お願い・クライマックスは、サクラの花束を

獅子雄誠

第1話口紅

 高校に上がる時、男は、ブリーフからボクサーパンツに移行するのが、当たり前である。

 なら女子は、リップクリームから口紅に変わらないといけないだろうか?

 答えは……、


「お前、リップ変えたな」

「俊君……。人がいっぱいいるよ……」


 当たり前だ。

 ここは渋谷のハチ公前なのだから!


【音楽】


 そんなまさにラブラブカップルを横目に、俺は、男子校に通うのだった。


【お願い・クライマックスは、サクラの花束を】


 ――カーン、カーン、カーン。


 そんな事はお構いなしに、学校の鐘は鳴り響く。


「おい! 春樹! 遅刻だぞ!」

「す、すみません……」


 とは言えどうだ?

 俺は、この男子校で一番モテるのだ。


「はぁ、もうじき桜が散るなぁー」


 そして、あっという間に午後になった。


「ハルキ! 弁当食べようぜ!」

「ハルキさん! 弁当食べましょう!」

「はるっち! 弁当買いに行こうぜ!」


(はぁ。今思うと俺は、なぜ男子校に進学してしまったのだろう? うん? 手紙?)


『今日のお昼休み、屋上で待ってます』


「またかぁ……。それでも平穏な高校生活を送るためには、上手く振らないと駄目だよな?」


「あの……」

「どうした? 日和?」

「ハルキは、結局、僕の事どう思ってるの……」


 そう。

 ヒヨリは、俺の大事な幼馴染だ。


「はぁ? 親友?」

「それって……」

「それより俺、もうそろそろ屋上行かないと」

「また、振るんだね」

「まぁ、そう言う事になるだろうな。もう男にモテるのはうんざりだよ」


 この時、本当は、俺は気づいていないとおかしいはずなのだ。

 だって、明らかに、ヒヨリの見た目は、色っぽかったのだから?


「あなたの事が好きです! あなたがこの高校に通う前から! ずっとずっと好きでした! 付き合ってください!」


(ここ、笑う所?)


 その時、屋上から見下ろす景色は、強い風に吹かれて、まるでサクラの花束の様な美しさでした。


「も、もしかして、ここ、コスメ変えた?」

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