第2話 「二番目」に相談された
午前中の授業を終えた俺は、 校舎の三階にある今は誰にも使用されていない空き教室で、椅子に座りながら窓の外を眺めていた。
ついに三鼓が付き合ってしまったか……。
なんで協力したんだよ俺っ⁉︎ 三鼓くらい可愛けりゃ告白したら絶対成功するって分かってたはずだろ⁉︎
「ああぁぁぁぁくそがぁぁぁぁぁぁ‼︎」
誰かに気付かれないようにと右腕で口を押さえながらも、押さえきれない気持ちを吐き出すように大声で叫んだ。
僕みたいな可もなく不可もない様な人間が三鼓と付き合えるわけがないということを理解していたからこそ、想いを寄せているにも関わらず三鼓の恋を応援していたわけだが、実際付き合われると予想以上にショックは大きい。
頭では理解していたつもりでも、心では理解できていなかったようだ。
「はぁ……」
ため息をついていると、教室の外から足音が聞こえてきて扉が開かれる。
昼休みにこの空き教室まで足を運ぶ生徒なんていつもここで一緒に喋っている若月くらいしかいない。
「何しに来たんだよ若月。俺のこと笑いにでも……」
「良かったーっ‼︎ 旭日君やっぱりここにいたんだね」
「--え、三鼓⁉︎ それに蓮見まで……」
僕の元にやって来たのは若月ではなく、昨日告白を成功させた三鼓と、クラスで二番目に可愛いと言われている蓮見華蓮だ。
三鼓に引けを取らない容姿と明るい性格が人気でまさに第二の三鼓と言えるだろう。
三鼓と違う部分といえば、多少人をおちょくるような冗談を言うところだろうか。
「昨日片桐先輩に告白して付き合うことになったの‼︎ 旭日君にはたくさん相談に乗ってもらったし、早く結果を報告したくって。若月君に訊いたらここにいるっていうから来ちゃった」
僕に報告するためだけにここまで来てくれる三鼓可愛すぎるだろぉぉぉぉ!
とはいえ、今となってはもう三鼓に可愛いという感情を抱くだけでも自分が惨めに感じてしまう。
「良かったな。それでなんで蓮見も一緒にここまで来たんだ?」
「あのね、私が旭日君に恋愛相談に乗ってもらったおかげで付き合えちゃった〜って話したら、私も相談したいって言うから連れてきちゃった」
三鼓の言葉で蓮見が俺の元にやってきた理由について納得した。
友人から僕の評判を聞いて恋愛相談に来る人は多いので、蓮見もそのパターンなのだろう。
「恋愛相談、よろしくね。旭日センセっ」
「お、おう。よろしく」
「それじゃあ、私先生に呼ばれてるから先戻るね〜‼︎」
「え、三鼓っ……。ってもう行っちゃったか」
三鼓は僕に告白の結果を伝え終え、蓮見を残して去っていった。
お礼を言いに来てくれたのは嬉しいが、告白を成功させた三鼓と俺の関係はもうこれで終わってしまったんだな……。
「何々〜? そんなにショックそうな顔しちゃって〜」
「べ、別にショックそうな顔なんか……。それで、蓮見は誰が好きなんだよ」
「それは恥ずかしくて言えないから名前は伏せさせてもらいます!」
恥ずかしくて名前を伏せるぐらいなら最初から俺のところに相談なんて来るなよ……。
失恋したばかりの俺がいつも通り他人の恋愛相談に乗るのは無理な話で、蓮見との会話に苛立ちを覚えてしまう。
「それならそれで構わないけど、何を相談したくて俺のところに来たんだ?」
「そうだねー。まず、男の子って女の子に何されたら喜ぶと思う?」
「うーん、まあ大抵は料理とか作ってやると喜ぶけどな」
普段はもう少し詳しくアドバイスするのだが、今はどうしてもそういう気分にはなれなかった。
「そっか、料理ね! 単純すぎて気付かなかったよ! ありがとね旭日君! それじゃ!」
「お、おう……」
かなり雑な回答をしたはずなのに、蓮見は目を輝かせてながら教室へと戻っていった。
そんな蓮見の背中を見て、罪悪感を覚えながら再びため息をついて机に突っ伏した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます