高校生と発達障害について現役教師と話してきた

あつこ

第1話

先日、高校時代の恩師と飲みに行った。先生はビールを煽ってから私に言った。

「発達障害を抱えている高校生は驚くほど多い」

先生は今、偏差値40を切ったいわゆる「底辺校」に勤めている。


一応私と先生の出会いを紹介しておく。

私の出身校は偏差値60弱くらいの公立女子高校、進学校としてはそこそこレベルだ。就職する人は数人程度で、ほとんどの生徒が大学進学する。進学先の大学レベルは、MARCHに入れたら「すごいね〜!」で、国立大学に一般入試で受かる人は十人いたかいないかだった気がする。

何が言いたいかというと、進学校といえどそれほどでもなかったということである。東大?京大?北大?阪大?東北大?名大?いません!!!!旧帝大に受かる人はいません!!!

そんな高校で2年生のときに担任だったのが上記の恩師だ。大変お世話になったので、なんとなく思い出して古いメールアドレスに「私のことを覚えていらっしゃるでしょうか」と不気味なメールを送ったら、「よぉ〜!久しぶり!20歳の同窓会のあとどうしてた?」と返信が来た。

教師というのは恐ろしい。どれだけ生徒のことをおぼえているんだ。私はもうアラサーだぞ。

そんなこんなで飲みに行き、私の出身校から異動して今勤務している高校の話を聞いた。

先生曰く、

・この近所だから知ってると思うけど偏差値35

・授業が成り立たない

・化学の時間に算数やってる

・半年経ってもアボガドロ定数までいかない

・百マス計算をやっている

・朝は10分の読書タイムをとっている

先生は愚痴を言ったのではなく、ただ笑顔で事実を述べただけだった。私は「ん〜そっかぁ〜」と思いながら唐揚げに箸を伸ばした。

「でもね」

ここで、先生が鋭くレモンで唐揚げと本題に切り込んでくる。

「これには原因があるんだよ」

「ほう」

飛び散るレモン果汁を手でブロックして唐揚げを守りつつ、私は先生の話に耳を傾けた。

「うちの学校には、発達障害の傾向がある子たちが多いんだ」

「へぇ?」

そっち方面の情報に詳しい私は唐揚げをもぐもぐしつつ、先生の手から潰れたレモンを叩き落とした。かなり興味深い話題だ。

「発達障害の傾向があるということは、自分のルーティーンを乱されると混乱する生徒がいるんですか?自閉症の特徴ですけど」

「いるね〜。イレギュラーなことに対応できない子は多い」

私は勝手に出汁巻き卵を頼んだ。先生は何杯目かのビールを頼んだ。

「教師ってさ、それなりのエリートコースを歩んできた人が多いんだよ」

「うん、まぁ、四大出て教員免許取ってて採用試験受かってますからね。それなりですね」

私も中高理科の教員免許は持っているが、教師にはなっていないので教員採用試験の難しさは測りかねる。しかし、公立高校だから公務員試験である。教える技術はさておき、馬鹿でないことは確かである。

「だから、エリートな先生たちは、自閉症傾向がある子とか、ADHDの子とかを理解できないわけ。理解できないから発達障害について調べることも思いつかなくて、そういう子たちがいるっていう知識もない」

「はーん…周りにエッリーツしかいなかったから…生徒の努力と頑張りと忍耐が足りないせいで、問題行動を起こしていると思ってる、と。本当は発達障害が原因なのに」

「そう。発達障害が原因だとわかれば、それに合った対応ができる。でも、頭ごなしに叱ってしまう教員がいる」

注文した出汁巻き卵とビールが来た。私は出汁巻き卵にそえてあった大根おろしに醤油をドバドバかけた。

「教員への教育不足じゃないですかぁ?教育委員会何やってるんですかぁ?」

恩師に向かってクソ生意気な口をきいているが、私は素面である。

「そうだなぁ…もっと時間があれば…ねぇ、醤油かけるのそのくらいにしておかない?」

「先生も、勝手に唐揚げにレモンかけるのやめてくださいよ」

「かけていいって言わなかった?」

「言ってないですね。それ言ったのは隣のテーブルの女の子です」

私は醤油を置き、再び先生と会話をし始めた。

「それで、先生はどうしてるんですか」

「生徒個人個人の良いところを伸ばすようにしてるよ。例えば女子生徒だと、ダンスをやりたいって子がけっこういる。だから、ダンスできるような環境を整えた。そうしたら、一生懸命ダンスをするうちに成績も上がってきたんだよ」

「へぇ…好きなことに打ち込むと、勉強にも力入るんですね」

「そうだね。担任のクラスだけで精一杯だけど、少しでも今の子たちが社会に出てより良く生きていけるように日々考えているよ」

「先生立派ですね。私、実は高校生のときからうつ病傾向があったんですけど、なんでその時ケアしてくれなかったんですか?恨んでいいですか?」

唐揚げにレモンをかけられるよりもよほど深い恨みである。

「あの時はねぇ、みんな一見パワフルな女子高生だったじゃん?だから俺にそういう知識がなかったんだよ。今思えば、ケアが必要な生徒はたくさんいたなぁって思うよ」

「私もその一人です。今日は1000円しか払わないのであと払ってください」

「あはは、わかった」

こうして、懐かしの恩師との飲み会はお開きとなった。

メンタルケアが必要な高校生はけっこうな数いて、メンタルケアをすると成績があがり生活のクオリティも上がる可能性がある。

世の中のエリート先生方や親御さんはおぼえておいてほしい。

勉強させたいなら好きなことに打ち込める環境を作ってあげれば、もしかしたら成績が上がるかもしれないし、その道のプロフェッショナルになれるかもしれない。知らんけど。

ガミガミと勉強しろと言うのは全く効果がないことは、皆様身を持って体験済みであろう。

具体的なメンタルケアについて?それはまた今度記事にするのでちょっと待ってください。まだ調べてないんだわ、ごめんね。

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