カナリアな彼女 (未完終了)

冬夜ミア(ふるやミアさん)

モノローグ 1422

運命とは何か……?

 ふと、人生を振り返るたびに『運命とは何か』と考え耽ってしまうことがある。


 きっかけは何だったかはもう忘れてしまっていたが、少なくとも小学生のころには既にその考えは巡らせていたと思う。当時の考えとしては『運命とは』誰かが決めた不可逆的な流れであると同時に、たとえあの世に旅立つような日が来たとしても、決して解読することは適わない不可知な存在であると一度は結論づけた。


 しかし、年月が経ちその考えというか、思想は新たな体験や知見を得れば得るほどに変質してゆき、その中でいくつもの解釈や形態が生み出されていった。 


 たとえば、運命というものは後の祭りのような現象であって、後から脳みそが勝手に作り出した虚構的概念であるとか。人間関係、特に異性との関わりによって生じるカルマや因果律ではないかとも、真剣に考察していた時期もあった。


 それで何か収穫があったかと訊かれたら、正直『何も掴めていない』というのが結果であり実情だ。


 仮に自惚れながらも糸口は掴んでいると言い張るにしても、内容の多くは証明に困る絵空事を並べるばかりで、神話を忘れた現代人に取ってみてすれば、そんな話は眉唾物だと一蹴され、ペテン師の烙印を押されてそこで話は終わるのが落ちだろう。一部その話に肯定の意を表してくれる者はいるが、本場の人間からすれば、言語化されている時点で※1紙モノの考えらしく、そんな人間ですらいま視えているモノが本物か偽物か判別つかないと言うのだから、自分がどれだけ狭い視野で物事を語っているかは、明白なところ。


 執筆している現在いまでさえこんな状態なのだから、なんとも悩ましい話だ。


 とはいっても自分の半生をしたためる都合上、曲がりなりにも『運命とは何か』についての線引きをしておく。自体験を含むため少々内容が複雑になるが、そこら辺は了承してくれると助かる。


『運命とは』誰も逆らうこともできない『不可逆的な流れの性質』を持つと同時に、決して誰にも解読することもできない『不可知な呪い』の要素も含む。それは常に個々の行動や思想、他者との関わりによって生じる『因果とカルマの終着地点』であり『名もなき未来』のことであると定義する。


 それはかつて、「人生を無難に生きたい」と願った青年の斜に構えた想いさえも巻き込んでゆき、何もしなくとも気付いたころにはその終着点へと流れつく。そのころには自分が望んだはずもなかった日常や家族、友人といった騒がしい人々に恵まれ、まるで『無難を識るためにはまず災難』といわんばかりに困難が襲ってくる。何度も死ぬかと思ったことはあったが、どうやら、どんな目に遭っても命は助かるふざけたオプションが付いているらしく、今日も何とか五体満足で余生を愉しんでいられる。 


 本当、嫌味なりにも有難い人生を送っているとシミジミ通り越して笑っちまう。


 とまあ、自分語りはここまでにして、そろそろ本書の内容に触れて行くことにしよう。今作は主に現在の自分の妻である銀之字カナメ(旧名相坂カナメ)との『出逢いや馴初め話』を中心に、そこまでに繋がる内容として過去にあった『銀堂家のお家騒動』の概要や、数年前に大規模テロを起こした組織の一派でもあった『源游会の誕生とその後の後悔』についても触れていく予定だ。


 正直なところ親しい人間や知り合いのことについて書くのは、頬を掻きたくなるほどに気恥しい事ではあるものの、今作は自分の人生の節目となる内容になるので、なるべく隠し事が無いように物事を綴らせていただこうと考えている。




※1『鼻紙はながみモノ』確かに役に立つが、使い終わったらすぐに棄てられる概念

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