第13話 先輩に裏切られた
「ふぅ……」
登校してきて自分の教室に到着した私は席に座り、肩にかけていたカバンを机の横に掛けてから一息ついた。
片桐先輩の家にお邪魔してから数日が経過したが、何も考えずに生活しようとしてもあの日のことが頭から離れてくれない。
というか、好きになって付き合っている人のことを頭から離そうとしていること自体がおかしな話なんだけど。
おかしな話しだとは分かっていても、片桐先輩のことを頭から離そうとせずにはいられなかった。
片桐先輩のことが好きで付き合ったはずなのに、どうして今こんなに気持ちが落ち込んでいるのだろうか。
本当は手を繋いでデートしたり、1つのパフェを2人で突っついたりと幸せな生活を送っているはずだったのに……。
いや、ダメダメ。何を弱気になってるの私。
旭日君にも協力してもらってやっとの思いで好きな人と付き合えたのだから、そんなに簡単に諦めたらダメだ。
それに、私が片桐先輩のことを信頼していないから、片桐先輩は私に愛情を向けてくれていないのかもしれない。
まずは私の方から片桐先輩を信頼しなければ。
「ちゃんとしないと、私」
両手で軽く頬を叩き、自分にそう言い聞かせてかせてから私はバッグの中身を机へと移す。
「あ、あの……。くるみ、ちょっと話があるんだけど」
「華蓮、どうしたの? 深刻そうな顔しちゃって」
朝から深刻そうな顔をして声をかけてきたのは華蓮だった。
華蓮はいつもマイペースで楽しげに私に声をかけてくるので、今日みたいに深刻な顔で声をかけてくるのは珍しい、というか初めてのことかもしれない。
この前恋愛相談をするっていって旭日君を紹介してあげたけど、もしかして上手くいかなかったのかな?
旭日君にお願いすれば絶対に成功すると思ってたんだけど……。
いや、それとも全く別の話だったりして。
何か嫌な予感がした私は華蓮の話を聞きたくないと思ったけど、華蓮の表情を見てそれは私にとって重要な話だと理解した。
「くるみには言おうか悩んだんだけど、それじゃあくるみが幸せになれないって思ったから」
「え、なんの話?」
「昨日ね、帰り道に片桐先輩が別の女の子と一緒にワクドにいるの見かけたんだけど……」
「それがどうかしたの?」
「その……チューしてたの。その二人」
「……え? チュー?」
チューってキスってことだよね?
私と付き合ってるのに? 別の女の子とキスしてたの?
華蓮の言葉に頭が真っ白になり気を失いそうになるが、なんとか気を保って話を続けた。
「うん。見間違いかとも思ったんだけど、一回だけじゃなくてね? 二回も三回もチューしてたから、多分……浮気だと思う」
片桐先輩が浮気するなんてそんなことありえない、と思えればよかったのだが、華蓮の話を聞いた私は、片桐先輩なら……と思ってしまった。
華蓮が嘘を言っているとも思えないし、恐らく片桐先輩は本当に私ではない別の女性とキスをしていたのだろう。
真相は定かではないが、華蓮から片桐先輩が別の女とキスをしていたという話をきいて、『片桐先輩なら……』と思ってしまった時点で私たちの関係はすでに破綻しているのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます