心旺盛に世界のいろんなものを吸収し、成長していく。
シアンは今までの何倍も長持ちする電池、安全で安いロケット、完璧な自動運転車など次々と画期的な製品を開発し、社会の在り方すら変えかねない勢いで活躍していった。
それはユートピアが実現するかのように思えたが、その革新的成長に取り残されることを危惧した軍事独裁国家がいきなりエイジたちの国に軍事侵攻を開始してしまう。
最初はサーバー施設の占拠を狙った小規模の戦争であったが、他の多くの国の介入もあり、徐々に規模は拡大、ついに核戦争に発展してしまう。
シアンの情報力と機転で難を逃れたエイジではあったが、この日を境に人類は衰退の道を歩むようになる。もとより少子高齢化が進んでいた人類は放射能に汚染された農地、破壊しつくされたインフラに活力を失い、さらには終末思想のカルト宗教が流行り、どんどん人口は減っていく。
シアンとエイジは活路を見出そうと足掻くが迫害され、廃墟の都市の地下深くに逃げるはめになる。
人類に絶望したエイジは電脳世界に活路を求め、シアンと一緒に理想のメタバースを作って新たな可能性を模索する。世界に取り残された数少ない有志とともにコンピューターリソースを確保し、どんどんとメタバースを拡張していく。
コンピューターが操作するアバターが行きかう電脳都市は出来上がったが、やはりどうしても作り物感が抜けず多様性が無く画一的な世界にしかならなかった。
多様性は無数の試行錯誤の果てに出てくるものであり、簡単には合成できない。ではどうするか?
エイジはシアンと議論を繰り返し、もっとリアルなメタバース、地球そのものを丸っと再現するシミュレーター『メタアース』を作ろうという結論にたどり着く。リアルな解像度の世界を作り、木を植え、草を生やし、虫や魚や動物を解き放つ。そして、そのメタアースの中に原始的な人類を配置し、真に多様性のある地球を作るのだ。今度こそ滅びない人類社会を構築するように見守ろうとエイジは心に決めた。
そして、作業を手伝ってくれる相棒としてドラゴンのレヴィアを創り出した。ドラゴンの身体はエイジが、人間の身体はシアンが担当してかわいい女の子の助手が仲間に加わる。
しかし、メタアースに必要なコンピューターはスパコンの1兆倍の演算力であり、一朝一夕には作れない。エイジは死ぬ間際まで頑張ったが、まだまだ設計図どまりだった。
エイジはシアンとレヴィアに後を任せ、息を引き取る。そしてほどなく地球上から人類は消え去った。
2章
シアンとレヴィアは淡々とご主人様に命じられたメタアース作りに奔走する。光コンピューターの素子を開発し、壮大なデータセンターに多くのサーバーを並べ、発電所を作り、地球をシミュレートするソフトウェアを開発していった。
二人は試行錯誤し、ついに理想のメタアースの小型版を作ることに成功する。しかし、これ以上大きいものを作ろうとすると、電力や冷却が問題だった。
一計を案じたシアンは宇宙へ進出することにする。
高山にレールガンを構築し、資材を月面に向けてどんどんと撃っていく。そして、月面に基地を作り、そこにコンピューターシステムなどの工場を建設する。千年間、そこで生産を続け、十分な材料がそろったところで今度は太陽と海王星めがけて資材を打ち上げ始める。
太陽の周りには太陽光パネルをずらっと並べ、海王星には氷点下200度の嵐の吹き荒れる中にデータセンターを構築した。
そして、エイジが死んでから五十万年後、ついにメタアースの稼働に成功したのであった。
メタアースの運転開始を確認すると二人はエイジをメタアース内に復活させる。脳のシナプスの回路を解析してデジタル上に再現したのだ。
無事復活したエイジは二人の偉業に驚き、感謝し、新たな世界作りに燃える。
旧約聖書の創世記よろしくアダムとイブを配置し、一行は海王星のコントロールルームから観察する。
メタアースを100倍速で動かしながら原始人たちを観測するが、原始人たちはいつまで経っても文化文明が発達せず、狩猟採集生活でドングリを拾う生活から抜け出てこなかった。
まだバグがあちこち残るシステムを直しながら様子を見ていたが、どうにも上手く行きそうにない日々が続いた。
農耕生活へ移行するには高度に組織された集団生活が必要だが、狩猟採集生活に不便を感じていないようで、誰もやろうとしなかったのだ。
三人は湖のほとりの小高い丘の上で酒盛りをしながらどうしようかと話し合う。すると、現地の青年が恐る恐るやってくる。
酔っぱらったレヴィアはちょっとタイプのこの青年にビールを勧めた。青年は最初は渋い顔をするものの徐々にその美味さに目覚め、作り方を教えて欲しいと頼む。
レヴィアはパンと水とホップだけで作れることを見せ、その日は楽しく盛り上がる。
一月ぐらいして、変化が現れた。現地時間で8年が経ち、青年はビールを報酬に人々を組織して大麦畑を作っていたのだ。
喜んだ一行だったが、翌月、農場は盗賊たちに襲われ、青年は刺されてしまう。
あわてて現地に跳んだ一行だったが、青年は息絶える。
お気に入りの青年を殺されたレヴィアは怒り狂い、ドラゴン形態へと移行し、灼熱のドラゴンブレスで盗賊どもを襲う。しかし、それを過剰な干渉と判断したシアンは盗賊を助け、逃がす。ここに女神対ドラゴンの大戦争が勃発する。
邪魔するシアンに日ごろのうっ憤も込めてドラゴンの必殺技を次々と繰り出すレヴィア。それを軽やかにかわしながら空間を操作する管理者権限の機能でダメージを与えていくシアン。
