第30話 タワマンぼっち室
久々のオフをいただき、気分転換に学校の近くにある古い映画館に足を向けた。
壊れていた。ボクらが壊したんだろうか。覚えていない。
AIがつくった映画に飽きたときに三人でよく昔のを見に来た。時代背景がわからなすぎておもしろかった。
ベルトコンベアにこき使われる労働者を描いたチャップリンさんのモダンタイムスという映画はもう観られないみたいだ。
「リスクを反対から読んでみなさいクスリよ。もっともっとSUDDEN DEATH方式で生産しなさい」
次の日にはまた祭山田さんにそうやって煽られた。
近頃の祭山田さんには息がつまる。息はしてるけど。
よく見ると猿元さんもほかのスタッフさんもみんなボクらに監視の目を向けているように見える。
頭蓋骨は23個の骨片がつなぎ合わさってできているんだそうだ。そのことを謹んで申し上げたい。
頭の中に聖なるものと俗なるものがいた。
そしてついに、生産ラインが停止した。快晴オブ快晴。そんな社会科見学日和の日に。
生産の縮小は操業初とのこと。得意客のほとんどを今やボクらが抱えていた。
当然の流れなのかボクらが全責任を負うことになった。
度重なる気持ちの揺れに改善の兆候が見られないということで急速改善を促すために、タワマンぼっち室に入れられた。
3棟のタワマンにそれぞれ三人がひとりづつ入れられた。
入り口はオートロックだったけど、『偶数素数ロック』だったので開けるのは不可能だった。偶数の素数を見つけた人はいないから。
ロックの際、扉越しに猿元さんは言った。
「君たちの進化はまるでカンブリア爆発だった。そして君たちのこれまでの功績は、いうなれば、サイエンスフィクションを科学的事実に変えてしまったこの工場を再びサイエンスフィクション待ちの状態へと引きずりこんでくれたことだよ。あらたな可能性が生まれたのだ。まだまだこれから君たちがやらなきゃいけないことが山ほどあるんだよ」
メガネがやんちゃなデザインのに変わっていた。資産運用についてAIを利用しているのではという噂も猿元さんにはあった。でもボクらの生みの親のため、まわりは目を瞑っていた。
「がんばります」ボクはそうこたえた。
おそらくはあとの二人も同じだろう。
翌日からは施術が始まるとの説明がコンシェルジュのいない暗いフロントのところに表示してあった。
お化け タワマン。
ひとりぼっちのタワマンの中はとても広くて孤独だった。眺望もやばい。
タワマンとのタイマンなんてできない。広いから孤独なのか、孤独だから広く感じるのか。
ボクはエレベーターで昇降しながらひとり超長考した。
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