アリスティア、新天地へ

歓迎会

湯浴みを終えて、軽めのドレスに着替える

その後、イスト王城の大食堂で

盛大なもてなしを受けた、豪華な食事を堪能した、宴会が一通りお開きになると

突然ルビアーナが尋ねる


「ところでジークハルト、当然アリスティアさんと一緒の部屋で寝るのよね?」


「ぶっ!?」


ジークハルトは母の突然の発言に呑んでいた紅茶を吹き出してしまった、アリスティアは慌てて手拭いでジークハルトの濡れた衣服を拭いていく


「母上!一体何を!?」


「別にやましい事は言ってないわよ?

貴方達、どうせ夫婦になるのだから一緒の部屋で寝起きしても特に問題ないでしょう?」


「それは…」


「それに、ジークハルトの情け無い姿は

早いうちにアリスティアさんに見せておいた方がいいわよ?さっさと幻滅されておきなさい。」


「…」


ルビアーナはジークハルトに対してものすごく強い様だ。アリスティアは圧倒されていた。


「夜の営みは別に置いといて、今まで会えなかった分、貴方達は寂しく無いのかしら?」


「それは…」


「義母様のおっしゃる事も尤もですが…」


ジークハルトとアリスティアは互いに

少し頬を染めた。


「それともジークハルト、貴方が私に宣言した事は大した決意もなく言った事なのかしら?」


「そんな事はありません!」


「じゃあ決まりね、アリスティアさん、貴女は今日からジークハルトの寝室で寝起きする事、それでよろしいかしら?」


「…えっ?は、はい、義母様」


ジークハルトはしてやられたと顔を右手で覆った。


「二人とも会えなかった分の時間をしっかり埋めなさい、アリスティアさんにも時間を掛けてイストに慣れてもらうのだから、式はそれからでも遅くは無いでしょう?」


「まったく…母上は強引で…全く敵いません…」


ジークハルトは頭をかきながらバツの悪そうにそう言った。その姿をアリスティアは

和やかに微笑んで見ていた。


「話はまとまった様だな!兎に角、今後のイストの発展とジークハルトとアリスティアの末長い幸福を祈って再度乾杯しようではないか!」


「ええ、父上、私どもが紅茶でよろしければ、喜んで。」


レオルスの提案にジークハルトはそう言うと

それに対してアリスティアは笑顔で頷いた。


「まったく、あなたは…嬉しくてただ呑みたいだけでしょう?……程々にしてくださいよ?」


「よし!我が妻ルビアーナの許しも出た事だし、乾杯!」


「「「「乾杯!!」」」」


様々なグラスやティーカップの高らかな音が

イスト王城の大食堂に響き渡った。

宴会は主にレオルスが酒を飲み食らい他は紅茶を飲みながら談笑するだけであったが。

話に花が咲き夜遅くまで続いた。


その夜の事、アリスティアはイスト王国

王妃ルビアーナの提案通り

ジークハルトの寝室で共に寝る事となった

互いに寝巻き姿は勿論見るのが初めてで

頬を赤らめながら心の底から緊張していた。

寝巻きを着ていてもジークハルトの

高貴さは一切失われていなかった。


(二人で一緒に寝るだけって言っても…心の準備が…)


アリスティアはとても緊張していた。

男の人と夜を共にするのは人生初めてである。


「…大丈夫ですか?アリスティア?」


ジークハルトは心配そうにアリスティアの顔を覗き込む、アリスティアの目に映るジークハルトの表情も少し緊張している様に見えた。アリスティアは何も言わずにそのままジークハルトの胸へと飛び込む。


「おっと!?どうしました、アリスティア?」


「…少し、少し、このままで居させて、ジークハルト」


「…ええ、アリスティアが落ち着くまで付き合いますよ」


ジークハルトはそう言って胸に飛び込んできたアリスティアを優しく抱きしめた。

ジークハルトの暖かさがとても落ち着く

アリスティアはそう実感していた

ジークハルトの胸に顔を当てると

彼の心臓の鼓動が聞こえて来る

とても早い、そうだ、彼も私と同じ様に

緊張してるんだ、アリスティアはそう思うと

少し気が楽になり、段々と落ち着いてきた。


「ありがとう、ジークハルト…もう大丈夫です」


「そうですか…少し残念です」


哀しそうに微笑むジークハルトにアリスティアは不思議そうな顔をした。


「…さて、そろそろ寝ましょうか」


「…はい」


二人でベットに入り毛布を被る、ジークハルトのベットは二人で寝てもとても広く

布団はフカフカだった、香りを嗅ぐと

お日様のいい匂いが感じられた

魔導鉱石の放つ光が消されて周囲は薄暗くなる。月の光が部屋を照らす。


「アリスティア…不安ではありませんか?」


ジークハルトはアリスティアを見つめて心配そうに言う。


「…少しだけ、でも私にはジークハルトが居るから大丈夫です。」


アリスティアは笑顔で微笑んだ


「あの…ジークハルト…」


「なんですか?アリスティア?」


アリスティアは少し照れくさそうにモジモジとしている。


「あの…私の手を握って下さい…」


「ええ、喜んで」


アリスティアの差し出した右手をジークハルトは左手で優しく握る。


「うふふ…ありがとうございます」


「ええ、どういたしまして」


アリスティアとジークハルトは互いに笑みをこぼして嬉しくなっていた。

アリスティアは何時までもずっと、こうしていたいなと思いながら目を瞑る。

ジークハルトの手から伝わる温もりは、アリスティアに確かな安らぎを与えてくれた。

そのアリスティアの穏やかな表情を見て、安堵した様に微笑むジークハルト。

彼もそのまま目を瞑った。


「ねえ、ジークハルト」


「なんですか?アリスティア」


一間置いてアリスティアは言う


「二人でいる時はアリスと呼んで欲しいです」


「では私の事はジークと呼んでください…アリス」


「ふふ、わかったわ、ジーク」


そう笑い合って眠りにつく。

二人はそれぞれあの頃の幸せだった、思い出を夢に見る。

フィーリウスとアリスティア何も考える事なく遊んだ日々。

互いに恋心を抱いた二人だが、一度離れる事になり別の人生を歩んだ。

その二人がこうして再び巡り合い、共に人生を歩める事など、二人にとってこれ以上の幸福は無いだろう。


(…明日は二人で何をしようかな…良い一日になると良いな…)


アリスティアは微睡に落ちながら、日々の幸せを楽しみにしていた。


翌日、アリスティアの目覚めは爽快だった。

ジークハルトは既に起きていて、身支度は済ませている様だった。

ジークハルトが部屋のカーテンを開くと、朝の日差しが少し眩しい。


「おはようございますアリス、昨晩はよく眠れましたか?」


「ええ、ジーク、おかげさまでとても良く眠れました」


笑顔のジークハルトにニッコリと微笑み返すアリスティア。

すると寝室の扉がコンコンとなる。


「…マリエルです、お嬢様の朝の準備に来ました」


「おはようマリエル。」


「おはようございます、ジークハルト王子。」


ジークハルトは扉を開けてマリエルを部屋に迎え入れた。


「それじゃ、私は先に食堂に行っているよ

アリスは準備をしてからゆっくり来ると良い」


「はい、ジークそれではまた」


笑顔で言葉を交わすジークハルトとアリスティアの姿をまじまじと見つめるマリエル。


「進展…あったみたいですね」


「…ふぇ!?」


マリエルがニマニマしていると

アリスティアは顔を真っ赤にした。


「もう…からかわないで…」


「仲睦まじくて良い事じゃないですか。」


マリエルはそう良いながらアリスティアの

黄金の髪の毛をゆっくりと解かし始めた

談笑しながら準備を終えると

アリスティアはマリエルを連れて

イスト王城の大食堂へと向かう


「お姉様~!おはようございます!」


通路の途中でアナスタシアと合流した

その後アナスタシアの案内で大食堂を訪れた。

テーブルの奥にジークハルトが座っているのが見えて、アリスティアは手を振った。

ジークハルトとアリスティアに気が付き

笑顔で手を振りかえす

彼はどうやら紅茶を飲んでいる様だった。


「お待たせいたしました」


「迷わなかったかい?」


「アナスタシア様のおかげでスムーズに来れました」


アリスティアが笑顔でそう言うと

アナスタシアは自慢そうに胸を張る


「お疲れ様、アナスタシア、さあ、みんな座って、朝食にしようか」


談笑しながら軽めの朝食を取る


「ねえ、お姉様、もしお時間ある様でしたら一緒に市場にでも行きませんか?」


食事中、アナスタシアからその様な提案を受けた、アリスティアはジークハルトに視線を送ると


「私は少し片付けなければならない仕事があるので気を付けて行って来てください」


とジークハルトは穏やかに言った。


「それじゃ、よろしくお願いしますね、アナスタシア様」


「お姉様、私の事はアナスタシアと呼んでくださいまし」


「はい、わかりましたアナスタシア」


アナスタシアは太陽の様な明るい笑顔で喜んでいた。

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