第15話 早すぎる

「――あ、が……。『十一 重斬ウーンデキムエッジ』……。はぁ、はぉ……。あと、少し」


 開始から約3時間。

 レベルは3000以降確認すらしていない。


 着弾数12を未だに0にすることはできていないが、それでも着実に数を減らせている。

 ただ、見えない弾丸を撃ち込まれ過ぎて、身体は痣だらけ。おまけに疲労から膝は笑い、剣は刀身が折れた。


 ボロボロもいいところ。

 オロチ本体を倒したとしても、地上に戻れるのだろうか?


「はぁ、はぁ、はぁはぁはぁ……や、やっと見つけた。あ、あなた、幾らなんでも上の階層で躓き過ぎでしょ」

「お前は……」


 今後の顛末を杞憂していると、魔法陣の外でしのぎ合っていたモンスターたちが急に静かになった。

 そして、モンスターたちの間に道ができると、息を荒げた1人の女性が姿を現した。


 その見た目は太っているわけではないが、運動とは縁遠い、絵に描いたようなインドア体型。尻尾は3つ叉。

 豊満な胸、大きめの臀部、股間の辺りは鱗が服の代わりを担ってくれているのでなんとか隠せているものの、小中学生に見せるのは躊躇われるほど、官能的だ。



 それにしてもなぜ本体だけ人間に限りなく近い姿なのだろうか?


 というか、いくら急いで来たからって10階層をこの早さでっておかしくないか?ボロボロにはなったが、ここである程度レベルを上げれたのは不幸中の幸いかもしれない。


「そのくせに、レベルはかなり上がっちゃったみたいね。だから一瞬、急ぎ損もいいところって思ったんだけど……そこまで弱ってくれてるなら万事オッケーかしらね。あなたには私を、私たちを殺す余力がないもの」


 オロチ本体が凄むと、その身体に竜の顔が6つ浮かび上がった。

 そして、俺よりも遥先に進み、いつの間にか見えなくなっていた尻尾の竜だった気体がそれに合流しようと、どこからともなく流れてきた。


「そんな身体にされちゃって辛そうなのは分かるわ。でも、弱かったあなたも悪いわよね。暫くは……そうね。あれで反省してもらいましょうか。どうせ人間を生かすために移動させようと思っていたし、丁度いいわ」


 そう言ってオロチ本体は、気体を無視して魔法陣に近寄ると、地面に手をつけた。


「まずは……『属性変換全水オールブルー』。それでこの魔法の手助けとして……張り直しって感じでいいかしら。『助力再発動アシストリブート』」


 俺の足元に描かれていた魔法陣が消えた。

 しかし、消えたかと思った魔法陣は気体の辺りに小さく描かれると、その狭い範囲内で再び見えない弾丸が飛び交い始めた。


 気体状態の場合どれくらいダメージがあるのかは分からないが、これをお仕置きというには間違いなくやり過ぎ。


「さて、これはもう放っておいて……本題の人間といきましょうか」


 オロチ本体は嬉しそうに口角を上げると、ゆっくりと俺のもとへ歩き始めた。

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