イミテーション・マイマスター
Aris:Teles
イミテーション・マイマスター
温もりをしっかり味わうように、肌を合わせ抱き締める。
腕の中の少女は仔猫のように頬擦りしながら、私の穏やかな愛撫を受け入れている。
サラサラとした髪を手櫛で梳かし、首元を這うように撫でる。上目遣いにこちらの様子を覗くその瞳には同じ碧い色がうっすらと輝いている。上気したその顔が実に愛おしい。
背中を擦り、背骨の辺りをスッと指でなぞる。少女の身体がゾワゾワとした感触に耐えられず身震いする。不意に可愛らしい耳を舐めてみたり、お腹を擦り上げたまま胸元にも触れてみたり。
一つ一つの反応が、彼女が生きていることを懸命に示してくれる。
この命の輝きを私は大事に大事に、その手で、肌で、味わい尽くした。
――だからこそ、私は少女が悦びの絶頂に立った瞬間、眠るようにその命を終わらせた。
静かに頸の動脈を抑え、意識を遠のかせてそのまま生を切り離す。まだ至らなかったために。崩れる身体を優しく抱き抱えながら少女へ向けて私はそっと呟く。
「おやすみなさい、31回目の
一人の生体ガイノイドが眠りにつき、私はその身体を元にまた新しい肉体と精神を再構築させるだろう。
もはや贋作なのだとしても、すべては失ったあの輝きをもう一度望むために。
イミテーション・マイマスター Aris:Teles @Aris_Teles
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