第5話コスタリカに敗れる。
現在ドーハは11月29日午前10時、時計の針(こんな表現もなくなるか?)を27日に戻してコスタリカ戦について記録したい。
私のFacebookにはドイツ戦直後に東郷平八郎が日露戦争直後に連合艦隊を解散する時に述べた以下の辞をあげたのだが、
「神明は唯(ただ)平素の鍛練に 力(つと)め、戦はずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に一勝に満足して 治平に安(やすん)ずる者より直(ただち)に之を奪ふ。
古人曰く勝て兜の緒を締めよ・・・と」
コスタリカ戦が行われるのは、ドーハの中心から20キロ弱離れたAhmad Bin Ali Stadium。地下鉄Green Lineの終着駅に直結している。試合開始が午後1時と早いので、Fan village の宿泊施設を9時には出発した。地下鉄Red LineをMsheirebというドーハの中心地でGreen Lineに乗り換えてちょうど1時間ほどでスタジアムに到着する。スタジアムまではサポーターの騒ぎが始まっているが、ドイツ戦に勝ったせいか、前回よりも浮かれているように思える。これは自分の気持ちがそうであるから、そのように見えるところもあるかも知れない。
スタジアムへ入ると、前回と同じように冷気が迎えてくれる。席はバックスタンド右コーナー近くの前から15列目。前回のスタジアムよりもサッカー専用のせいか、ピッチが近く、ゴール裏もスタンドがピッチに迫っている。なぜか、シートに白いサンバイザーが置き忘れていると思ったら、周りのシート全てに置かれている。最初は、マスゲーム的な盛り上がりをするための小道具かと思ったが、時間が経つにつれて、そのサンバイザーの必要性がわかってきた。
ここのスタジアムの場合、スタンドへの冷気の突出口が、シートの下に並んでいる。したがって、しばらく座っていると、足のふくらはぎ部分が寒くなってくる。そして、時間の経過とともに、スタジアムの屋根による日陰のエリアがいどうして、キックオフの頃には屋根の効果のない、直射日光のエリアとなってしまう。それで、先のサンバイザーが必要となるわけだ。
さて選手が練習に入る。サポーターの声援。いつも通りだが、後で考えると、どこかドイツに勝利した故の余裕というか油断があったようにも思える。試合開始のセレモニーは大きなW杯のレプリカが引き出され、火を使ったアトラクションと前回は無かった派手なアトラクションの後、試合が始まった。
何か、重い。何かうまくいかない。わずかなミスの頻発。もう少しの間合いでとられたり、取られてしまったりの攻防が続く。ゲームプランとして前半は0-0で相手を消耗させて、後半、息のいい選手を入れてとどめを刺すというのだろうが、退屈なぼ流回しが続く迫力のない前半が無得点で終わる。サポーターの声援も、不甲斐ない選手のパーフォーマンスに習って、何かピリッとこない。
前半を終わった時点で、顔中が汗だらけで流れて落ちるのを感じるので、兜を抜いてタオルで拭い、日章旗をテントがわりに日陰を作って休息する。スタジアムの屋根で日陰のエリアのシートは冷気で寒いぐらいのところもあると聞いたが、同じ量の冷気では直射日光の当たるエリアでは全く効果が無い。夏の甲子園のアルプススタンドの暑さは知らないが、それ以上の強烈な日射が観客の体力を消耗する。試合前に高い600円もするコーラを1本飲んでんおいたが、水分補給を怠ると熱中症の危険があるし、本当に病人が出てもおかしくない環境での観戦を強いられる。ここまでハイテクなスタジアムを作るならば、太陽の角度をセンサーで追って、冷気の排出量を自動で調整するぐらいの事は考えても良かったのでは?
後半戦もサラリとあっけなく入る。三苫の投入でスタンドは盛り返す。その後も三苫の勝負の度に、スタンドは盛り上がる。しかし全体にミスが多いと思っていた矢先に、吉田のクリアミスからフワッとしたシュートが入ってしまう。今日は谷口と板倉で良いと思っていたが、やっぱり吉田がやってくれた。この吉田のポカの癖は昔からアジア杯などでも見られたもので、これに川島のポカがあったのだから、今まで日本はよくそれでも勝ってきたのが不思議なくらいだ。実際のスタジアムから観戦していると、丁度反対側の一番遠いエリアでのプレイなので、フワッと何となく入ってしまったという印象である。
その後も三苫が何回か切り込むが、相手も体ごと防いでくる。コーナーや良い位置でのフリーキックもあったが、今の日本代表には試合を一蹴りで変える名キッカーがいない。現地まで見に行ったコンフェデレーション杯でのフランス戦やドイツ前での中村俊輔のフリーキック、あいてのサポーターを一瞬で静かにさせる、そんなキッカーが今の日本にはいない。
ロスタイムは6分と通常より長いが、今大会は14分などもあった事を考えると、短い時間で、しかもコスタリカのノラリクラリの引き伸ばしによって時間を消耗し、敗戦。
ドイツに勝ってたが故に、余計に勿体ないと皆が感じた試合だった。結果論になるが、その日のスペイン対ドイツが引き分けに終わったので、この試合で勝ってれば、、、と思ってしまう。
帰りも地下鉄で帰るのだが、駅へは、大きく徒歩で迂回を強いられる。それによって駅に到着するまでの時間稼ぎによって、たった6両編成の地下鉄でも比較的スムーズに地下鉄に乗り込む事ができた。しかし、地下鉄までの迂回路を歩くと、埼玉スタジアムから浦和美園までを歩く事を思い出し、特に敗戦の時のあの道の長かった事が、何か今日の迂回路でも体験が重なって感じた。
次はスペイン戦、こうなったら一か八か、横綱に胸を借りるつもりで、負け覚悟で日本らしいスピーディーで緻密なサッカーをして欲しい。それをやれば自ずと結果はついてくる。合言葉は Go for broke ! 当たって砕けろ!(米国2世部隊442連隊のモットー)
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