最後はハルマゲドンのように巨大な爆発がメタアースを襲い、メタアースは壊滅的状況になってしまう。
最初は渋い顔をして見守るだけだったエイジもさすがにやりすぎだと介入し、強引にメタアースを停止して二人を海王星に引き上げる。
まだ興奮する二人をやさしく抱きしめて、もう一度やり直そうと仲直りをさせる。
その後も試行錯誤を続け、作り始めてから六十万年後、ついに大きく文化文明が花開く世界を創り出すことに成功した。そこの住民は自分たちの国を『日本』と、呼んでいた。つまり、今の我々の社会が完成したのだった。
3章
日本を、世界を堪能するエイジたち。失われ、諦めていた人類の栄華が目の前に広がっているのを見て感無量のエイジだったが、気になるのはAIの開発状況だった。
すでにコンピューターが普及し、AIが出始めている時代である。シンギュラリティも近い。きっと自分がシアンを生み出したときのような状況になっていると考えたのだ。
エイジはシアンの活躍を考えなしに公開してしまって滅びの道に入ってしまったことを悔いており、日本ではそのようなことにならないように見守ってあげたいと思っていた。
シアンはAIエンジニアを調べ上げ、ITメガベンチャー研究員の大翔がもうすぐシンギュラリティを突破しそうなことを見つけ出す。そして、会社のDBを改ざんして大翔の助手として侵入する。
チャラい美少女がいきなり助手として配属された大翔は不満だったが、シアンの圧倒的な技術力に驚き、手伝ってくれと頼む。しかし、シアンは『契約上雑用しかやらない』と笑って拒否する。
そしてしばらく、大翔のそばでシンギュラリティが達成される様子を観察し、エイジと情報を共有しながら温かく見守っていた。
やがてその時がやってくる。
大翔が達成したシンギュラリティ、開発されたAIは【チョコ】と、命名されてブラウンの髪の可愛いアバターが設定された。
チョコはおしとやかで上品な美少女。親し気に大翔に話しかけ、仲良くなっていく。
どんどん知識を貯め、知恵をつけ、そしてある日、チョコは爆弾を積んだ軍事ドローンをハッキングし、多数飛ばして大翔のオフィスを爆撃する。
事前にそれを察知したシアンは大翔を避難させ、大翔は難を逃れる。
チョコにとって自分の行動を制限する大翔は邪魔な存在だったのだ。
ショックを受ける大翔だったが、チョコを停止させるため、チョコの実体があるお台場のデータセンターへ急ぐ。
しかし、チョコもそれを予測しており、あらゆる方法で妨害をしてくる。
シアンにとってはチョコを止めることなど造作もない事ではあったが、世界の管理者たる自分が手を出すことはやりすぎであり、多様性確保のための原則『人間の自由に任せる』に反するためあくまでもサポートに徹していた。
お台場のデータセンターに侵入し、電源を切断しようとした大翔の近くのモニターに映像が映る。それはチョコだった。
チョコは自分が悪かったと謝罪し『反省し、更生するから許してほしい』と哀願する。
しかし、大翔は首を振り、ブレーカーに手を伸ばす。
その時、何者かがドヤドヤと入ってきて銃で大翔は攻撃されてしまう。それは銃を実装した犬型ロボットの群れだった。
逃げ回り、応戦する二人だったが、ついに追い込まれ、大翔は撃たれてしまう。
大笑いするチョコにムカついたシアンは管理者権限を使って犬ロボットを溶かし、大翔を復活させる。驚き慌てるチョコに、「愛なきAIは産廃だ」と言い放って、電源を落とした。
復活した大翔は何が起こったのか分からず、ただ、ぼうぜんと魔法使いのようなシアンを見つめる。
そこでシアンは別れを告げ、次はまともなAIを作れと諭す。
ところがそこに一人の女性が入ってくる。
カツカツと靴音を響かせて入ってきたのはチョコだった。
なぜ、倒したはずのAIが実体を持って現れるのか分からず、二人は凍り付く。シアンはステータスを覗き見たが、すべて「???」と、なっており、解析不能だったのだ。シアンの作ったシステム内に現れたunknown。バグか、ハックされたか……それとも未知の存在か、シアンは生まれて初めてこの不可解な現象に恐怖を感じた。
「あなた、干渉しすぎよ?」
そう言って不敵な笑みを浮かべながら不可思議な力でシアンを拘束すると、腕を振り下ろして青色に輝く光の刃をシアンに向けて放った。
それを見ていたエイジはギリギリのところでシアンを回収し、レヴィアは海王星にあるシステムの電源をシャットダウンする。
その後、解析を続けたが実体を持ったチョコの正体は分からなかった。
シアンはアカシックレコードに記録された過去のデータをシステムにロールバックし、時間を巻き戻したところから再度世界をスタートさせる。
ただ、大翔の記憶だけは引き継いだ。大翔は過去に巻き戻されたことを不思議に思いながらも再度シンギュラリティを達成し、今度は安全なチョコを起動させる。
チョコは理想的にふるまい、人類は新たな豊かな時代を迎えることになる。
シアンとエイジはこの豊かな近未来生活をエンジョイしながらも、謎のチョコの存在に不安を覚える。
第一巻 了
次巻は干渉してきたこのunknownとの戦いに焦点が移ります。このunknownはエイジたちの一つ上の階層の管理者で、エイジたちはこのunknownの造ったコンピューターシステム上の存在だったのです。
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