第36話⁂離婚?⁂
陽葵王の傍若無人ぶりには、誰も口出し出来ない。とんでもない暴君ぶりだ。
地球に居た頃は努力家の健気な、あんなに良い子だったのに。
それでも…陽葵王も、ある日とうとう身も焦がすほどの、恋にのめり込んでしまう事になる。
それは……「ハーレム」に最近推薦されて入ってきた若き天才形成外科医、財前六郎の出現だ。
『ああああ…財前六郎ってひょっとして?……あの医学界の腐敗を鋭く追及した、大人気ドラマ白い○塔の財○五郎をパクったかって?テへへへ・・・それはご想像にまかせます』
ああああ…ああああああ……脱線!話を本題に戻しましょうね!
そうそう。何故、天才形成外科医が、この「ハーレム」に召集されたかって?
それは……この星が、これだけ発展を遂げて、他星から一気に注目の的となった『セルフィッシュ星』なのだが、いかんせん見本とならなければならない陽葵王が、あのように非常に見苦しい。
現在はどの星どの国でもネット社会が常識、その為美しい政治家に更には…美女と結婚できる最高の星との呼び声の高い、スッカリ美男美女揃いの星との太鼓判を押された感のある『セルフィッシュ星』なのだが、王様だけが余りにも酷い、醜いと、ネットに書き立てられ宇宙中に拡散されてしまい、以前の集客力が見る見る落ちてきている有様。
そこで……若き天才形成外科医、財前六郎が招集された訳だ。
今まで、こんなブタでも周りの美しい男達からチヤホヤされて来た陽葵王は、自分が醜いなどと思った事は一度も無かった。
それが……どうも…この若き天才形成外科医、陽葵王にとんでもない悪態を付いた。
「陽葵王非常に言いにくい事ですが、今のままでは……その……あの…どうも…見苦しゅうございます。チョット……その……どうも…節制をして貰わないとなりません」
「何を……見苦しいと言うのじゃ?……それから……何を節制するのじゃ?」
「それは……食べる事です。食事制限をしてダイエットして下さい」
「エエエエエエ————ッ!食べる事が何よりも楽しみなこの私に、食べるなだと~?貴様何様のつもりだ———ッ!」
「それでも…それでも…最近は、この星の人気が……ダダ下がりで?大臣たちも頭を抱えているらしいのです」
「エエエエエエ————ッ!これだけ人気🌟星になったと言うのに……一体どうしてそうなってしまったのだ?」
「それが……どうも…それが……?」
「ええええい!ハッキリ言うてみい!」
「それが……どうも…?陽葵王だけが外交の席で、非常に目立っているらしいのです」
「非常に良い事ではないか?目立っているという事は」
「それが……それが……どうも…」
「エエエイ!なんじゃ、その奥歯にものの挟まった物言いは!しゃらくさい!ハッキリ申せ!」
「あっハイ!それが……陽葵王の事が……巨大フグ、デブ、不細工王、怪獣、ブタ、ゴリラと、ネットで宇宙中に拡散されて、『セルフィッシュ星に出掛けたは良いが、折角美男美女に囲まれて夢心地の世界に浸っていたのに、陽葵王の出現でガッカリ!折角の美男美女がかすんでしまう。だからあの巨大フグを出すな!引っ込めてオケ!』と散々ボロカスな言われようなのです。だから……急遽…この私が招集された訳です。だから……ダイエットして頂かないと……この星が大打撃をこうむりますので~!へへへ」
「何~?この私が不細工だと~!もう一度言うてみい‼許せない!ウウウウッその言葉許せぬ!」
「それでも…ほれ!鏡で自分のお姿をご覧あれ~!」
そう言って全身が映る鏡の前に陽葵王を誘導した。
「ええええええええええええ!このブタ誰?……これが?……これが?……ひょっとして……私か?これじゃブタどころか……フグ怪獣?」
こうして陽葵王は、自分のお姿に目覚めダイエットを決断なされた。
更には…ペッチャンコの鼻を整形手術で高くして、見違えるほどの美人に変貌をお遂げになった。
すると…今までには無かった世界が広がって来た。
民衆の見る憧れの眼差しに、何とも言えない心地良さ。優越感。更にはあんな役立たず夫で男に走った男色のホモ夫王配が、最近は陽葵王にピタリと付きっきり。
それは……余りにも垢抜けてお美しくなられたので、心配で心配で居ても立っても居られなくなったからなのだ。
だが、陽葵王にすれば、流星王配の嫉妬は何とも……嬉しい話ではあるが、一番遠ざけたい存在となって居た。だって……料理自慢の夫流星王配がいては、折角のダイエットが台無し。
流星王配に望む事はただ一つ、その腕前で美味しい料理を作る事だったが、周りから「美しい!綺麗!」と賛美の言葉を浴びるようになってからは、三度の飯より「美しい!綺麗!」と言われることが何よりもの喜びに代わって来た。
ましてやホモなので、子作りには無縁の存在。
それでも最近は陽葵王にピタリと付きっきりなのだが…?
一体どうして?
嗚呼……それは……今までは、料理自慢の自分だけで十分満足してくれていたのに、最近は何か怪しい。色恋に全くと言って良いほど興味を示さなかったのに、最近夜になると頻繫に「ハーレム」の御鈴廊下を渡っているご様子。
「おな~り~」の掛け声と共に陽葵王の生活の場から、側室のいる「ハーレム」への際に、鈴を鳴らして御鈴廊下を渡る鈴の音が”ジャラン” ”ジャラン”頻繫に聞こえて来るのでピ~ンと来た。
(あんなに美しくなってしまったら、男が放っておかないだろう。あちこちから言い寄られて…陽葵王が色恋に目覚めて、男に走ってしまうのではと心配で仕方がない)
当然夫である王配の座を失いたくないのも有る。もっと言うなら地位名誉を失いたくないのも当然有る。その為ピタリとくっ付き監視しているのだが、それより何より、もう結婚して十年近くになるので、強い絆で結ばれていると信じていた。
一介の役者が『セルフィッシュ星』の№2の存在に踊り出る事が出来て、栄耀栄華を手中に収めることが出来たのに、今更その座を失う事等どうして出来ようか?
実は…陽葵王、若き天才形成外科医、財前六郎と、どうも…男女の関係になってしまったらしい。当然「ハーレム」に在籍する男達だから世継ぎ誕生の為に当然の事なのだが、それを知ってか知らずか、流星王配の余りの陽葵王への監視ぶりは異常だ。
それでも…ホモなのに、どうして……夫婦生活を送ることが出来るのか?
愛が無い生活に耐え切れないのでは……?
何も肉体的結び付きだけが全てではない。流星王配は、陽葵王を心から愛しているのだった。
また陽葵王も今までは、巨体だったので食い気一辺倒でエッチはコリゴリだった。
運動しなくてはいけないし、身体の肉が摩擦で擦り切れて痛いので只の苦痛でしかなかった。
だが、財前六郎と一緒にダイエットに取り組み、一緒にジョギングしたり、ジムでトレ-ニングにも付き合って貰ったり、脂肪吸引手術を受けたり一日の大半を一緒に過ごして、こんなきれいな姿に生まれ変わることが出来て、強い絆で結ばれて行った。
一方の流星王配は、機嫌を損ねない様にビクビクして、ご機嫌伺いばかりして、こんな不健康な身体になるまで食べさせ続けた。
更には…子作りも出来ないのでは話にならない。
だから……最近は、離婚の二文字が頭をかすめる陽葵王。
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