第20話⁂恋の行方⁂
スプリング姫は、王子様から人工呼吸を施してもらったお陰で、何とか息を吹き返すことが出来た。
そして……息を吹き返すと……そこには……何という事だろうか……目の前に……今まで一度たりとも……お目に掛かった事の無いほどの……神々しいまでに美しい王子様が立っていた。
その美しさときたら……それこそ……おとぎ話に出て来る美しい王子様そのもの……いや……その比では無いほどの美しい王子様が立って居た。
髪の毛はキラキラ輝く金髪のロン毛ヘアで、少しウエーブの掛かった金髪がサラサラ風になびいて光っている。そして……高身長に加え、すらりと伸びた長い足。更には、吸い込まれそうなサファイアブルーの瞳。腰の剣の装飾には真っ赤なルビーが輝き、皇帝衣装に身を包み金のマントをひるがえし、何とも凛々しく美しい王子。
只々その美しさに吸い寄せられるように、茫然と見詰めるスプリング姫。
衝撃的な出会いを果たした二人はどういう訳か、王子様の馬車に乗り一旦この泉を離れた。
(あんな性悪お妃と、更には……二人の姫の住んでいる城の近くでは、またどんな恐ろしい事件に遭遇するかもしれない?)そう思ったスプリング姫は、王子様に頼んだ。
「少しこの美しい緑の森を散策したいのですが?」
「嗚呼いいよ!それより……君はどこからやって来たんだい?」
「実は…私は泉の近くに立っているお城のスプリング姫と申します。ですが、二年前に私の母である妃が亡くなって、新しい妃が二人の姫を連れてやって来たのです。こうして私の生活は今までの生活とは真逆の生活に追いやられ、ボロボロの服を着せさせられて、髪の毛も勝手に見苦しくカットさせられて、家の掃除や食事の準備等々をさせられて、お妃と二人の姫達は着飾りパ-ティ三昧……その挙句に……何故か?泉の中に重しを付けて捨てられてしまったのです。誰がこのような事をしたのか分からないのですが……ひょっとしてお城の誰かが……それも…ひょっとして……お妃様と二人の姉かもしれません。だから……私は怖くて……お城に帰れない……」
話を聞いた王子様は、大層スプリング姫を気の毒に思い……こうしてスプリング姫は、元居たお城に帰させられるかと思いきや、一旦カーピス海の海の王子様のお城に匿われる事となった。
◆▽◆
早速、王子に手を引かれ訪れた先は、非現実的で幻想的な……尚且つ、ファンタジックな海底都市だった。突如現れた夢のような美しい宮殿。
この魔法の国のような、ファンタジックな海底都市アクア王国は、カラフルで夢の世界に迷い込んでしまった……そんな魔法にかかったような美しい海底都市だった。
赤い時計塔、黄色の新宮殿など、宮殿のさまざまな部分が美しく彩られた鮮やかな色合いで表現されている。
更には……美しい建築物や、テーマパーク……そして…何よりも……幻想的な風景や……美しい景観を楽しむことが出来る。
海底の静かさに身をゆだねていると……色とりどりのサンゴと海草が、見る者の目を楽しませてくれる。
こんなにも…綺麗で芸術的な建築物や海底世界は、今まで住んでいた世界では滅多とお目にかかれない。
また宮殿だけではなく一般的な住居についても非常に独創的。
可愛らしく、丸いフォルムで、それをサンゴや真珠などで飾り付けるセンスには、思わず脱帽。
ドアを取り付けていない面から考えても、治安が非常に良い事が伺える。海底に住む種族というのは、皆争いを好まない優しい性格らしい。
海底の部屋の中のレイアウトも、色んな貝殻や綺麗な赤や黄色に緑色の原石でカラフルでお洒落にレイアウトされている。青い海に、ぼんやりとした明かり、可愛い貝殻を用いた柔らかそうなベッド。
海底都市アクア王国。
そこは美しき水の妖精たちや人魚たちが住む、夢の楽園。
海底都市を案内をしてくれる人魚たち。
酸素タンクを持たずとも問題なく息ができるのは、アクア国を治める王様の魔法のおかげだ。
しかしそこは、まぎれもなく美しい海の中、地上では味わえない浮遊感と共に、じっくりとアクア国の美しさを堪能出来る。
魚になればさらなる景色が広がる
そこには地上の光が差し込んで、海底がスポットライトを浴びたように光り輝き、海の底は怪しげで美しい緑の光をたたえている……何と美しい事か……。
海面から差し込む光、その光に照らされる大きな真珠やサンゴ。更には……色鮮やかでカラフルな熱帯魚たちの共演で……これは地上の妖精が踏み入れてもいいのだろうか、そんな不安を抱くほどの圧巻の美しさ。
◆▽◆
このように、まさに美しい海底の宮殿、アクア国のアクア宮殿に保護されたスプリング姫の部屋に、何故か頻繁に訪れる王子様。
二人は徐々に打ち解け合い…会話に花を咲かせている。
「王子様まだお名前を伺っておりませんが?」
「アアア、そうだった。僕の名前はアダムだよ。それより……もうすっかり元気になったし、あんな意地悪な妃とお姫様達のいるお城なんかに帰らなくても、ここの住人になったらどう?」
「私も本当は帰りたくない」
「……本当は僕はスプリング姫に、この海底都市にずっといて欲しい」
「……それは……お友達として?……それとも……異性として?」
「それは……当然……異性としてず~っといて欲しいんだよ!」
まだ20歳と17歳の二人だが、恋の炎は燃え上がる一方。
だが、アダム王子には親が決めた海底都市一の王国である、ネバーランド王国のメアリー姫との「いいなずけ」契約が交わされていた。
最近アダム王子が、頻繫にスプリング姫の部屋を訪れている事を知ったメアリー姫が、早速、アクア宮殿のスプリング姫の部屋に急ぎ足でやって来た。
”トントン” ”トントン”スプリング姫の部屋のドアをノックした。
「ハイ!どなた?」
「チョットお部屋に入れて下さらないかしら?」
「ハイ!どうぞお入りください」
こうして怒り心頭で、ズカズカ部屋に入り込んで来たメアリー姫。そして…部屋に入って来るなり声を荒げて話し出した。?
「あ~ら、あなたがスプリング姫?最近あなたが私の未来の旦那様で、未来のネバーランド王国の次期王であるアダム王子に急接近しているらしいじゃないの。一体どういうおつもりかしら?」
(エエエエエエ————ッ!「いいなずけ」が居たなんて知らなかった?なによ~「当然……異性としてず~っと、この海底都市にいて欲しいんだよ!」なんて告白めいた言葉を言っておきながら「いいなずけ」が居たなんて許せない!)
アダム王子のことを許せない気持ちで一杯の、スプリング姫。
アダム王子も「いいなずけ」が居ながら、よくも……うら若い少女の部屋に入り浸り、いい加減な事を言ったものだ。只のプレイボーイだったのだろうか?
その真意とは………?
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