永久回り道

とかち さわ

第1話 文章を書くのは好きなほう

 昨日までの自分が何を考えて生きていたか、毎朝忘れてしまっているけれどどうでもいいことだ。自分のことを限りなく他人ごとのように眺めていられたら、それに越したことはない。そう自分に言い聞かせるわたしの脳内こそ空虚な自己愛が充満し腐っている。

 文章を書くのは好きなほうだ。それはわたしの数少ない成功体験に基づく。クラスにいるちょっと作文を捻るのがうまい奴だった頃、やがて訪れる青年期の喪失へ、自分は他人より鋭い感性の持っているなどまんまと勘違いし、支払う代償の重みも知らずその道のりを風を切って走っていた。今日、鈍感でミーハーな大人になったわたしがまた何か不毛を書き出そうとしているのは、最近読んだ谷崎潤一郎著「文章読本」の影響に由る。見栄を張らずわかりやすい語を念頭に、本性に沿った調子を探して書いて行けたらいい。

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